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約束ごと 《コラボ小説》

こちらの番外編は、ソフィアが転生したと気付いた頃のお話です。


なので、本編とは性格が違ってるかもしれませんが、ご了承ください。


神崎ライさんの

「絶望の箱庭」とのコラボ小説となっております。


気になりましたら、神崎ライさんの作品もチェックしてみてください。

 高熱がやっと落ち着いてきて、目を覚ました。


「……」


 真っ白な天井。横を見ると豪華な創りの装飾品が置かれている。


 何、病院??


 そう思って上半身を起こすと、手に温もりを感じた。


 見ると、顔の整った男の子が私の手を大事そうに握りながらも眠っていた。椅子に座りながらも前のめりになってベッドに顔を預け、規則正しい吐息を立てて眠っている。


 私はこの男の子を知っている……というか、見覚えがある。それよりもこの部屋も見覚えがあるわ。


 私、車に轢かれたはずよね。生きているなら病院なはず……。


 なんでこんな場所に?? そもそも私って……。


 記憶が混乱してる。


 ベッドの位置からドレッサーの鏡に映し出された自分の姿を見て、絶句した。


 桃色の髪。緑色の瞳……それにこの顔。乙女ゲームの悪役令嬢になってる!?


 落ち着け、少しだけど悪役令嬢の記憶もある。正確には、悪役令嬢になる前の記憶なんだけど。


 悪役令嬢は両親が亡くなって養女として公爵家に引き取られた。両親が亡くなった事を知らない悪役令嬢は自分が捨てられた子なのだと思い込み、当たり散らすようになっていったのよね。


 両親が亡くなったので同情から甘やかされて育ったのでかなり我儘気質になってしまった。


 最終的には、悪役令嬢は死亡する。そんな悪役令嬢に私がなっている……いや、多分、転生したんだろうね。


 前世での私同様に、この世界でも私は要らない子なのか。


「ん……あっ」


 自分の運命に絶望していたら、寝ていた男の子が目を覚ました。私を見て、嬉しそうに微笑んだ。


「良かった。目が覚めたのですね」


 余りにも愛嬌がある顔立ちで目を丸くして固まってしまった。


 男の子は首を傾げ、何かを察したのか、私の額に手を伸ばしてきた。


「お熱は……もうないみたいですが」

「ノエル様!! 後は私がやりますので、お休みになってください」


 部屋に入ってきたのはメイドの服装をした女性だった。


「ソフィア様、お気付きになられたのですね」


 私に気付き、近寄るその女性は私に優しく声をかけてくれた。


 私を『ソフィア』と呼ぶ。それは、悪役令嬢の名前でもある。本当に私は悪役令嬢として転生してしまったらしい。


「あなた、誰?」

「失礼しました。私はアイリスです。お嬢様のお世話を任されました。そしてこの方はソフィア様の義弟になります、ノエル・デメトリアス様です」

「義弟……」


 そうか。義弟か。……私はこの世界でどんな死に方するのかな。


 攻略対象者の一人に悪役令嬢の義弟がいる。そして、義弟ルートや他のルートでも死亡が確定されている。


 生きている意味なんてないじゃない。きっと、義弟や世話係だって私を嫌がって離れていくんだから。


 正直、死にたいわけじゃない。生きていいのなら生きていきたい。でも、運命って変えられないじゃない。


「よろしく……お願いします」


 私は精一杯、二人に言葉をかけた。その声は震えていたけど、二人は満足したのか部屋を出ていく。


 横になり、天井を見ながら考える。これからどうしようかと。


 死亡フラグ回避なんて私には無理。出来っこない。


 だって私は主人公(ヒロイン)じゃないもの。


 ゆっくりと目を閉じる。


異次元(デイメンションズ)回廊(ゲートオープン)


 高めな女性……いや、声からしてまだ幼さがある元気な声が聞こえてきた。


 聞いた事のない言葉だったので、夢かと思い無視して寝る。


「あれ、間違って違う場所に行っちゃった。ここどこだろ」


 幼い声は不安げになっていた。


 これは本当に夢なのかなと疑問に思い、薄らと目を開けると……大きくて長い耳、まん丸な瞳。しっぽが歩く度にフリフリと左右に揺れる。


 これは……人形?? 擬人化?? どっちだろう。


 この世界が剣と魔法だ。ファンタジーなのだ。なので、うさぎが二本足で立ってるとか、人語を話してるとか、驚くことはない。


 ほんのちょっと寝ぼけてボーッとしてて思考が追いつけないだけな気もするけど。


 ただーーこんな子、シナリオには無い。もしかすると元々シナリオに入る前なのでただ単に説明されなかったり、脇役だからシナリオには登場さえしてなかったのかもしれない。


「あっ、ごめんね。起こしちゃったね」


 うさぎは私には気付くと、てててっと小走りで近寄って頭を下げた。


 近くで見ると、触ると柔らかそうな毛並みだ。赤とピンク色のワンピースにうさぎ耳には赤めのリボンが……。


 ドクンッと、心臓が波打つ。寝起きなのもあり、遠目だと色がぼやけて見えにくかったけど、近くで色がハッキリと見える。


 何故か赤色だけが異様に体が反応する。


 息が思うように出来なくて苦しくなって胸を抑える。


「どうしたの?? 待ってて、人を呼んでくるから!」


 うさぎは慌てて部屋を出ていく。薄れゆく意識の中、この世界に転生した事を後悔し、死の運命を受け入れる覚悟をしたのだった。





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