表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/263

親睦を深めるために

 イアン様と親睦を深めるのが目的で侍女にクッキー作りを教わった。

 私は出来上がったクッキーを渡すため、客室に向かう。

 渡すだけだと仲良くなれないと思った私は、イアン様と一緒にお茶をすることになったのが昨日の出来事。


「だから何回も言ってるだろ。こねすぎなんだよ」

「そう言われても」


 イアン様と私、そして三名の侍女が調理場にいるという奇妙な状況。


 少し離れた距離で侍女達がハラハラと見守ってくれている。

 イアン様は私にクッキー作りを教えてくれている。


 最初は、私とイアン様の二人でという話だったらしい。

 さすがに調理場に令嬢と令息の二人にするというのはなにかあると対応が遅れる可能性があるので、侍女三人で見守っている。


「クッキー生地はさっくりこねるのが美味しくなるんだ。昨日のクッキーは硬かったし、若干パサパサしていた。ということはこねかたに問題があるんだ」


 どうやら私はイアン様の変なスイッチを押してしまったようだ。


 それにしてもイアン様はお菓子作りが出来るとは思わなかった。

 というよりもゲームでもそんな設定あったかな。


 確か、双子の妹のためにお菓子作りしたことがあったとは言っていた気もするけど。


 ーーなんだかちょっと可愛い。


「ん? なんだよ。ニヤニヤして」

「あっ、いえ」

「……貴族の男がお菓子作りが好きなのは変かよ」

「どうして、そう思うのですか?」


 変だなんて思ったことはない。

 どうしてそう思ってしまったのか気になってしまい聞き返してしまった。


「だって変だろ。男がそんな女みたいな趣味持ってるなんて。ましてや俺は剣術の天才だと言われてんだ」

「はい、知ってますよ。ですが、男とか女とか関係ないです。それに……私だって女なのにイアン様、あなたに剣術を教わっています」


「なんだか似てますね」と、クスクス笑っていたらイアン様が驚いた顔をしていた。


 笑ったのは失礼だったのかもと思い、慌てて謝ろうとしたらイアン様がお腹を抱えて笑いだした。


「あははははっ! 確かにそうだな」

「イアン様?」

「男とか女とか関係ない、か。お前はどうして俺に剣術を教わろうと思ったんだ?」

「私は……守りたい人達がいるから、ですかね。イアン様もそうなのではありませんか?」

「……そうか、俺はそんな思いを忘れていたんだな」


 イアン様はボソッと呟いたが、私は聞き逃すことはしなかった。


 気を張って生きてきたのもあり、イアン様はなんのために剣術をしているのかを忘れているような気がしていたけど、私の予想は当たっていたらしい。


 守りたい人のために剣術をしているというのは私の想像だ。

 イアン様のことを考えるとそれしか思いつかなかった。

 だってイアン様は、双子の妹を溺愛しているんだもん。


 そのことを忘れるぐらいにたくさん悩んで頑張ってきたんだな。


 強くなればなるほど周りの人達の期待が高くなる。そんなプレッシャーを毎日抱えて生きていることを考えただけでも逃げたくなるに決まってる。私だったら逃げていたと思う。


 イアン様は剣術だけじゃなく、心も強い人なのだろう。

 強い人だからこそ、一人で抱えて悩んでしまったのだろう。


 悩んでいても、周りからよく思わなくても、お菓子作りが好きというのを隠さないあたり、精神が強いとは思ってたけど。


「ああっ!!」

「え!?」


 話に夢中になっていたばかりに私は、クッキー生地をずっとこねているのを忘れていた。


 イアン様は私がずっとこねていたクッキー生地を見て絶叫する。


 これはもう一回作り直しだろう。


 イアン様は絶対怒ってるだろうと思っておそるおそる顔色をうかがう。


「たくっ。仕方ねぇな」


 仕方がないといいながらイアン様はどこか楽しそうだ。




お菓子作りって、小麦粉を加えたら混ぜすぎないことが基本ですね。

こねすぎたり練りすぎると小麦粉に含まれるグルテンの力が強くなるから美味しくならないんですよね。

私自身、お菓子作り苦手なので得意な人はすごいと思います。


ブックマーク、感想、評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] そうか、私のクッキーが固かったのはそういうことか(違うそうじゃない) イアンとクッキー作り仲良くしてるとか、面白いです。 これ、皇太子が知ったらどう思うのかな? ちょっと気になります…
[良い点] 4章まで拝読いたしました! ソフィアの斜め上の行動に思わず笑ってしまいました! 面白いです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ