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甘い誘惑には裏がある4

「小説みたいなお話ですね。素敵です」


 アメリア様の馴れ初めを聞いた私は、ありのままの感想を言ってしまった。


「言われてみればそうかも、私も驚いた」


 アメリア様は苦笑した。そして、前のめりになって問いかけてきた。


「それで、協力してくれるわよね? 少しでも理解ある方が協力してくれると有難いのよ」


 あまりにも真剣で「やりません」なんて、言える雰囲気では無いので、私はゆっくりと頷いてしまった。


 アメリア様は目をキラキラさせて嬉しそうにしていた。その後は他愛のない話をした。


 主にBLの話だったけど。途中からアメリア様が興奮してしまって鼻血を出して倒れてしまったのは驚いたけど……。


 アメリア様が倒れてしまったので、帰ることになった私は侍女に連れられてお城の転移が出来る魔法陣に案内されていた。


 前から見覚えのある人物二人が歩いてきた。案内してくれた侍女は立ち止まり、深くお辞儀をする。私はカーテシーをした。


 一人はアルロ皇太子殿下、もう一人はアレン様だ。


「あれ、きみは確かソフィア・デメトリアス嬢だったよね。アメリアのお茶会に呼ばれてたはずだが、流石に早……って、もしかしてまたアメリアが倒れた?」


 アルロ皇太子殿下は、何かを察したのか口元を抑え、侍女を見ると、侍女は首を縦に振って頷いた。


「アメリア……」


 盛大にため息をついたアルロ皇太子殿下は私の方へ向いた。


「アメリアがとんだ粗相をしてしまった」

「いえ。アメリアの体調が早く良くなれるように祈っております」

「そう言ってもらえると助かる。また、会ってくれ」

「はい」


 アルロ皇太子殿下にやんわりと返事する。


「アルロ殿、()はこれで」

「ああ。また頼む」


 アレン様は王族や皇族相手だと一人称を『私』になる。それは社交界マナーなのだろう。


 アルロ皇太子殿下は私の横を通り、歩いていく。アレン様は侍女に目を向けると、何かを察した侍女は会釈して慌ててその場を去ってしまった。


「ア、アレン様……お仕事だったのでは?」

「アルロ殿と話してただけだよ。一緒に行こう」

「大事な話だったのでは?」

「話は済んでたから気にしないで」

「そ、そう……ですか」


 この間も二人で会ったばかりなのに、会えて嬉しく思ってしまう。


「あっ」


 窓から見える中庭の景色は色んな種類の花が植えられていてとても綺麗で思わず立ち止まってしまった。


「見てから帰ろうか?」

「いえ、窓からでも十分です。帰りましょう」


 アレン様と一緒に見れて嬉しいのは内緒。それに、勝手に中庭に入るわけにもいかないし。


「アレン様にお会い出来たので。それだけで胸がいっぱいです」


 王城以外の場所で会った。嬉しくないはずがない。


 アレン様は恥ずかしそうに微笑む。


 その瞬間、『幸せ』だと強く感じてしまった。


 辛いことの方が多かったけど、それでも囁かな幸せが訪れれば辛さが上書きされる。


 前を向く強さに変わっていく。


 私、この世界で転生して最初は絶望した。だって、悪役令嬢なんだもの。


 未来を変えるなんて、出来るか不安だった。


 でも今では頑張って良かったと心から思える。



 だって、



 私は、この世界が大好きだから。


 そういえば最初に私に勇気をくれたのは……小さなうさぎさんだった。


 私に似た名前のうさぎさん。あの子は今、どうしてるのかな……。
















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