私がやりましょうか?
ここからは本当に慎重に行かないといけない。
アイリスが待機しているであろう、部屋の前にいる。
殺されるかもしれないということを盗み聞きしたばかりだ。もしかしたら、もう死んでるかもしれない。そう考えると恐ろしい。
まだ生きている可能性にかけるしかない。
ただ、部屋の中にはアイリスだけじゃなくて侍女もいるはずだ。
その侍女をなんとかして部屋の外に誘き出したい。
幸いなことに見張り(?)は居ないのが救いね。
「私がやりましょうか? 侍女服着てますし」
「そうですね。私がやると、余計に警戒しそうですが……、ソフィア様は侍女は侍女でも服装が違いますし、怪しまれそうです」
小声でノア先生に話しかければ、ノア先生は私の服装を見て、眉間に皺を寄せる。
確かに、私の着ている侍女服はデメトリアス家で指定してある侍女服だ。
侍女服はデザインはどこも同じだけど、使われてる色が違う。
色を見ればすぐに気付く。
どうしたものかと悩んでいると、ひょこっとノア先生の肩から顔を出した小型ドラゴン姿のシーアさんは言う。
「それならば、心配せんでも大丈夫じゃ」
ノア先生はシーアさんに呆れた顔を向けたが、シーアさんはノア先生の肩から飛び降りると人の姿になる。
両手を腰に当てて胸を張る。
シーアさんは口を開く。
「無責任な訳ないじゃろ。ワシの魔法で色を変えるぐらい簡単じゃ」
私は首を傾げた。
「そんなこと出来るのですか?」
「うむ」
シーアさんはクスッと笑って指を鳴らす。すると、一瞬にして私の着ている侍女服の色が変わった。
それと同時にシーアさんは再び子ドラゴンの姿へと変わった。
ふよふよっと力無く浮かんでいるシーアさんを両手を器にして受け止める。
「あっ……」
シーアさんも限界なのかも。元はといえば私がシーアさんを連れてきちゃったのがいけないんだけど。
早く、しないと。アイリスを連れ戻して、急いでシーアさんを還さないと。
「私は外で待機してます。言いたいこと、あるのでしょう?」
「はい。でもそれだとノア先生だって」
「私は後で構いません。ソフィア様の気持ちを優先したいので」
「……ありがとうございます」
私はゆっくりと頷く。
扉をノックする。
一回……
二回……
三回……
と、緊張しながらもノックすると、中から声が聞こえた。
次の瞬間、ガッシャーンと食器の割れる音が響き、私とノア先生はお互いの顔を見合わせてから返事を聞かずに部屋に入った。




