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『よし、ここで寄生生物に対する抗体が得られたのは大きい。本来ならマサモリだけは帰した方が良いんだが、どうだ?』
『まだ帰らないよ』
『だろうな、もう一回だ』
ヒデヤスはもう一回紙飛行機を作った。それは現在別行動の超大陸にいるエルフ用だ。
『積極的な戦闘は控えるように言っているが別行動をしているエルフが寄生されると不味い。人数が少なくて逆に良かったかもしれん。受け取り次第集合する』
『寄生された人はどれくらいまで操作されているんだろう。人型の強化魔法と体捌きは熟練者のものだった』
『記憶まで読めるとなると不味いな』
『感情はあったみたいだけどどうなんだろうなあ。寄生生物の割合が高いならまだ大丈夫だろうけど、元の生物が混ざるようなら危険すぎるね。ただ、戦った感じとしては寄生生物の割合が多かった気がする。積極的に外殻を変形させて攻撃してきたからね。人の思考を取り込めていたなら無駄な攻撃は控えて機を窺っていたと思う。人の思考を取り込めた場合、エルフが寄生されたら終わる』
『嫌々だったが、超大陸に来たのは間違いではなかったな……』
最後にヒデヤスは円錐形の結界を作った。そしてマサモリに刺す。円錐形状の結界にマサモリの血が溜まっていく。いっぱいになると結界を円柱形状にした。
そしてヒデヤスは手元に結界を呼び寄せて結界内のマサモリの血液に魔法をかけた。血液を調整しないでそのまま他人の血液に混ぜるのは危険なのでこういう場合は必ず血液の調整が必要だ。
先程の紙飛行機には血液を調整する魔法がかけられていて皆の手元に着くころには調整が終わる。ヒデヤスは調整を終えると円柱をマサモリを抜いた全員分に行き渡るように分割した。
そして再び円錐形状にすると自分の腕に刺した。マサモリの調整された血液がヒデヤスに入っていく。ヒデヤスは慎重にそれを見守り、血液が入り切ると腕に魔法を唱えた。
『よし、大丈夫のようだ。本来なら馴染むまで安静にしておきたい所だが大丈夫だろう』
『次は私ー』
シラギクがヒデヤスに向かって腕を出した。
「えっ、なんですか。どういう儀式なんですか? もももしかして、あたしにもそれを刺すんですか? うううう、ひいい」
「そうだよ。これをすると病気にかかりにくくなるんだ」
「初めて聞きましたです。あたしは元気なので大丈夫です。生まれてから病気になった事がないです。あるけどないです。ほーら、元気元気!」
少女が一生懸命体を動かして元気な事をアピールする。しかし決定事項なので誰も何とも言わない。次第に少女の顔から血が引いて、冷や汗が滲み出てきた。
「だ、大丈夫です! お話しを聞いてくれです! 元気ですううう」
『ありがとう』
シラギクへの処置が終わった。マサモリは少女を包む結界ごとヒデヤスの前に移動させた。少女は地面にへばり付いて抵抗するが結界が少女を易々と運んだ。
「やめろです! ぎゃあああああああ!」
この世の終わりと言わんばかりの顔をしていた少女が突然叫ぶのを止めた。
「痛くないです……」
ヒデヤスが手早く処置を終えると少女は呆然とした顔でそう言った。
「最初から全然怖くなんてなかったです」
マサモリ達とは違って少女の栄養状態は良くなかった。外に出た事も無かったと言っていたのですぐ病気にかかる可能性がある。しばらくは少女の体調に気にしなくてはならないなとマサモリは思った。
ヒデヤスは最初に手に入れた星外生物の殻を回収しに行った。マサモリはヒデヤスから教わった通りに氷漬けになっている軍師に魔力を送った。
普通、魔力を渡す時には純粋な魔力をそのまま渡す。しかし寄生生物と戦っている最中のエルフには下手に近づいたり魔力を与えたりすると反射的に攻撃される。
それを防ぐ為にエルフに合わせた属性の魔力を出来るだけ渡すエルフの魔力に似せる。丁度軍師エルフは氷漬けになっているので水属性のマサモリにはピッタリだった。
これが水属性以外ならヒデヤスでも魔力を渡すのは難しい。マサモリは自分の魔力を出来るだけ相手に合わせて、少し魔力を水に傾けた。そして少しずつ凍ったエルフに分け与えていく。
始めは水と油の様に混じりあわなかった魔力が徐々に混ざり合うようになった。これで成功だ。シラギクには他のエルフが寄生された場合に備えて待機して貰っている。
とにかくヒデヤスが寄生生物を排除出来て良かった。もし敵になっていたらマサモリとシラギクが一緒に戦っても簡単に負けていただろう。その場合は全力逃走だった。
ヒデヤスが星外生物の殻を回収して合流した。最初の計画ではこれで帰還なのだが、星外生物が寄生できるとなると話しは変わってくる。一番厄介なのはヒデヤスが実は寄生されているのにそれを周りに悟らせない場合だ。
その場合は、ヒデヤスを封印するしか手はない。しかしここまでヒデヤスを再現出来ているならそう簡単には封印出来ないだろう。最悪のケースを考えるとマサモリは気が抜けなかった。
『軍師は復帰しなかったね』
『魔力を補給しているからその内、目を覚ますだろう。昨日は徹夜だったんだろ? マサモリは寝ていいぞ』
『私は見張りするよー』
『シラギクは明日にマサモリとペアで頼む』
『おっけー』
『了解』
マサモリは木に背中を付けて眠りについた。しかし神経は研ぎ澄ましたままで何があってもすぐに対応できるだろう。ヒデヤスはそんな息子を見て頬が緩んだ。
風属性のエルフと軍師エルフが復帰したのは朝方だった。マサモリは急な魔力の動きに目を覚ました。魔力の大きな動きが収まると二人のエルフが寄生生物を排除し終えた。
『目覚めてさっそくで悪いが直感はどうだ?』
ヒデヤスが軍師エルフに尋ねた。
『問題となる危険性の多くが排除されたようだ。以前の様な重苦しい圧力は感じない。しかし星外生物を排除しきった訳ではないようだ。まだ微かに星外生物の存在を感じる』
『わかった』
マサモリは軍師の意見にほっとした。ヒデヤスが寄生されていたら一悶着ある場面だったが杞憂だったようだ。
『別行動をしていた者が集合したら一旦帰還する。そして精密検査を受けよう。その後、体勢を立て直して再び超大陸へ向かう』
数日後には超大陸の各地に散らばっていたエルフ達が集合した。もちろんその中にはボタンも居る。それに超大陸に来た時には居なかった忍者エルフ達も集合して、来た時よりも大人数が多くなった。
忍者エルフの多くは少女を出島村に連れて行く事に反対だった。現地で活動しているエルフにとってはやはりそうなのか、マサモリは超大陸の現状を思い知った気がした。
寄生生物に寄生されている可能性があるので直接エルフの森ではなく、出島村へ移動する事となった。どちらにせよ、マサモリ達は少女を連れているので出島村へ直行の予定だった。
しかし今回の様にエルフの森に直接行けない場合にはとても役立つ。そういう意味では出島村の立地は色々と都合が良かった。夜になるのを待って、一行は出島村へ向かった。




