表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
170/211

170


 時は少し前に遡る。



 竜人郷付近では使い魔が警戒態勢で飛び交っていた。使い魔の数から竜人族の防衛に対する意欲が伺える。竜人郷は山をくり抜いたような建物や山にへばり付くような独特の建物が多い。少ない平地で農業をする為に人々は山に住むようになった。


 竜人郷の東にある山脈を越えた先には火の粉が降り続いている。時折風の流れで竜人郷に火の粉が舞ってくるが山脈の上空の乱気流にかき消された。超大陸東部地域の山や森は燃えさかり、平地は既に植物が燃え尽き灰に覆われている。


 燃えさかる炎、燃え尽きた灰、炭化した黒、この三色だけの世界が見渡す限り広がっている。空には灰が舞い上がり、ゆっくりと大地に降り注いだ。熱波を伴った竜巻が吹き荒れ、魔力が豊富にあった土地は燃え続けるか盛大に爆発した。この光景を見たら、絶対にフェニックスを殺すべきだと誰もが思うだろう。


 竜人族はフェニックスの討伐部隊を組織した。超大陸は険しい山脈によって五つの地域に分断されている。普段は強力な魔物が沸いてもその山脈を超える事は無かった。だから他の地域で起こった災害は完全に他人事であった。しかしフェニックスは飛んでいるので山脈の守りが意味をなさない。フェニックスは魔力の多い場所を優先的に燃やして回っているので近場を燃やし尽くしたら次に狙うのは竜人郷になると竜人族は予測した。


 多数のドラゴンと燃える鳥、フェニックスが乱気流が渦巻く山脈の上空で睨み合っている。山脈の乱気流は強く、竜人族も竜化しないと危険だ。ただ飛んでいるだけでも乱気流から身を守る為に魔力が減っていく。


 先にドラゴンが動いた。隊列を組んだドラゴンがフェニックスを襲う。フェニックスが大きく翼を広げ、翼から燃えさかる羽が打ち出した。ドラゴンは各自が結界を張ってそれを防ぐ。しかし打ち出された羽の一本一本が強力だ。数本当たっただけでドラゴンの結界は簡単に破壊された。


 ドラゴン達は体に燃えさかる羽毛が突き刺さるのもお構いなしにそのままの勢いでフェニックスに飛び掛かった。ある者は角で、ある者は牙で、そしてある者は自慢の鱗に強化魔法をかけてフェニックスに突撃した。しかしフェニックスは物理的な攻撃を一切受けなかった。フェニックスの体に触れるとドラゴン達はあっさりと突き抜けた。


 まるで幻を切ったかの如き感触に攻撃に参加したドラゴン達は驚いた。そして体を焼く炎の熱に悲鳴をあげた。フェニックスに攻撃したドラゴン達は火達磨になって地へ落ちた。すぐさま救援部隊が燃え盛るドラゴン達に水や氷魔法をかけて必死に鎮火を試みた。水魔法を燃え盛るドラゴンに放つと水魔法は一瞬で蒸発した。


 氷魔法も同様だ。ドラゴンを氷漬けにする威力の氷魔法でやっと炎を消せた。第二、第三と隊列を組んでいたドラゴンは隊列を変更した。近接攻撃をする予定だったと思わしき部隊はすぐに下げられ、遠距離部隊が前に出た。負傷したドラゴンがすぐに回収されていく。


 フェニックスは回収されつつあるドラゴン達に向かって魔力を練り込んだ炎のブレスを吐き出した。しかしブレスは氷のブレスによってかき消された。フェニックスは氷のブレスの出所を探った。その先にはライムが居た。ライムはフェニックスに向かい氷のブレスを吐いた。フェニックスは先程のドラゴン達の攻撃とはうって変わって氷のブレスを回避した。


 そこへ上空から光のブレスがフェニックスを襲った。フェニックスにとっては大きな痛手ではない。しかし今までは空から一方的に全てを燃やし尽くしていたので自分と同じように飛ぶ相手が気に喰わなかった。フェニックスはラスターを追いかけた。しかしラスターは巧みにフェニックスのブレスを避ける。


 フェニックスが翼を広げて羽を放った。しかし燃える羽はラスターの結界に阻まれて効果をなさない。そこへライムの氷のブレスがフェニックスに直撃した。物理攻撃が効かない分、水や氷による攻撃は効果的だった。フェニックスは悲鳴をあげて回避行動を取った。そこへラスターがブレスを放って邪魔をする。情けない悲鳴をあげたフェニックスは自分の行動を大いに恥じた。そしてどうにかしていけ好かない二匹のドラゴンを焼き殺そうと躍起になった。



 ラスターとライム、フェニックスは空中で交差しながらブレスを打ち合った。ラスターはわざとフェニックスを挑発するように様々な無駄な行動を取った。ラスターは空中に自分の鱗を飛ばした。鱗は灰色になった空でもラスターの放つ光を浴びてキラキラと光り輝いた。フェニックスはそれがまた許せない。


 フェニックスが魔力を練り込んだ火球を放った。するとラスターはブレスを鱗で反射させて火球を貫いた。溜めのないブレスではラスターとライムには通じない。溜めたブレスは目標に到達する前に爆破される。フェニックスは打解散を思い浮かばなかったので彼らの仲間をいじめる事にした。


 炎で構成されたフェニックスの口元が歪む。そしてフェニックスは弱いドラゴンを探した。しかし弱いドラゴン達は遠巻きに移動してしまい攻撃するには距離が離れすぎていた。フェニックスが他のドラゴンを攻撃しようとすると二匹のドラゴンが邪魔をする。フェニックスは次第に苛立ちが募っていった。



 特にライムは氷属性なので火属性のフェニックスには効果的だ。突然、フェニックスは空気が湿っていくのを感じた。氷属性のドラゴンが中心となって辺りに吹雪を放ち始めた。フェニックスがブレスを放つと全ての物は燃え、焼け落ちる。ブレスを放てば放つ程、フェニックスにとって快適な環境へと変化していった。世界が燃えれば燃える程、フェニックスは己の体に活力が沸いてくるのを実感した。


 だから目につく物を全て燃やしてきた。フェニックスのブレスによって作り出された熱波が吹雪とぶつかった。始めは熱波が押していたが次第に吹雪が押し返していった。吹雪の中心部には複数のドラゴンと魔法使いが結集している。フェニックスは吹雪の発生源を攻撃しようとしたが既に手遅れだった。


 厚い吹雪の壁が出来あがっていてしっかりと溜めたブレスでないと破壊できない。空気には湿り気が混ざり始めてきてフェニックスは非常に不愉快に思った。ラスターとライムは先程とはうって変わって攻撃よりもフェニックスを吹雪に近づけようと追い立てた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ