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準備を終えたハルが上から降りてくると、玄関に小さな女の子を連れた赤毛の女性が立っているのが見えた。
その姿を確認すると急いで駆け寄り、二人の前に立ち止まった。
「ロゼ師匠、おはようございます!」
「おうハル坊、おはよう。 今日も元気そうだな」
「お・・おはよう、ハル君」
「リーナもおはよう!」
ロゼと呼ばれた赤毛の女性はサティと同じように、人とは違う容姿をしていた。
彼女は髪だけでなく腕や脚や耳に、それからお尻からもふさふさした赤い毛が生えていた。
全体の容姿を一言で表すなら、『狼を擬人化したらきっとこんな感じ』、というのが一番しっくりくるだろう。
一方リーナはというと、透き通るような白い肌に栗毛のショートヘアをした可愛い女の子だ。
しかし、横に一回り大きく不格好に伸びた耳が、ハルとは違う種族であることを示していた。
そしてやはりハルは、自分とは違う容姿をした二人に違和感を持つこと無く、自然に接していた。
「サティはいるか?」
「うん、いるよー。 ちょっと呼んでこようか?」
「いや、いい。 いつも通り勝手に上がらせてもらうよ」
「どうぞー。 お母さんなら、居間にいるよー」
「情報サンクス。 ところでハル、今日はエフィから弓を教えて貰うんだろ? 向こうでエフィが腕組んで、『ハルおっそーい!』って怒ってたぞ」
「そうだった! ごめん、ボク行くね!」
「ああ、気を付けてな」
「ま・・またね」
「うん! いってきまーす!」
急いで家を飛び出したハルに、ロゼとリーナは手を振って送り出した。
それに答えるように、ハルも背中を見せながら二人に向かって手を振りながら走り去っていった。
空はどこまでも青く、風は穏やかで、木々も優しく揺れていた。
「平和だな」
「・・・うん」
「じゃあ、アタシらも行くとするか」