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姉の死と養女と【義母視点】

 私の娘……正確には私の姉の娘が王太子殿下と婚約をしましたの。


 姉が死に、引き取った娘なのだけど……まさかあの娘が王太子妃になるかもしれないなんて引き取った当初は思わなかったのです。


 私は……姉の死に関わっているあの子、ソフィアが嫌いでしたの。だって許せます? 姉を殺したも当然なのに。


 それなのに、ソフィアが生きていて、姉は死んだ。もう二度と会えない。


 なんで姉は死んだのにソフィアは生きているの? 姉の代わりに死ねば良かったのにと、何度も願っていましたの。


 そんなの淑女の風上にもおけないのは理解していましたが、どうしても許せなかった。


 だから、養女として引き取るのをかなり反対したけど、結局は引き取ってしまいましたの。


 その理由は、ソフィアが姉に似ていたから。


 一時の感情に流されて、引き取ったことを後悔した時もありました。だって、日に日に……姉に似ているソフィアを見ていると、余計に悲しくて辛かったのですから。


 夜もなかなか寝付けなかった日も出てきました。


 精神的に疲労が溜まった私は、夜中に寝室を抜け出し、ソフィアの寝室に忍び込みましたの。


 もう限界だった。見たくなかった。だからーー……。


 私は手に持っていた刃物を上にあげ、人思いに心臓に突き刺そうとしました。


 だけど、ソフィアが姉の面影と重なりまして、


 そう、この子は姉が命を懸けて守ろうとした最愛な娘。わかっていた。わかっていたんです。


 ソフィアを殺すのはお門違いなのも、本当は守らなくてはいけない存在なのも。


 私は規則正しく眠っているソフィアの頬に触れました。


 殺せませんでした。だって、姉の幼少期の姿にそっくりで愛おしくて、可愛かったのですから。


 今でもあの時の自分がとった行動を思い出しますと、恥ずかしいと思ってしまいます。


 そして、今日。


 妃教育の為、王宮生活になったソフィアを見送るために屋敷のエントランスに行くと、ソフィアがカーテシーをした。


「お義母さま、お義父さま。行って参ります」


 引き取った当初は本当に嫌いでしたの。でも、今は……我が子のように愛おしくて堪らない存在になっています。


 私はソフィアに別れの挨拶を惜しむかのように抱き締めます。


 どうか、この子の幸せが永遠に続きますようにとーー……。


 そう、願いを込めて。




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