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今はまだ生かされているけど【アイリス視点】

 これから着替えようとした時にお母様が入ってきた。


 お母様は私を見るなり冷ややかな表情になる。何かあったのだろうかと不安になりソファーから立ち上がる。


「鍵、持っているんでしょう。早く渡しなさい」

「何の事でしょうか」

「まぁ、どこまでも親不孝者なのね。調べはついているのよ。家を出る前に鍵を持って行ったじゃない」

「鍵なんて知りません」

「宝石に隠されてたのよ。それをお前が持っていったじゃない」

「……あの宝石は、追放したとはいえ、ルイス家の娘。お無さげで何かあればこれを売りなさいと渡してきたのはお母様でしたよね」


 そう、私は家から追い出された日にお母様が渡してきた宝石だ。鍵があるのを知ったのは二年前。その鍵が何なのかは良く分からなかったけど……、ソフィア様に関わることなのは察しがついた。


 だって、お父様やお母様はやたらとソフィア様の情報を聞きたがるんですもの。


 最近になって分かったことがある。お父様は鍵を使って開けられる部屋にある道具でソフィア様の魔力を全て奪う気だ。


 そんなことは絶対にさせない。不幸中の幸いなことに……ソフィア様は結婚式には参加しないようだから、そこは安心出来る。


「えぇ、そうよ。でも状況が変わったの」

「すみませんが、売ってしまいま……っ!?」


 手元に無いし渡す気も無かったので、売ったって嘘をついたら、テーブルに置いてあった飲みかけの紅茶を顔面にかけられた。


 びっしょりと髪と顔、それからドレスにもかかる。


「気が利かないのね。ホント、能無しなんだから。売って良いとは確かに言ったけどね、普通は売らないものよ」


 なんて、滅茶苦茶な事を言うんだろう。


「その鍵が必要なんですか?」

「お前には関係ないわ。結婚式だけどね、言われた通りにやるのよ。良いわね」

「わかっています。お母様」


 結婚式に、何かをやるんだろうか??

 鍵を渡しといて良かった。


 お母様が部屋から出ていくと、背後にいた侍女がクスクスと笑いを堪えていた。


 ーー息が詰まる。


 親もそうだし、侍女からにも下に見られ横暴な態度を取られる。


 もう嫌だ。デメトリアス家の侍女として働いていた時の方が幸せだった。


 でも、戻る訳にはいかない。ソフィア様を守るために帰って来たんだから。


 多分、お母様は……鍵が中に入ってることを知らずに私に渡してきて、それが後々分かったから聞きに来たんだろうなと思う。


 きっとお父様に言われたんだろうな。


 ……でも変よ。あの鍵はまだ使われないはず。だってソフィア様は結婚式に来な……。


「まさか」


 えっ、嘘。来ているの??


 でも招待状には不参加だって聞いたわ。だったら目的はソフィア様じゃなくて……、クロエ様の方なんじゃ。


 私はなんて事を……。


 お父様の言う通りにしてしまった結果。それは自ら選んでしまった行動だけど、クロエ様はソフィア様の友人。


 クロエ様に何かあれば、きっとソフィア様は悲しむ。


 私のせいだ。


 クロエ様の危機を何とか知らせようとしたが、思い留まった。


 多分この部屋からは出られない。運良くクロエ様に伝えたとしてもお父様やお母様は使用人を使って私の動きを監視しているはずだろう。


 ーー今はまだ()()()()()いるけど、そのうち私と旦那になる方も、事故と見せかけて殺すつもりだろう。


 私の両親は()()()()()なのだから。


 目的のためなら手段を選ばない。邪魔者は容赦なく排除する。それが例え、人並み外れていようとも。


 そうして『子爵』に上り詰めたのだから。








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