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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 食料の消費が予想よりも少なかった為、魔人軍は物資に余裕を持って北上した。抵抗する町もあったが既に結界石は盗賊に奪われて無かった。抵抗とは名ばかりの一方的な戦いの後、街を占領した。町を占領すると町の守りと維持の為に人員を割かなければならなくなる。


 北に行くほど魔人軍の人員は減少していったが町との戦いよりも盗賊との戦いの方が多かった。思ったよりも投降者が少なかったので物資に余裕があった。その為、雪が降っても吹雪になっても魔人軍は北上を続けた。そしてついに最北端の町へ辿り着いた。


 最北端の町だけは結界が健在で、街を守る兵士達の顔色も良い。荒れ狂う吹雪の中、攻城戦が始まった。普通だったら吹雪が収まるまで待つ。しかし魔人軍には物資に余裕があったのでこれ幸いと戦いが始まった。


 今回マサモリは魔人軍の経験を積ませる為に前線に出ずに後衛で結界を張った。最後に残っていただけあってか町には魔石砲弾や武器が豊富にある。マサモリとモブツリーマン、そして魔人軍の魔法使いが交代で結界を展開して魔法使いや味方の砲撃部隊を守った。


 結界は魔石砲弾が二十発分受けたら壊れたように装う。規定数の魔石砲弾を受けたら結界が壊された振りをして交代する。マサモリが本気で守ってしまうと結界が壊れずに結界の交代タイミングが学べない。魔人軍の魔法使いは魔石砲弾十発で精一杯だ。


 十発だと一回の同時射撃でボロボロになってしまうので実用性で言ったらギリギリのラインだ。城壁と大砲の設置位置からして同時に受ける魔石砲弾の数は十発以下だ。シュドラが大きな街を攻め辛かったのも理解できた。


 マナスが結界を張れば相当持ちこたえられる。しかし交代要員の魔人軍の魔法使いが余りにも貧弱すぎた。大砲を数十門備えている町を攻めるのはマナスへの負担が大きすぎた。それでも町の全方位から攻めれば砲撃が分散される。


 一面からの攻撃では時間が経つと大砲を移動され、集中砲火されてしまう。魔人軍の損耗を気にしなければ有りな手ではあるがシュドラは兵を使い捨てにするような戦い方はしなかった。大砲を移動する場合は魔法で新しく設置場所を作り出す。しかし新しく作った設置場所からではどうしても命中精度が上がらない。


 膨大な費用を惜しまずに事前に訓練していたら命中精度を高められるのだがそんな事をしている所はほとんどない。それに魔石砲弾に異常があって爆発する可能性を考えると気軽に設置出来ないのだ。相当追い込まれた場面でないとそういった使い方はしないだろう。



 町から魔石砲弾や魔法、矢が放たれる。魔人軍は前衛が結界に突撃して後衛が魔法や大砲、矢を放つ。今回、マサモリは魔石砲弾を使わない。魔石砲弾は強すぎて守りを固めて打ち合っているだけで勝負が決まってしまう恐れがある。今魔人軍に必要なのは経験なのでその機会を無為にするのは勿体ない。


 魔人軍は結界を張って街を時計回りに攻撃し続けた。まずは結界を破壊しなければならない。結界さえ破壊してしまえば城壁などただの障害物だ。町に備え付けられている大砲は巨大で重い分、射程が広い。魔人軍は人力で大砲を持ち運びするので町の大砲に比べると軽い分、射程が短い。


 しかし魔人軍の大砲が届く範囲まで距離を縮めさえすれば小回りが利くので即応的な戦い方が可能になる。吹雪の中、使い魔から送られてくる大砲の位置情報を元にして魔人軍は砲撃を最小限に抑えながら戦った。



 数時間もすると魔人軍の魔法使いの魔力が尽きた。攻撃地点を何度も変える事に慣れていなかった魔人軍の兵士達にも普段以上の疲労が見え隠れしている。魔人軍はマサモリが結界を張って殿を務め、後退した。


 町から離れると設置していた野戦用の陣地に入った。陣地というよりも城と表現した方が正しい。収容人数に合わせて圧縮された城に魔人軍が入るとすぐに大砲を既定の位置に設置した。簡易的な城には結界が張られ、守備の兵以外はすぐに休憩に入った。


 食事を取って、兵を交代で休ませる。マサモリは体力が回復したらすぐに攻城戦を再開したかった。しかし兵士達の体力は回復したが魔法使い達の魔力は回復しきっていない。マサモリは諦めて魔法使いの魔力の回復を翌日まで待った。


 それから毎日攻城戦を行った。しかし数日で町の魔石砲弾が尽きた。魔石砲弾が無くなれば後は簡単なものだ。物資に物を言わせて平押しで結界を破壊した。普段だったら降伏勧告をして無駄な殺しはしない。しかし町にあった大量の骨を見たマサモリは彼らを生かしておくつもりはなかった。


 使い魔で偵察した結果、町の住民のほとんどに同じ症状が出ている事を確認したからだ。症状はすぐに発症するものではない。町の住民の多くが相当前から症状の元となる行為を行っていた事を意味する。


 魔人軍の兵士達はそんな住民を見ても驚かなかった。彼らにとっては驚くべきものではなかったのだ。マサモリはやるせない気持ちになったがすぐに切り替えた。そして町は略奪後に焼かれた。



 最後は後味の悪い結果になったが、マサモリはすぐに近場の盗賊狩りを実行した。食料は豊富だったので休んでいる理由はない。魔人軍が吹きすさぶ吹雪の中、盗賊を探し回った。唯一ましだったのは使い魔が盗賊の位置を特定していたので無駄足になる事はほとんどなかった点だ。


 投降していれば魔人軍に加入出来ていたのだが彼らが選んだ道なのだからしょうがない。盗賊狩りは雪が止むまで続いた。


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