ずっと支えてくれて、ありがとう
朝、アイリスに起こされ、目が覚める。
カーテンを開けられ、眩しい光が当たり、目を細める。
「おはようございます。ソフィア様」
いつものように微笑みながら挨拶をされ、私は眠たそうに目を擦りながらも弱々しく「おはよう……」と挨拶を返す。
お風呂に入り、朝食を食べ、身支度をする。
「眠たそうですね。大丈夫ですか?」
「え、うん。大丈夫」
私がいつもよりも眠そうにしていたので心配になったアイリスが聞いてきたので、困ったような顔をして苦笑した。
「そう、ですか? でも……何かあったら遠慮なく言ってくださいね」
「……うん」
いつもの他愛ない会話だ。それが今日は何故か心に響く。
優しさが当たり前になりつつあったけど、改めて当たり前じゃないことに気付かされた。
もしかしたら初心を忘れないって、こういうことを言うのかもしれない。
だから無性に伝えたくなる。
「あのね、アイリス」
私の髪の毛をセットしているアイリスは「なんですか?」と相打ちをする。
「私、アイリスに出会えて良かった。本当にありがとう。大好きだよ」
「え!? ど、どうしたんですか!!? 急に。いや、私も大好きですが、出会えて感謝していますが」
私の急な感謝の言葉を聞いて驚いたアイリスは慌てふためく。
「何となく、言いたくなったの……産まれてきてくれて、ありがとう。ずっと支えてくれて、ありがとう。見守っていてくれて……ありがとう」
「あっ……、勿体なきお言葉です」
私の言葉を聞いたアイリスは涙声で感謝する。アイリスの顔は見れないけど、アイリスのぽっかりと空いた心に響けば良いと思った。
傷付いた心は元に戻らないけど、上書きなら出来るでしょう?
私も沢山上書きしてもらったから、だから自分の過去と向き合える事が出来た。
だから大好きな人に辛い思いを抱えてほしくないと思った。大好きだからこそ、暖かい言葉を贈りたい。
そう思えるようになったのは、かなり時間がかかってしまったけど……。
気付いたから、少しずつ実行していこうと思った。
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寮を出ると、クロエ様が待っていた。女性の姿で。
「良かった。無事で」
クロエ様が私の顔を見るなり、笑顔で駆け寄ってきた。
隣に並び一緒に歩き出す。
「あの、アレン様かから聞きました。助けてくださってありがとうございます」
「何の話?」
「渡したのでしょう? 光の念を込めたお守りを、さらに遠回しに私に渡されるように」
「まぁ。でも、アイデアはエレノアさんですよ。ソフィア様なら上手くやっていけるだろうって」
「エレノアさんが……」
「あの人は素直じゃないから。本当はソフィア様が心配で仕方ないんです。でも、最終的には見守ろうと決めたみたいですけどね。そのお守りだって、エレノアさんが作ったんですよ。それに魔力を込めただけですから」
「……そう、なんですね。お礼を言わないとですね」
「是非そうしてあげてください。きっと喜びますよ」
クロエ様は上品に笑った。私も釣られて笑う。




