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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
205/211

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 マサモリとブレペイスが円柱形状の結界の中で戦っていると周囲に伏していた男達が悲鳴をあげて立ち上がった。その場から逃れようと走るがすぐに躓いて倒れ込んだ。しかし強化魔法をかけると立ち上がってマサモリの張った結界に近づいた。そして結界の基点となっている結界石を奪おうとした。しかし結界石を覆う結界は強固で男達が全力で攻撃しても結界には歯が立たない。


 男達が突然苦しみだしたのはマサモリがラギドレットに張った結界の設定をボタンが変更したからだった。変更によって星外生物にのみ魔力吸収と重力がかけられた。エルフの森では日夜星外生物に対する戦い方が研究されている。


 未だに探知方法は確立されていないが星外生物がどういう生き物だかは周知されている。星外生物をある程度理解していないといくら結界内に居ても指定する事は出来ない。曖昧な指定では対象にかかる魔法の効果は激減してしまう。マサモリやボタンは何度も星外生物と戦っているので結界内の星外生物をしっかりと指定する事が出来る。



 時を同じくしてラギドレット中で悲鳴があがった。その数は多く、そして誰もが魔力吸収後も動き回っていた強者だった。ボタン達忍者エルフは星外生物を察知出来なかった事に今更ながら顔を真っ青にした。


 ボタンがマサモリから星外生物の出現を知らされるや否や結界石へと直行し、結界の設定を変更したのは正解だったようだ。予想以上の星外生物の浸透数にラギドレットの征服が超大陸西部地域の人にとって最善の選択だったと確信できる。


 星外生物に寄生された人々はラギドレットの外に出ようと結界に殺到した。しかし結界は強固で地上にも地下にも結界が張り巡らされている。逃走が困難だと悟ると周囲に倒れている人間に向かって口から星外生物の軟体部分を吐き出した。


 軟体部分は倒れている人を飲み込み、吸収する。忍者エルフ達が星外生物を排除しようと動いた。しかし忍者エルフの数に比べて寄生された人々の数は多く、ラギドレットは大パニックに陥った。



 星外生物に寄生された者達はマサモリとブレペイスが戦っている結界を破壊しようと集まっている。重力魔法がかかり、魔力吸収が行われているのに彼らは動いている。普通の人と違って彼らには魔力吸収が効きにくいようだ。そのせいか魔力が吸収されながらも強化魔法を身に纏っている。


 マサモリはブレペイスを逃さないように展開した結界を解除するか迷っていた。星外生物を逃さない為に張った結界だがラギドレット中に星外生物が居ると分かるとブレペイス一人を閉じ込めている場合ではない。結界石に赴いて、マサモリがラギドレットを覆う結界から星外生物が逃れないように制御するした方が良いだろう。今はボタンがマサモリの代わりに結界を調整しているのだがマサモリの方が確実だ。


 しかしその考えは一旦置いておくことにした。何故ならマサモリの周辺にいる寄生された者達は何故かマサモリとブレペイスを閉じ込めている結界を壊そうとしているからだ。星外生物の生命力ならどうにかして結界から外に抜け出せれば再起の可能性はある。だからブレペイスに執着する理由は薄い。


 となると何か理由があるはずだ。ブレペイスが殻を大量に保有していてそれが奪われたくない。ブレペイスが周りの寄生された者を操っている。操られてはいないがブレペイスを救助したい。現在思いつくのはその程度だ。理由は不明だが現在の状況は星外生物にとって喜ばしくない状態になっているのだろう。以上の事から結界を破壊しようとするなら破壊されないように動く事にした。



『周囲の星外生物は俺の結界に入れて。残りは片っ端から排除』


 マサモリとブレペイスを覆う結界を破壊しようと集まっていた者達を観察していた忍者エルフは一斉に動いて彼らを結界内に蹴り入れた。結界内に放り込まれた彼らはまず上手く着地出来た者と出来なかった者に分かれた。


 足や手に殻を纏わせてマグマに降りたった者は無事だった。しかし殻を纏わせられなかった者はマグマに降り立つと一瞬で燃えて溶けた。残ったのは炭と少量の殻だ。それ以外にも飛沫したマグマを浴びた者も居て、結界内に投げ込まれた者の大半が炭となった。



 殻を纏ったブレペイスを倒すには武器が必要だ。マサモリは敵の数が増えて防戦一方になっている。ブレペイスは他の寄生された人の事などお構いなしに巨大な戦斧を振り回してマサモリを襲う。生き残った者は自分の命を惜しまずにマサモリに飛び掛かってくる。ブレペイス以外は殻を纏っていても拳の攻撃で倒せるがその隙にブレペイスの攻撃を受けてしまっては元も子もない。


『武器行きます』


 周囲にいた星外生物に寄生された人々を結界に放り込むと忍者エルフはマサモリに向かって剣を投げた。マサモリは投げ入れらた剣を掴むと掴みかかってくる者達に一線した。周囲の殻を纏った者達は綺麗に両断された。しかし攻撃の隙をついてブレペイスの戦斧がマサモリを捕らえる。


 マサモリは剣で戦斧をしっかりと受け止めた。すると手に強い衝撃と共にぐにゃりとした柔らかい嫌な感覚が伝わって来た。マサモリは焦って強化魔法を強めたが戦斧を受けた剣は曲がり、強化魔法が遅かったら戦斧はマサモリまで到達していた。


 マサモリがブレペイスから距離を取る前に新しい剣が忍者エルフによって結界内に投げられた。マサモリは剣の方向へ向かってブレペイスの攻撃を回避する。曲がった剣は近くに居た敵に向かって投げた。


 ブレペイスの攻撃をまともに受けたのは初めてだったがこれもまた予想を超えていた。いくら超大陸の武器でもしっかり強化魔法をかければそう簡単に破壊されない。しかし一回受けただけで剣が折れそうになってしまった。手加減して勝てる相手ではないとマサモリは確信した。



 マサモリを囲う結界が突然闇に包まれた。マサモリは結界内外への光の伝達を遮断した。戦っている姿を上空で飛んでいる使い魔に見られないようにする為だ。結界内は突然暗くなって足元のマグマの光だけが光源となった。しかしブレペイス達は動揺せずにマサモリを確実に追い詰めてくる。


 マサモリは結界内にかかっている重力を強めた。それにもブレペイス達は対応した。強化魔法を強めて武器の使い方も縦方向の攻撃のみに絞るようになった。高重力下では相当な力の差がない限りは攻撃方法を縦攻撃に絞った方が効果的だ。


 横攻撃は重力を多く受けるし、突く攻撃もブレる。突きは重力の影響が最も小さいが縦攻撃ならかかる重力も攻撃に乗せられる。高重力下での戦い方をブレペイス達は理解しているようだ。


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