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言わせて貰います!  作者: 栗須まり
7/12

友達と

弱った。とにかく弱った。

机に並べた教科書をしまい、帰る支度をしながら、私は深い溜息を吐いた。

昨日の事が引っかかって、今日は一日授業に集中出来なかった。

期末試験も近いというのに、このままじゃダメだ!

けど、今の所他に打つ手も見つからないのは事実なのよねー。


昨日はあれから歩く速度についての注意をしたら、何故か一緒に歩く練習をする羽目になったのだ。

で、そのまま母達の元へ戻ったら、すっかり私達が打ち解けたと誤解され、勝手に盛り上がってくれちゃってさ、引きつった笑みを浮かべるしかなかったんだから!

ユーエンはユーエンで、何を考えているのかさっぱり分からないし。

意を決して伝えたお断りの言葉は、うやむやにされちゃったし。


このままだと‥当然この後の流れは、やはり婚約する方向へ向かう訳で‥そうなると悲惨な未来しか待っていない訳で‥

想像するだけで気が重い。

ハァーともう一度深い溜息。

そんな私の様子を見兼ねて、親友のエイミーが声をかけて来た。


「リリア、悩み事があるみたいね。昨日の事?」

いつもと違う私の様子に、きちんと気付いてくれるとは、流石親友!

彼女とは入学後に席が近くなった事から親しくなり、そのまま意気投合して、今では何でも話せる親友だ。

平民階級の彼女に対して、ウルセラの様な階級至上主義の一部の生徒は、横柄な態度を取ったりするけど、そんなのには負けない頼もしさを持っている。

まあね、彼女の家は、他国にも沢山店舗を出している大きな商家で、そこらの貴族なんかより、よっぽど裕福ってのもあるけど。

こんな頼れる親友にだけは、昨日初顔合わせがある事を伝えてある。(記憶にある限りでは)

「まあ、そうなんだけどね。予定が狂ったというか、打つ手がないというか‥」

「何?詳しく聞きたいから、このままリリアの家に行っていい?」

「うん。丁度相談に乗って欲しいと思っていたとこ。一緒に帰ろう!」

持つべき物は友達だ。

少しだけ気持ちも軽く感じる。

て、事で、二人で帰る支度をしていたら、もう一人の友達であるハリーがやって来た。


「終わった終わった!エイミー、一緒に帰ろう!」

彼も平民で、エイミーの家と負けず劣らずの商家の跡継ぎ。

親同士の付き合いから、エイミーとは幼馴染だけど、エイミーを好きな事は周知の事実だ。

ただ、本人はバレていないと思っている。

陽気な性格で、クラスではムードメーカー的な存在な為、貴族至上主義の連中とも上手くやれている中々大した奴。

「あー‥今日はリリアの家へ行くから、一人で帰って」

「えっ!?それなら俺も行っていい?」

「今日は女の子同士の話があるから、ハリーは遠慮して」

「えー!!」

エイミーにきっぱり断られたハリーは、ガックリと肩を落としている。

そして縋る様な目で私を見つめて来た。

「だ、大丈夫よエイミー、ハリーにも参考として意見を聞きたいと思ってたとこだし、一緒でいいわ」

こんな目で見つめられたら、断る訳にはいかない。

それに、男性目線からの意見も、聞きたいと思った事は嘘じゃない。

「そう?リリアがいいなら、私は何も言わないけど。いいことハリー、お口にチャック!この意味分かるよね?」

ハリーはブンブンと首を縦に振り、パアッと顔を輝かせる。

まるで飼い主に"構って"と訴える子犬の様だ。

そこでフッと、昨日のユーエンが浮かんで来る。

ハリーが子犬なら、ユーエンはさしづめ血統書付きの大型犬と言ったところか。

それも、とびきり毛並みのいい、王族のみが飼う事を許された特別な犬。

同じ犬でも子犬には気軽に触れられるけど、特別な犬には安易に触れる訳にはいかない。

ちょっと!我ながら上手い表現じゃない?

そうよ、やっぱりユーエンには関わっちゃいけないのよ!

よし!ここはひとつエイミー達にも知恵を貸して貰って、ユーエン対策を練るとしよう!


フン!と鼻息荒く拳を握り締める私の勢いに、2人はキョトンと顔を見合わせている。

何となく光明が見えた気がして、意気揚々と我が家へ向かう私は、すっかり元気を取り戻していた。

けど、その事に気を取られていたせいだろう。

以前の記憶では、エイミー1人しか我が家へ呼んでいなかったという事を、この時の私は気付いていなかった。


読んで頂いてありがとうございます。

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