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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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「私が弓婆だ」


 大きな拍手が巻き起こった。エルフの魔力低下によって弓への回帰が始まった。その幕開けとして弓爺や弓婆が各地に出向いて弓の講習を開く。


 武器の名を冠した一流の武芸者から手ほどきを受けられるので弓への熱も高まりを見せている。弓婆が来ると分かって急いでナツメにも弓を教えた。まだまだ未熟だが最低限は仕込んだつもりだ。ナツメの飲み込みが良くて大いに助かった。


「エルフなら基本的な弓の扱い方は知っているはずだ。私の講習を受けたからといって弓は上手くならない。何故なら弓術は日頃の鍛錬が重要であって、一夕一朝でどうにかなるものではないからだ。だから私の講習では君達の長所を伸ばし、短所を修正する事に時間を割きたいと考えている。弓術を伸ばすのは各々の努力のみだ。この機会を上手く利用してくれ」


 再び大きな拍手が巻き起こった。こういう催し物にはモブエルフが来て場を盛り上げるのを手伝ってくれるのだが、出島村にはモブエルフは居ない。物好きのモブエルフから申し込みは来ているのだがまだ出来たばかりの村なのでマサモリは断っている。


「弓術を伸ばすにはとにかく訓練のみだ。寝ても覚めて弓を打ちまくる。生物をしっかり観察する。動きが早い敵は予測して打つ。反応が良い敵には矢を回避させてから少し誘導させて当てる。長い年月と知識と経験を積まないといけない。矢が外れて樹海の樹に当たるのは絶対に避けなければならないからね」


「弓の長所は二つある。遠距離攻撃である事と無属性の魔法弾より魔力の消耗が少ない事だ。遠距離といっても魔法に比べると射程は短い。命中率を考えると中距離武器になる。一流の弓使いなら魔法よりも遠くから対象を射れるがそれらは例外としておく。普通の魔法を打つ場合、魔法を生み出すのに魔力を使い、打ち出す時にも魔力が必要。魔法を投げつける方法もあるが動きを読まれやすいし、動作が大きくなるので魔力を使って打ち出した方が良い。投げつける場合は石でも魔法石でも投げつければ良い。それなら魔力は強化魔法だけで済む」


「弓を使う場合、まず魔力を使わずに矢を放つ事が出来る。これは投石よりも動きがコンパクトで連射性も高い。次に矢じりに魔法を付与する場合、普通に魔法を放つのに比べて消費する魔力は矢じりに魔法を付与する分だけだ」


「矢に付与する魔法は用途によって様々だ。矢じりを鋭くする。当たった時に爆発させる。推進力を与える。敵の弱点が分かっているなら属性を付与する。誘導性を付与する。毒を塗る。とにかく汎用性が高い。魔力が切れても使える。樹海だと魔力が切れたら戦力にならなんがな。超大陸に居た頃は魔力が切れても戦い続けられた。遠距離攻撃だから敵の魔法攻撃の相殺に魔力を使って魔法力を籠めない矢を撃つだけでも効果があった。正面からのごり押しには弱いが絡め手は得意。エルフの総魔力が下がった現在では弓が再び脚光を浴びている」


「最終的には弓を強化し、自分の体も強化する。魔力の消耗は激しくなるが弓という道具を経由する事で魔法を普通に打つよりも効率的に威力の高い攻撃が可能だ。弓を強化する程、弦が硬くなって威力が増す。体を強化して強化された弦を引く。少ない魔力で効率的に破壊力を生み出せる」


「弓は最強の武器だ。特に樹海では呪いや致死毒をまき散らす魔物が出現する。今までは魔法で近付かずに倒していたが今後は今までと同じ方法は取れない。どんな相手にでも攻撃される前に倒すのが理想だ」


「最近、超大陸では銃が流行っているようだ。銃は強力な武器だ。しかし火薬で発射しているので弾に出来る付与が硬化等になり、付与できる範囲が狭い。弾を使い分ける事で属性を変えられるが非常に高価だ。弾頭が小さいので属性を籠めても属性効果は低くなる」


「魔法の掛かっていない鉄の銃弾に魔法で属性を付与した方が有効的だ。しかし自分で銃弾一発一発に魔法を籠める必要がある。先に付与しておいても強く魔力を籠めないとすぐに魔力が拡散してしまう。下手すると暴発する恐れもある。魔法を籠める場合は一番が硬化、次点で推進力。火薬で発射しているので誰が使っても一定以上の威力を出せる。弱い人が使うには効果的だが強い人が使っても弱い人とあまり差がない。弓は強くなればなるほど強化魔法を使って威力と速度が増す。人によって同じ弓矢を使っていても威力は雲泥の差が出る」


「銃身から弾を打ち出す都合上、爆発力を上げにくい。銃弾に爆発魔法をかけて攻撃力をあげたとする。しかし銃身から放たれる衝撃で爆発魔法が発動してしまう。もし爆発力を高めるなら暴発防止の為に爆発魔法の上から魔力で保護しなければならない。単純な属性魔法なら扱いはそれより簡単になるが銃身に負担がかかる。樹海の敵は再生力が高く、巨大な場合が多い。銃だと点でしか効果がない。弓だと魔法を籠めやすいので範囲攻撃がしやすい。超大陸で流行っている事から分かるように対人用の域を出ない。エルフだったら頭さえ撃ち抜かれなければ回復魔法でどうにかできる」


「火薬を使わずに魔力で弾を発射する場合に限り、今後の利用価値がある。コンパクトで持ち運びが容易い。だが弓に比べると威力が低く、真っすぐしか飛ばない。銃弾に魔法を付与するのに慣れが必要。だが銃術や銃魔法が生み出されればもっと使いやすくなるだろう。銃弾に籠める魔法の配分が研究されるまでは危険だ」


「大砲なら弓の方が圧倒的に便利だ。重いし、嵩張るし、砲弾は高価だ。超大陸では魔石砲弾が使われている。大砲サイズなら魔石を使っても暴発を防げるようだ。しかし実際はかなり不安定らしい。魔石銃弾は今の所は開発中。魔石の性質は様々だ。衝撃に強いもの、弱いもの、加工しやすいもの、加工しにくいもの、魔石は品質が一定ではない。魔石銃弾の作成は困難を極めているようだ」


「だが、ドワーフなら時間をかければ完成させるだろう。本来ならドワーフは絶滅させた方がいいのだが兵器に使われている技術を平和利用する事も出来る。一概に危険だからと切り捨てるのは不味い。超大陸にいった忍者エルフからの情報によると、現在魔石弾の小型化が進行しているそうだ」


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