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アイリス以上にしっかりしていて安心する

「まぁ、やはり私の見る目に狂いはありませんでしたわ」

「お見事です! でしたら、こちらもお似合いになるかと」

「そうですわね。絶対に似合いますわ。ソフィア様!! 着てみてください」

「え……まだやるんですか?」


 庭に備え付きの噴水に落ちてしまった私は全身ずぶ濡れになり、風邪引くといけないからたまたま通りかかった侍女が私の姿を見るなり大慌てでドレスルームに案内しようとする。


 私としては髪の毛と濡れたドレスをどうにかしたいので乾かしたい気持ちが大きい。


 髪を乾かしたいがために私の寝室に向かうように言い、着替えのドレスは適当に持ってきてほしいと侍女に頼んだ。


 だけど、頼んだ私が馬鹿だった。


 なんとドレスルームから大量のドレスを持ってきたのだ。


 数え切れないほどの量で、持ってきた時なんて前は見えない所か、天井につくんじゃないかってぐらいの山盛りにしていた。


 見た瞬間、驚きすぎて心臓が止まるかと思った。しかも丁度髪を乾かしてる最中だったため、ドライヤー(魔導具)の風の強さを間違えるところだった。


 大量のドレスを見たイリア様は目を輝かせていた。


 そして、着せ替え人形のように色んなドレスを着せられ、もう二時間は立っている。


 もちろん男性陣は寝室の外に行ってもらっている。


 こういうの、いつ体験しても慣れるものじゃない。多分、ドレスが決まったら今度は髪のセットに時間かけそう……。


 深くため息をしていると扉が開いた。


「そこまでです!」

「リ、リリー~」


 そこに立っていたのはリリーだった。背後に光が差していてとても眩しく見える。


 今、この瞬間、私には神様に見える。縋るように猫なで声で名前を呼んでしまった。


 リリーは部屋を見渡して額に手を当ててボソッと呟いた。


「はぁ……アイリスさんの苦労が身に染みます。あとは私におまかせください」


 姿勢を正して凛とした口調で言い、ドレスを持っている侍女を見ている。


 その侍女はリリーの意図を理解したかのように慌ててイリア様に向いて、「お楽しみは後にとっておきましょう。リリーなら素晴らしいドレスを選ぶはず。サロンに向かいましょう」と、促した。


 イリア様はなにか物申したい雰囲気だったけど、渋々サロンに向かうことにしたようだった。


 二人が出ていき、扉が閉ざされて急に静かになった部屋でリリーは私を真っ直ぐ見た。


 そのあまりにも真剣な眼差しにビクッとなり、身構えてしまった。


 リリーは私に近付くと優しく笑いかけた。


「……来る途中で他の侍女から詳細を聞きました。さぁ、急いでドレスに着替えましょう。乾いたとはいえ、風邪を引いてしまいますからね」

「リリー~……」


 リリーはわかってる。わかってるからこそ、フォローも出来るし、何よりもアイリスが選んだ人だ。


 アイリス以上にしっかりしていて、安心する。


 リリーを選んでくれてありがとう!!


 と、心の中で祈るように手を胸の前で握り、涙を流している自分の姿を想像しながらも感謝する。









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