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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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『春になったらラギドレットを落とす』

『いぃぃやっほおっおっほーい!』

『結局の所、さっさと西部地域を制圧しちゃった方が統治が楽だからね』


『殿の判断に従います』

『分かったー』


『ボタンは地下のドワーフ優先でいいよ。他の忍者エルフは手伝ってもらうけど』

『はっ! 感謝感激雨霰です!』

『私をどんな感じに使い潰してくれるんですか?』


『ラギドレットは力押しで終わらせる 。モブツリーマンは突撃部隊の盾だ!』

『任せてください! 少数英精での正面突破。ぶつかり合う戦士達。志半ばで倒れるモブ達……。最高です!』


 マサモリは秋の収穫前に来春の予定をエルフに伝えた。結局は自分で動いた方が状況を思い通りにできる。マサモリ達には世界を支配できる力はあっても支配しようとする気は全く無かった。心はずっと部外者のままだった。しかし誰が支配しても争いが止まないならマサモリが支配してもいいのだ。


 力があっても意思が無ければ世界は動かせない。意思があっても力が無くては世界は動かせない。関わってしまったからには周りの状況に流されるよりも自分で切り開いていく。マサモリは超大陸と真剣に向き合うと決めた。


 

 魔人軍領では秋の収穫は滞りなく済んだ。予測していた収穫後を狙った盗賊も想定内に収まった。とは言ったものの、盗賊の数は多い。北からの盗賊は命懸けだし、東からの盗賊は強者が紛れ込んでいる。しかし問題は秋に食料を奪ってもしっかり保存しないと冬を乗り切れない点にある。今回生き残った盗賊は冬の一番寒い時期に再び現れる事を意味している。


 穀物類は保存が可能だが他の野菜類は氷漬けにしないとすぐに腐る。魔人軍領では結界で守られた畑から野菜が収穫できる。冬に備えて穀物の備蓄も万端だ。来季の戦が出来るだけの備蓄が倉庫にうず高く積まれている。備蓄した穀物の消費を抑える為、農村を守る為に冬になると魔人軍は各地の農村へと移る。


 魔人軍の本拠地であるビッターに兵士を集中させた方が効率的なのだが盗賊の襲来は確実なので農村への防衛力派遣は必須だ。農村には結界で保護している畑があるので暖かい季節に比べると収穫量や種類は減るものの収穫が可能だ。この結界で保護している畑があるかないかで農村の存亡が決まる。


 結界畑がある農村は冬でも収穫が可能で人々は生き長らえる。しかしこれがないと冬場は地獄になる。穀物は価格も高いので奴隷ばかりの農村では持ち主である盗賊や貴族に全てが奪われて手元には残らない。ボロボロな家の中に土を持ち込んで野菜を植えてもほとんどが寒さで枯れてしまう。


 野菜を氷漬けにして保存できる余裕があれば春までもつが、そんな余裕がある農村はほとんど存在しない。氷漬けに出来るなら冬場も室内を温めて少量だが野菜を育てられる。農場主の盗賊や貴族にとって農民は攫ってくれば良いので農民の生活なんて一切注意を払わない。


 春になると冬の餓死者で農村の人口は激減してしまう。農村の人口が減ると他の農村から奪う。有力な盗賊の支配下にある農村には結界畑がいくつもある。畑の中心に結界石を置いて冬の寒さから作物を守るのだ。力のある盗賊は冬でも農村から食料を回収してより力を蓄える。


 賢い盗賊ならそれが金になる事を理解しているので他の農村を襲う時には結界石の有無を最初に調べる。冬は超大陸人にとっては死の季節だ。誰もが死を乗り越える為に命を懸けている。



 魔人軍領では農民にも最下級の兵士にもしっかりと食料が与えられる。外に食料を売っているが自分達の食べる分の食料はしっかりと備蓄をしている。食料は周囲の農村から常に補給され、死活問題だった飢えとは無関係な生活だ。農民や最下級兵士にとって魔人軍は天国である。


 逆に部隊長は盗賊時代に比べると安定してはいるものの、収入は少ない。現金は多少配られているが盗賊時代は略奪品をほぼ自分の懐に入れる事が出来た。逆らう奴は殺した。むしろ取り分を増やす為に逆らわなくても殺した。


 だからと言って現時点で反抗する気はない。シュドラは去り、四天王二人が居なくなったがサーモとその配下は圧倒的な力を持っている。気に喰わない反面、味方になると心強い。サーモが居なければ魔人軍は冬の内に半壊して内部分裂を起こしていただろう。


 強者にとってはそんな事は別に問題ではなかった。力があれば超大陸では好き勝手出来るからだ。ただ問題なのは強者と言えど東のラギドレットに比べると小粒な点だ。魔物人化した者は基本的にほとんどが元弱者なので生粋の強者には勝てないと本人達も自覚している。


 魔物化してなお本物の強者には勝てないのだ。だから多くの者にとってサーモはいけ好かないが強いので従うといった具合になっている。継続派と拡大派に分かれていたのが魔人軍の性質を如実に物語っている。本当の強者だったら邪魔者は即ぶっ殺している。


 睨み合いなんてものは臆病者がする事なのだ。しかし当の本人達はその自覚は無い。サーモをその内ぶっ殺してやると思いながら指示には素直に従ってしまっている。冬の襲撃の時にサーモ達に救われた者達は無意識の内に格付けが出来あがってしまった。兎にも角にも手下になるなら強い奴の下が良い。




 北部の占領した町では兵士と農民の募集が行われていた。しかしほとんど集まっていなかった。骨と皮だけのような農民が少し来た程度だった。マサモリはもっと人が集まるかと思っていたので肩透かしにあった気分だった。


 占領した農村は復旧し、町の人々には食料を与えた。町はもう町として機能していなかったので彼らは農村へと送られた。普通だったら飢えた人が募集に押し寄せてくるとマサモリは思っていたが押し寄せてきたのは盗賊だった。


 北部では食料を与えた町や農村を狙って襲撃が行われた。北部には秋冬にかけての襲撃の為に魔人軍の人員を残していた。しかし支配地に食料が配られた事が知れ渡ったのと秋の収穫が終わったのとが重なって襲撃者の数は膨大になった。


 あらかじめ防衛線を引いていたのでなんとかなった。防衛線が構築されて無かったら浸透されて復旧したばかりの農村が数多く焼かれる所だった。それでもいくつかの盗賊の浸透を許してしまい、農村が焼かれた。



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