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どう思うかは別として【アレン視点】

 それは、デメトリアス家に行く数日前のこと。


「ソフィア嬢が本当の両親と過ごし家に行く?」

「そのようですよ」


 書類を渡しに来たオリヴァーが何気なく話してきた。


 何処でそんな内密な情報を……と、思考を巡らせるまでもない。


 オリヴァーとキースは幼なじみ。ことある事に情報交換はしているんだろう。


 この二人ならば外部に漏れる心配は無い。何せ、漏れないように結界を張っている。それは声を外に漏れることは無いし、読唇術をされないように結界の外からは唇を一ミリも動いてないように見える。


 不自然さがあるのだが、唇は動いてないだけで表情や動作はされる。


 その結界事態も改善したいのだが、それにはまだまだ知識と実力不足。何よりも魔法関係なので、魔法に詳しい人が不足している事実。


 それはともかく、その結界を張って会話するので、問題は無いということだ。


 話を元に戻そう。


 ソフィア嬢が両親の家を気にしてないはずは無いと思っていたが、こんなにも早く行く決心がつくとは思ってもいなかった。


 ソフィア嬢が幼い頃に両親を亡くした。それも魔力暴走でだ。


 闇属性を封じる為にその時の記憶を封印された。


 日が経ち、封印された記憶を思い出し、闇属性も解放された。


 だが、暴走はしなかった。


 それはずっとソフィア嬢が頑張って来た結果だと思っている。


 傷付いた心を必死に隠すようにいつも通りに振る舞おうとしているソフィア嬢が儚くて……可愛らし……。


 ゴホンっーーと、失礼。


「オリヴァー」


 オリヴァーと目が合うとニコッと微笑む。

 何かを察したのか引きづった顔になった。


「俺も同行したいな。それまでに仕事を終わらせよう」

「そんな無茶苦茶な。かなりの量ありますよ」

「それでもやらないと、それに聞いてしまった以上、気になるだろ」

「それはそうなのですが」


 オリヴァーは肩を落とし、「言うんじゃなかった」と後悔とも呼べる言葉を吐いていた。


「こうなることを薄々気付いていたけど、俺に話した理由なんて、ソフィア嬢が気掛かりなんだろう。俺も近々様子見に行くつもりではあったし、丁度良いだろう」

「丁度良い……のでしょうか」

「まぁ、この数日間は忙しくて寝てられないな」


 満面の笑みで話すとオリヴァーが諦めたように息をつく。


 丁度良い……なんて、良く言えたな。なんて我ながら感心してしまった。


 何せ、予定よりも早めに会いに行ける喜びを隠すようにそんな言葉が出てしまったのだから。


 早く会いたいなんて、絶対に第三者に聞かれたくはない。


 もし、万が一にでもソフィア嬢の耳に入ったら嫌だと思ったから。


 それは恥ずかしいとかじゃない。


 そういうのは、ソフィア嬢に自分の口から直接話したいだろう。


 どう思うかは別として。


 本人が居ない時に話してしまうと、聞いていた第三者(特にオリヴァーが)面白がってソフィア嬢に話す可能性があるからな。


 認めたくは無いが、オリヴァーとソフィア嬢は仲がいい。話の流れで言ってしまうのも有り得るのだ。


 ーーこうして、ソフィア嬢が外出するまでの数日間で仕事をひと段落したのだった。



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