キースさんは一途なんですね
王様との謁見も無事(?)に終わり、廊下を歩いている。
キースさんが先頭で歩いている。ただ一つ、物申したい事がある。
「あ、あの!! これは、なんですか?」
「?? 何って鎖だけど」
「そうなんですけど、魔力封じの枷を嵌められて……そのうえ首輪に鎖って……」
私の発言にキースさんは立ち止まる。意味がわからないというように首を傾げられた。
そう、謁見の間から退出する前にキースさんに首輪をつけられ、首輪についている鎖をキースさんは握り、私を引っ張る形で歩いているのだ。
もはや扱いが奴隷並み。
「ああ……、オリヴァーみたいな事にならないように。自制だよぉ? それと、逃げられないようにしとかないとね。アレン王子が信じたとしてもここの城の者は疑い深くてね。
ましてや毒殺未遂事件が最近起こったんだ。疑わないという方が難しい。その首輪はね、あんたが城から離れたら針が出て、毒が体内に入る仕組みなんだ。
もし、あんたが犯人なら外部の人と連絡するだろうからね。その手段を無くさせてもらうよ」
キースさんは私の首輪に触れる。とても冷たい瞳で睨まれ、背筋が凍った。
何となく、オリヴァーさんが前にキースさんが危険だというのがわかった気がする。
「わかりました。それで気が済むのなら」
私は怖いけど、キースさんの目を見て、口を開く。
それならば分からないことがある。
「あの……質問、良いですか?」
「ん~?」
「なんで、私をこんなにも疑うのに、私の属性やジョセフさん……この子狐の事を黙っててくれるのですか?」
私は抱きかかえてるジョセフさんをキースさんに見せるように前に出した。
キースさんは虚空を見つめ、口を開く。
「ああ、その事。その力があれば王族を滅ぼす事は簡単だろう。でもそれをしないで手加減をしていた。危害を加えるつもりがない証拠、または油断させて一気に落とす作戦か……どっちにしろ、危険なのはかわりはないが王子が信じたのならば従うまでだ。まぁ魔法がかかった水も飲んで潔白なのは証明はされたけどね」
アレン様を『殿下』ではなく『王子』と呼んだ。
王子殿下という言葉もあるけど、この世界では、殿下と呼ばれるのは正式に王位継承権を与えられた証明になる。
それはつまり……。
十歳より下になる。
アレン様がいつの頃なんだか、まだ分からないな。
ただ一つ言えることは、
「キースさんは一途なんですね」
「……は?」
「変な意味じゃないんですよ。アレン王子が大好きで心配で、傷ついてほしくないって全身から言ってて、なんだか可愛いなって」
クスクスって笑うと、キースさんはそっぽを向いて「無駄話しすぎたようだね。もう行くよ」と、鎖を引きながら歩き出す。
耳が赤くなっていた。キースさんが照れているの、なんだか新鮮。
「……脅してるつもりだったのに、なんでそんな発想になるんだよ」
ボソッと何かを呟かれたが、聞き取れなくて聞き返したら、軽く睨まれた。
連れてこられたのは、風呂場だった。待機していたであろう侍女が二人いる。
キースさんは私の首輪を外され、ジョセフさんをキースさんが抱きかかえる。
私は侍女二人によって、風呂場の中に連れていかれた。
風呂場で汚れを洗い落とし終わると、用意されていたであろう白とワインレッドが基準のドレスを着せられた。
何故……?
と、思ったが、侍女の一人が「これは、王様の配慮です。一応お客人ですので……それに、貴族だろうからと」言われてしまった。
さっきは貧民だと思われていたのに……、聞いてみると、貴族でも田舎育ちはいるし、着ていた服はボロボロになっていたけど良い素材の布を使用している。多分、貴族だろうからなるべく丁寧に扱えという命令らしい。
ドレスの着替えだけじゃなく、髪の手入れまでしてくれた。
風呂場から出てくると再びキースさんに首輪をつけられた。
ジョセフさんも返され、抱きかかえるとジョセフさんも綺麗になっていた。
ほのかな金木犀の良い匂いがした。洗ってくれたんだ。




