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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 ブレペイスが斧を振り下ろした。マサモリは避けたが斧の風圧が背後の家を切り裂き、地面を大きく抉った。以前に戦った人に寄生するタイプの星外生物とは別種の様な強さだ。斧の技は冴え渡り、強化魔法も淀みが無い。強者が魔物化して強い特性を引いた時よりも強靭だ。


 そして一番厄介なのはブレペイスの瞳の奥に知性の光が輝いている点だ。マサモリは斧を避けながらブレペイスに掌底を放った。しかし有効打にはならない。攻撃は成功するのだがどれもしっかりと受身がとられ衝撃は逃された。


 ブレペイスは斧を大きく真横に薙いだ。マサモリは反射的に倒れている住民を守る為に結界を張った。するとブレペイスはにやりと笑みを浮かべた。マサモリは結界で守ってしまった後にラギドレットの住民だから守らなくても良かったと思い直した。しかしブレペイスはそうは思わなかったようだ。わざと周りを巻き込むような派手な攻撃を繰り返した。


 マサモリはわざと戦い辛そうに演じた。ブレペイスは気分を良くしたのか周囲の町と人を破壊しながら斧を振り回した。



 マサモリがブレペイスの攻撃に集中していると足元の石畳の隙間から星外生物の殻でできた棘が剣山の様に生えた。マサモリは後ろに飛んで騎兵の持つランスの様になった棘を回避する。棘は周囲に展開して足の踏み場もない。マサモリが近付くと棘の先端が弾かれるように飛来した。ゴーレムとの戦いと違って棘の攻撃は精密で鋭い。雑に広範囲を狙っているのではなく、マサモリを狙いすましている。


 マサモリは自分を守るように結界を展開した。先端を失った棘は動きを止めたのでマサモリはそれを足場にした。そして次に剣山の広がりを抑えるようにマサモリは周囲を大きく取り込んだ円柱形状の結界を張った。棘は周囲に広がっていくが結界に触れると拡大が止まった。


 マサモリはブレペイスの攻撃を避けながら結界石をいくつも設置していた。結界を破ろうと棘が大量に生えて結界にぶつかる。しかし結界石をふんだんに使った結界には傷を付けられなかった。棘は次に周囲の人々の死体へと対象を変えた。棘から根毛が生えるように柔らかい軟体部分が生え、人の体を貪った。


 マサモリはそれを見て魔力を籠めた魔石を大量に投げた。魔石が棘に当たると大爆発を起こした。結界で衝撃を逃さないようにしていた為、結界の中は爆発の衝撃と爆音でかき回された。爆発が収まる前にマサモリに向かってブレペイスが踊りかかって来た。マサモリは視界が全く見えない中、結界を足場にして攻撃を避けた。


 煙が収まってくると石畳の地面は破壊され、地面が数メートル抉れた。しかし破壊は結界の中のみに限定されていて抉れた地面の底には結界の境界面が見える。結界の底には殻の残骸と粉々になった石等が残っている。マサモリは念には念を入れて、自分の周囲を燃やしながら残骸に火魔法を当てた。


 結界内の空気が一瞬で消費されて足元はマグマで満たされた。マグマには燃え尽きずに残った殻が浮かんでいる。マサモリは星外生物を逃さない為に広範囲を結界で囲ったのだ。例え、ブレペイスを倒したとしても先程の攻撃の様に地面に逃げられたら星外生物は生き残ってしまう。


 以前には空気中に拡散された星外生物に寄生された事もあった。なので魔石爆弾と火魔法で空気中に散布された星外生物を排除した。星外生物との戦いは倒す事よりも逃さない事の方が重要だ。だから外に逃れられないように結界石を配置して強固な結界を張った。しかし強力な火魔法を使った事でマサモリは少し後悔していた。


 空気中に拡散され、地面に潜り込んだ星外生物を狩るには必要な行為だったが思った以上に魔力を消費した。魔石爆弾だけでは威力に不安があったし、空気中の星外生物を排除出来るか分からなかったのだ。その結果が足元のマグマである。


 足元にあるマグマの熱を防ぐ為に魔力がより必要になってしまった。殻で守られているブレペイスの方が有利なくらいだ。冷やすのも可能だが余計に魔力が必要になる。ブレペイスはマグマの中も変わらぬ足取りにマサモリを襲った。


 マサモリは強化魔法に魔力を注いでブレペイスの懐に潜り込んだ。ブレペイスの斧には殻が纏わり付いていてマサモリが奪っても使うには危険すぎる。斧の攻撃を潜り抜けてもブレペイスに纏わり付く殻が独自に攻撃してくるので攻撃のチャンスは少ない。


 マサモリがブレペイスの斧を回避して再び懐に踏み込もうとすると顔に不可視の圧力がかかった。マサモリはその力に逆らわずに倒れ込むように力を受け流した。体勢を崩したマサモリにブレペイスの追撃が行われる。マサモリは仰向けになりながらも足元の結界を蹴って難を逃れた。


 先程の攻撃は不可視に思えたが思い返してみると一瞬だけ予兆があった。空気中に拡散した星外生物が一瞬で集まって自爆したのだ。攻撃としては大したことは無いが崩しに使うなら恐るべき攻撃だ。今まで使って来なかった所から推測してあまり使いたくない手だったのだろう。


 魔法的な攻撃なら魔力の動きから攻撃が読み取れる。しかし先程の攻撃はほとんど魔力がなかったので察知出来なかった。しかし思い返してみると周囲の魔力濃度は高かった。人に寄生して魔力が使えるようになった事で使用できる程度まで威力が上がったのかもしれない。


 ブレペイスの攻撃は大振りだが破壊力は抜群だ。油断していて一発でも攻撃を受けたら致命傷になりえる。マサモリは先程の攻撃を妨害する為と攻撃力不足を補う為にマサモリは重力魔法を結界内に発動させた。心地よい重圧がマサモリに降り注ぐ。


 突然の重力で体勢を崩したブレペイスに向かってマサモリが正拳突きを放った。殻を破り、マサモリの拳がブレペイスの腹に深く突き刺さった。マサモリは拳が軟体部に届くと同時に内部を凍らせた。そのまま内部を全て凍り付かせようとしたマサモリであったが凍結の進行が魔力によって阻まれた。


 すぐさま、腕を引き戻して反対の拳で凍結した部分を破壊する。ブレペイスの腹に二十センチを超える大穴が空いた。しかしブレペイスは健在でマサモリへ斧を振り下ろした。斧の攻撃を回避したマサモリであったが斧を回避するので精一杯でその衝撃からは逃れられなかった。


 斧が結界の底に当たった衝撃波がマサモリを吹き飛ばした。殻の混じったマグマを浴びたマサモリはすぐに体についたマグマを払ったがブレペイスは容赦なくマサモリを追撃した。マサモリはブレペイスの攻撃を回避した。しかしサーモに変身した事で体が大きくなっていたマサモリは回避したつもりが肩に攻撃を受けた。


 激痛がマサモリを襲った。マサモリの片腕が切り落とされてマグマに落ちる。すると腕はすぐに燃えて灰になった。マサモリは超大陸で戦うには十分すぎる硬度の結界を張っていたのでそれ簡単に破られて驚いた。余裕を持って戦っていたつもりだったが敵はそれを上回っていたのだ。


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