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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 ラスターも氷とは相性が悪いのだがそんな事はおくびにも出さない。フェニックスは不利を悟るとすぐさま逃走した。しかし突如として目の前に結界の壁が現われた。灰の積もった地面の下から大量のドラゴンが潜り出て、フェニックスを囲う様に布陣した。吹雪がピタリと止んだ。吹雪はフェニックスを攻撃する為のものではなく、罠に誘い込む為の布石だったようだ。


 フェニックスは結界を張っているドラゴン達へと一直線に突進した。しかしそんなフェニックスにライムが体当たりをした。フェニックスにとっては痛痒のない一撃かと思われたがライムの体が触れた瞬間、フェニックは氷によって急激に熱を奪われた。フェニックスは結界を張っているドラゴン達に攻撃するのを諦めて回避行動を取った。


 結界が破壊されるのを防いだライムであったが、フェニックスに体当たりをして無事では済まなかった。ライムの芸術品の様な氷の鱗が醜く焼けただれた。結界を作るドラゴン達から悲鳴に似た叫び声が沸き起こった。しかしライムの瞳には強い覇気が宿っており体の痛々しさよりもフェニックスに対する殺気がより強く感じられる。


 するとドラゴン達の声も悲痛なものからライム達を鼓舞するものへと変わっていった。フェニックスはその様子を見て、非常に不愉快に感じた。フェニックスはこの世に存在して良いのは自分だけだと固く信じている。フェニックスが町や森を焼いた際、炎を受けていない生物までもが簡単に死んでいった。


 何故死んだのか不思議に思ったがきっとその生物達が弱かったからだろう。フェニックスが辺り一面を焼くと生物は何もせずとも死んでいった。フェニックスは自分が唯一無二の特別な存在であるとその時に理解した。そして自分に並び立つ存在は居ないと確信した。群れは弱さの象徴であり、強い自分には不必要であると決めつけた。


 フェニックスが群れを求めれば燃えかすから眷属が生まれてきただろう。しかしフェニックスは眷属を求めなかった。空を舞うフェニックスには自分より劣る存在など足手まといにしかならない。だから目の前の群れるドラゴン達を見ると心の奥底から沸々と怒りが沸き出した。



 結界内では狭い空間でラスターとライム、フェニックスが死闘を演じていた。先程のダメージでライムの攻撃は精彩を欠く。しかしその分ラスターが勇猛に戦った。



 フェニックスは結界に閉じ込められて焦っていたが思ったより命の危機を感じない事に安堵していた。自らに痛手を与え得る存在は傷付き、不調になっている。回復しつつあるが結界内に漂う熱と火傷のせいで回復スピードは遅い。


 フェニックスは氷のドラゴンを殺したいと思ったがそれよりも光り輝くドラゴンへの殺意が上回った。炎を纏う自分は美しく光り輝いた存在だと思っていたのに目の前のドラゴンはそれ以上に光り輝いている。黄金のドラゴンの放つブレスは鱗を経由して光の帯のようになって相手を焼く。


 視界には煌めく鱗が舞い、時には鱗がフェニックスの体を貫いた。フェニックスは翼を広げて燃える羽を打ち出したが煌めく鱗と当たるといなされ、破壊された。フェニックスはこの二匹のドラゴンを灰にしてやると心に誓った。



 先程まで吹雪を放っていた水属性のドラゴンと魔法使い達がドラゴンの背に乗って結界に合流した。そして結界の外から内側に向かって冷気を流した。フェニックスはそれに気が付くと狂ったように暴れ回った。ラスターとライムは二人で結界を張ってフェニックスの猛攻に耐えた。


 結界はドラゴンと魔法使いが合流した事で強度を更に増した。ライムはフェニックスに体当たりにした時に負った大火傷が回復しつつあった。冷気が結界に流れ込むと以前よりも体にかかる負担が弱まった。逆にラスターは飛ばしていた鱗を戻して防御態勢を取った。


 ラスターにとっても結界内に充満する冷気は厄介だった。フェニックスにそれを悟られないようにするので精一杯だ。フェニックスと言えば尻に火の付いた様に結界内を暴れ回った。結界を破壊しようとするが結界はいつしか凍り付いて自分の攻撃が効き辛くなっていた。


 守りを固めたラスターとライムにもダメージを与えるは困難である。いざという時はラスターとライムを人質にしようと思っていたフェニックスであったが当てが外れて無我夢中に結界を攻撃した。フェニックスは魔力を貯めて結界内で炎のブレスを放った。外側から徐々に凍り付いていた結界内が一瞬で炎で満たされた。しかし結界を破壊するには威力は足りない。


 結界は再び外側から徐々に凍り付いていった。再びフェニックスがブレスを放つ。しかし炎が思ったように出ずに中途半端な攻撃に終わった。いよいよ追い詰められてきたフェニックスであったが変化は結界の外側で起こった。結界の外で援護に回っていた魔法使いが一人、また一人と倒れ始めたのだ。


 結界の強度が下がり、流れ込む冷気が減少した。フェニックスは千載一遇のチャンスが訪れたのを悟った。フェニックスは体を七つに分割した。頭、二つの翼、胴体、尾羽、二本の脚だ。胴体部分を中央に配置して残りの部位が細長い八面体の頂点に配置された。八面体は細長くなり槍のようになって結界の頂上部へ向かって放たれた。


 結界に衝突すると八面体の各頂点が同時に光り、燃えさかる槍となった。結界とフェニックスがぶつかりあって境界面が赤熱して歪んだ。フェニックスは推進力をあげて結界を破壊しようとする。しばらく均衡が続いたが結界の歪みが次第に大きくなっていく。そして結界に小さなにヒビが入った。


 ヒビは徐々に広がり小さな隙間が生じた。外の空気が結界内に流れ込むと大爆発が起こった。炎が巨大な柱のように天へ向かってそびえ立った。空気中に巻き上げられた灰は時間をかけて集まり、燃え上がりフェニックスの形を作った。しかし体の大きさは先程の半分以下になっている。フェニックスはドラゴン達の追撃を逃れる為に全力で東へと逃れていった。



 魔力の大半を失ったフェニックスは魔力に飢えていた。フェニックスは自分が燃やした存在から魔力を奪う。物を燃やす事はフェニックスにとって食事だった。フェニックスは餌となる魔力を探した。魔力を頼りに町を見つけたが燃やした所で体を回復するには全く足りなかった。フェニックスは竜人郷に近づかないように反時計周りで超大陸を周り、目につく物を焼き尽くした。そしてフォレストの魔力を発見した。



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