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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 最初は手間取っていたが結界を張っていく内に最適化が進んできて今では随分と楽になってきた。そうなると面白くなってくるものでマサモリは早く出来過ぎないように丁寧さに重きを置くことにした。


 目の前の東京村タワーには外壁が張られて内部には大量の魔力を放つ品々が詰まっている。最後に塗装をして今は乾かしている段階だ。結界から離れた場所では色々な物資が搬入され、それらを保管するための倉も数多く建っている。


「よしっ。完成だ」

「良くやった! 父さんも母さんも宇宙へ上がる。すまないがここはまかせたぞ、マサモリ」

「まかせてよっ」


 マサモリは近くに運んでもらった重量、体積効率の悪い石に腰掛けた。魔力を補充しながら大気圏輸送結界を維持する。戦いが終わるまではずっとこうしていなければならない。




「おつかれさま」

「ありがとう。群馬村に戻らなくて大丈夫?」


「うちは兄弟が多いから大丈夫。それにここに残った方が色んな建物が見れてラッキーだった」

「そっか、シラギクが居てくれて助かるよ」

「ふむふむ。素直でよろしい」


『流星を確認。総員迎撃態勢』


 再び流星が炎を纏ってジェルセに突入してきた。東京村の範囲には今回一つの流星が予測された。既に迎撃地点に到着していたヒデヤスはマサモリと同じように結界を準備して待ち構えている。


 流星が轟音と大気を震わす衝撃と共に徐々に大きく見え始めた。音と振動で流星が近付いて来るのがわかる。もう少し待てば地面に到達するだろうと思った時、流星は突然弾けた。


「そんな!」

「学習しているのか」

「対処が早すぎる!」


 樹海面に到達する遥か上空で流星は砕けて花が咲くように外に向かって大きく咲き広がっている。マサモリは血の気が引いた。


 砕けた流星は大きく外に広がるかと思いきやそれ以上の広がりは見せずに不自然に真っすぐ落下を始めた。すると殻と大気圏が織りなす光の筋が徐々に大きくなっていった。


 ヒデヤスは弾けた流星を目にした瞬間、高く高く飛んだ。そして重力魔法で広がりつつある流星に向かってかけた。


 ヒデヤスの魔法で星外生物は急激に加速して空気との摩擦が激しさを増した。それを知らせるように光の量が増えていく。小さく分かれた事で殻が防ぎきれる熱量が減少した。そのうえ殻にかかる熱量は増える一方だ。


 小さな殻では星外生物の軟体部分を守り切るには足りなかった。殻だけを残して軟体部分は燃え尽きた。舵を失った殻はそのままヒデヤスの手元へ誘導されていった。




 マサモリはこの光景を見て、自分だったら冷静に対処できなかっただろうと思った。背中に汗が滲んだ。まさか一回で方針を変えてくるとは思わなかった。


 全く油断できない知性を秘めている。知性があるという事は、流星を防いだ場所には星外生物にとっての敵が居るという事を悟られたという事だ。次の流星はエルフの森へ集中してくる可能性も出てきた。


 完全に無作為ならエルフの森だけは守れる。しかしエルフの森が集中して狙われて物量でこられると対処しきれない可能性がある。エルフにとっても宇宙は死の世界だがこのまま守るよりは使える魔法の制限がない分、宇宙で戦った方がまだましなのかもしれない。


 敵が散らばったのは悪い事ばかりではない。魔物や樹海の樹が戦うなら敵は分散した方が戦いやすい。前回の様な一点集中型だと数で押されてしまうがバラけてくれるならエルフ以外は戦いやすいだろう。


 敵の目的次第だ。敵が数を地表に到達させるのが目的なのか、危険分子を排除するのが目的なのか。今のまま攻め続けられたら主導権を握られっぱなしになってしまう。やはり宇宙に出るのは正解なのかもしれない。


『傭兵は樹海に落ちた星外生物の排除を優先しろ。長老族は宇宙へ上がれ!』


「よしっ、上がるぞ! マサモリ! 後は頼んだ」

「マサモリー。ちょっと出かけてくるわねー。ちゃんとご飯を食べるのよー」

「マサモリ。わしが敵を皆殺しにしてやるから待っておれ!」

「マサモリ、長老族としての勤めを果たすのですよ」


「はい!」


 補修された東京村タワー全体に強化魔法がかかっていく。タワー全体が強化されたのを見計らってマサモリはタワーを囲うように円柱形の結界を張った。


 そしてタワーを大気圏輸送結界に沿って上に押し上げていく。それはまるで東京村タワーという弾丸を宇宙に向かって打ち出すかのようだ。


 結界の下部に力を加え続けると徐々に東京村タワーが上空へと押し出されていく。それはかなりゆっくりとした歩みであった。


しかし東京村タワーがエルフ達の目から小さく見えるようになった時、突然急激に加速して尾を引きながら打ち上がった。地面から上がった流星は光の柱のように一直線に宇宙へと向かって行った。


 彼らがその余韻に浸る前に西や北北東からも同じような光の柱が建った。真下から見るよりも横から見た方が光の柱をより詳細に観察できた。子供も大人も感嘆の声をあげる。


「次の発射準備にかかってください。十分後に発射します」


 光の柱に見とれていた人々が一斉に動き出した。一般のエルフは光の柱に向かってお祈りをしたり何かを願ったりしていた。子供達は状況が分かっておらず、目の前の美しい光景にただはしゃいでいる。


 マサモリは結界の状況を集中して観察した。結界の状態は比較的良かった。打ち上げる時に負担のかかる樹海面付近の結界には多少の歪みは生じていたがこれらは問題なく修正できる。マサモリはほっとして結界の修正作業に集中した。


 大気圏輸送結界の上の方からか細い一筋の光が舞い降りた。射出成功、東京村タワーに問題なしと書かれた式神が降りてきたのだ。読み上げると歓声が上がった。マサモリは発射さえ成功すれば後は大丈夫だと思っていたがこの知らせに口元が緩んだ。


 一回目さえ乗り越えてしまえば後は安定して打ち上げられた。小さい修正箇所はあるが大まかな流れは順調そのものだった。


「ふー」

「はい、おにぎりとお茶」

「シラギク、ありがとう」


 全ての建造物を宇宙へ打ち上げ終わった。マサモリは普段感じた事が無いような疲労感に無意識に溜息が零れ出た。喉がカラカラになり手すらもしわしわになったような感じがした。そこへシラギクがお盆におにぎりとお茶を持ってきてくれた。


 マサモリはぬるめのお茶を一気に飲み干した。シラギクが空になった湯飲みにお茶を注いでくれる。今度はゆっくりと匂いを楽しみながらお茶を啜った。すると急に腹の虫が目覚めてなり始めた。マサモリがおにぎりに手を伸ばすと海苔のパリッとした感触がした。


 お茶といい、おにぎりといい、ありがたいと思いながらおにぎりにかぶりついた。小気味の良い海苔の感触と表面の強めの塩がなんとも言えない。おにぎりの具は昆布で一口で昆布を食べ尽くしたい欲求を抑えながらゆっくりと頬張った。


 おにぎりの良さは食べやすいという点もあるが目で周りの景色を楽しみながら食事も楽しめる所にある。


 マサモリの周りでは一仕事を終えた職人達がマサモリと同じようにおにぎりを片手に笑顔でいる。心地よい疲労感と大勢の人と一緒に何かを成し遂げたという達成感が程良くマサモリを包んだ。周りの人も同様だろう。


 戦いは宇宙へと舞台を移した。取りこぼしがあるかもしれないがそこまで大事にはならないだろう。もし大事になるようであれば、それはこの星の終焉を意味する。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 38話と39話が同じ話みたいです
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