表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

216/263

敵意があるとは考えにくいとは思いましたが……【クロエ視点】

「『クリムゾン メイジ』の主人公(ヒロイン)のクロエ様は……どうなったのでしょう?」


 と、数時間前にソフィア様が問い掛けてきたので曖昧に「どうなんでしょうね」と答えてしまった。


 ソフィア様が言いたいのはこうだろう。


 乙女ゲームの『クリムゾン メイジ』の本来の主人公(ヒロイン)の人格はどこにあるか。


 どうしてその発想になるのかは検討がつく。悪役令嬢のを見ちゃえばな。


 まさか、心が離れていたなんて誰も思わないだろう。


 悪役令嬢は呪いによって肉体から魂が離れたようなものだけど……主人公(ヒロイン)の場合はどうなんだ……?


 今まで気にかけた事が無かった。


 何故俺は、乙女ゲームの主人公(ヒロイン)に転生したんだ?

 そこに意味があるのならば……。


 ソフィア様を助ける為に転生したと思っていたが、もしかしたら別の理由で転生した可能性も無くはない。


「すみません。ソフィア様、遅く……あれ?」


 用事を済ませ、ソフィア様と待ち合わせしている教室に来ると、誰一人として居なかった。かわりに置き手紙みたいなのが机に置いてある。


 手紙の内容を見ると、カミューリャ塔に行くと書いてあった。


 あの人の所か……。なら、大丈夫か。


 ソフィア様には危害を加えないだろうとは思うが、念の為に俺も行くことにしよう。


 渡り廊下に差し掛かった時、ソフィア様が顔面蒼白で駆け寄ってきた。


 詳しくは知らないが、何かがあったのだろうが……意味深な事を言っていた。


『恨みがあるのでは?』と、何故そんな思考に?


 とは思うものの、ソフィア様を宥める。


 事情はソフィア様が落ち着いてから詳しく聞いた方が良さそうだ。


 テンパってるようで、上手く伝えることが出来ないだろうから。


 ソフィア様が背を向けて歩き出したのを見送った後、息を吐く。


「隠れて見てるとは、悪趣味ですね。そんなに気になるんですか?」

「あら。気配を上手く隠せたと思うのに……見つかってしまったわ」


 物陰に隠れていた人物は姿を現した。わざとらしく頬に手を添えてとぼける。


「エレノアさん、一体、ソフィア様に何を吹き込んだんです?」

「吹き込んだなんて……人聞きが悪い。ただ、もうこれ以上、深追いしないように忠告の意を込めただけです」

「ソフィア様はそうは思ってなかったみたいですよ」

「そうみたいです」

「……敵意があるとは考えにくいとは思ってましたが、ソフィア様と関わってどうするおつもりで」

クロエ様(貴方)もソフィア様も、不思議な雰囲気で興味深いんですよ」

「俺を避けてたエレノアさん(貴女)が唐突に話しかけてくるのも気になるのですけどね」

「……悪魔が動き出しまして、お力添えをと」

「随分と都合が良いことで」


 呆れてため息をすると、エレノアさんは首を傾げた。


 まるで、当然だと言わんばかりだ。俺の言ってることが理解してないんだろう。


 仕方がない。悪魔を野放しにすると大変なことになる。


「わかりましたよ。力を貸します。ですが、その前に……その格好、目立つので何とかなりません?」


 俺は自分の額に手を添えて呆れた。何せエレノアさんの格好が、ホラー映画に出てきそうな程かなりのホラーだったのだ。


 全身血塗れの顔なんて殴られたように腫れている。特殊なメイクか魔法なんだろうけど。


「そうかしら。可愛いと思いますのに。クロエ様は何もわかってないのですね。この良さを」


 分かりたくない! と、内心思ったがグッと堪える。


 俺は、これでもかというほどの爽やかな笑顔を作ったのだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ