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急ぐハルの先には、森一番の大きな木がそびえ立っている。
その木の下には、腕を組みながらハルのことを睨みつけている女性がいた。
「あ~~っ! やっときたー!」
「エフィお姉ちゃん、遅くなってごめんなさい!」
エフィは金色の長い髪を風になびかせながら、プリプリと怒っていた。
彼女は今まで出会った人たちよりもハルに近い姿をしていたが、金色の髪の中から覗かせたピンと長く伸びた耳が、ハルと同じでは無いことを証明していた。
「もーっ、今日は朝から弓の特訓って言ってたでしょ?!」
「その~、今朝は天気が良くて風も気持ちよかったから・・・」
「は~~~るぅ~~~? 言い訳する悪い子はグラウンド・・・じゃなかった、森の中十周よっ!」
「え~~~っ! そんなに走ったら倒れちゃうよ~~~っ!!」
「だったら、約束はちゃんと守ること! 分かった?」
「うん、分かった!」
「じゃあ、お姉ちゃんと約束ね?」
エフィはスッと自分の小指をハルの前に差し出すと、ハルもまた自分の小指をエフィの前に差し出した。
そしてそのまま小指を絡めて、手を上下に振りながら歌い始めた。
『ゆ~びきりげんまん、うそついたらはりせんぼんの~ます、ゆびきった!』
歌い終わりと同時に二人は指を離すと、少しの間お互いの目を見つめ合い、それからニコッと笑った。
「今度はちゃんと約束を守るんだよ?」
「うん!」
「んじゃ、ちょっと遅くなったけど、朝練始めよっか!」
「お願いします!」
「じゃあ、いつもの場所まで競争だよ! それっ!」
「あ! お姉ちゃん待ってよ~~!」
フライング気味に飛び出したエフィに追い付こうと、ハルも慌てて駆け出した。
しかし二人の体格差からも結果は明らかで、距離はどんどん離れていった。
そしてお互いの声が届かないほどの差が出たのを確認し、エフィはポツリと言葉を漏らした。
「みんな、今頃どうしてるかな・・・」