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決めたことがあるんだ。

「えっと……、それはつまり??」


 クロエ様との連絡を待っていたら、お義父さまに呼ばれたので執務室に行ってみると衝撃的なことを言われてしまった。


「王太子殿下の侍女として結婚式に向かってほしいのだとさっき連絡があってな」


 えぇー……。


 嘘でしょ。正直、今は会いたくない。嫌いだからとかではなく、普通に恥ずかしいからだ。


 だって、あんな告白されて冷静になんていられない。思いだしただけでも顔が赤くなるのが自分でもわかる。


 赤くなってるのがバレないように両頬を手で隠す。


 なんでこうなるのかなぁ。アレン様、何かしたの? クロエ様と行くものだと思ってたから急な予定変更は心臓に悪い。


「無理です」と、言おうとしたらお義父さまが満面の笑みで私を見ていたので何も言えなくなってしまった。


「それにしても安心した。上手くやっているんだな。最初の印象がかなり悪かったから心配していたんだ」


 お義父さまは仕事が忙しいだろうに、わざわざ作業の手を止めて、机に寄りかかっている。


「えっ……あっ、はい。そうですね」

「王太子殿下もソフィアを気に入ってるみたいで。ただな、家の為にとかは思わなくて良いんだ。ソフィアの幸せを第一に考えなさい。自分の決断を後悔しない生き方をしてくれるだけで良いんだよ」

「お……義父さま……」

「まぁ、流石に心臓に悪いことはしないでほしいがな」

「すみません。その、私……」


 胸がチクリと痛み、お義父さまの顔を見られなくなり下を向いた。


「お義父さまとお義母さまに沢山迷惑かけてますよね。やることなすこと空回っててばっかりで……親不孝者で、本当に……申しわけ……」


 ちゃんと顔を見て謝ろうと上を向いたら、お義父さまに抱き締められた。


「ソフィアを引き取る時に、決めたことがあるんだ。必ず、幸せにしようと」

「どうして?」

「……これは同情かもしれないが、ソフィアの本当の両親が命をかけてソフィア、お前を生かしたんだ。だからこそ、両親の想いを無駄にしちゃいけない。必ず幸せにしたいと。亡くなった両親の為にも長生きさせて沢山の愛情を注いで、幸せだと思ってもらいたいと」


 視界がボヤけ、目頭が熱くなった。おずおずとお義父さまの背中に手を回した。


「……それがソフィアの親孝行だと思うぞ。亡くなった両親も喜ぶというものだ」

「あっ……っ!!」


 ツーっと、雫が頬を伝う。上手く言葉に出来ない。胸が苦しくて、だけど嬉しさもあって。


 お義父さまは優しく私の頭を撫でる。背中に回した手に力を込める。


 ーーありがとうございます。お義父さま、大好きです。


 そう言葉にしたいのに口から出るのは嗚咽だった。


 両親は私のせいでこの世を去ったというのに、幸せになっても良いのかすごく迷ってた。実際に両親を犠牲にした幸せなんて嫌だった。それならばいっその事……なんて一瞬でも考えたことがある。


 それなのに、「もういいんだ。幸せを願っても」と、そう言われてるみたいで心が痛い。苦しい。


 だけど、嬉しい。


 そんな矛盾な感情が溢れてしまう。


 一旦、落ち着こう。


 今は私の幸せじゃない。アイリスの幸せを優先したい。


 アレン様の告白されたからと言ってドキドキしてる暇なんてないんだ。


「お義父さま……私、我儘言っても良いですか」


 すすり泣きながらも必死に声を絞り出す。お義父さまは驚きながらも頷く。


「アイリスを私の専属侍女にしたいです。アイリスじゃないとダメなんです。だから……、アイリスを連れて帰って来ても良いですか?」


 私は顔を上げる。瞳から一粒の涙が零れ落ちる。お義父さまは私を抱き締める力を緩め、見下げ、目を細める。


 私の目頭に溜まっている涙をお義父さまは指で拭く。


「それは、王太子殿下の侍女として結婚式に向かうということで良いのかい?」

「はい」

「そうか……すまない。公爵令嬢として普通に出席させてあげたかったのだが」

「仕方ないです。こればかりは」


 目立つことは避けないといけないのだから。


 他にも理由はあるけど。





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― 新着の感想 ―
[良い点] またもや一気読み(笑) 気になって手が止まらないのよっ!(笑) ソフィアちゃんほんと人たらしだし。自覚ないし鈍いし。ドジだしそこもまた可愛いんだけど! アイリス取り戻してー! ふぁい…
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