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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 数日間、出島村で過ごしたマサモリは超大陸へと向かった。出発の際、ナツメに泣き付かれたのでたまには帰ってくると約束した。北と東の魔物化個体の動き視次第になるが、冬の間にどちらかは倒しておきたいとマサモリは思っている。


 春になったら色々とやる事が目白押しだからだ。北では魔物化個体が暴れている。しかし東では竜人達が魔物化個体と戦う準備をしているそうだ。北の魔物化個体の特性が掴めたらそちらから先に戦う事になるだろう。マサモリとシラギクはカメリアへと到着した。



「町の樹を見て、離れ離れになっていた仲間が合流してきた。新しい仲間を紹介する。ツリーマンのシーラだ」

「あたいの名はシーラだ。サーモとは親友さ。よろしくな」


「シーラは俺の次に強い。仲間ではあるが舐めた口を聞いたら殺されるかもしれないから注意しろ」

「おいおい。あたいだって無意味に仲間を殺したりしないさ。精々、八割殺しだ。さあ、我こそは八割殺しになりたいという輩は居ないかね!?」 


「ふん! 何が八割殺」


 女エルフが文句を言いかけたがシラギクは既に女エルフを殴り飛ばしていた。木造の建物を突き破って女エルフが吹き飛んでいった。


「はは、他に活きが良いのはいないか?」


 女エルフは文句ばかり言っていたのでハーフエルフ達はざまあみろと言わんばかりの表情だ。


「流石姉御!」

「姐さん、よろしくお願いします」

「やった! 強い仲間が増えたぞ!」


「姉御か。悪くない響きだ。気に入った! お前達を超大陸で最強の戦士に鍛え上げてやる!」

「おー!」


 相変わらずハーフエルフ達はノリが良い。シラギクはすぐに溶け込んでいった。




 ボタン達が北へ向かって情報収集している間、マサモリはゴーレムが暴れ回った南部地域にいた。南部地域の大半が地層ごとひっくり返されて低い山と針山まみれになっている。深くひっくり返されたせいで春になってもすぐには植物が生えてこないだろう。


 大地は小石と砂利まみれで気候によっては砂漠化してしまいそうだ。このままだと南部地域が急速に衰退するのは目に見えている。飢えた人々が山を越えて西部地域に来られても困るし、砂漠になったらカメリアまで砂が飛んできそうだ。マサモリは南部地域が不毛の地になっても困るので木を植えようと思った。


 問題は剣山のように連なる針山だ。破壊するのは簡単だがあんまりやりすぎても目立ってしまう。それに労力がかかる。最小限の労力で最大限の成果をあげたい。マサモリはそれを解消すべく品種改良した木を用意した。


 目を付けたのは絞め殺しの木だ。他の木の枝に種が運ばれるとそこで発芽し、根を地面へ向かって伸ばす。根が地面に到達すると幹となり太くなる。最後には寄生した木を覆い尽くし自分が光や栄養を奪う。最終的に寄生された木は絞め殺されたかの様に枯れる。そんな絞め殺しの木の種を針山へ散布する。


 時間をかけて絞め殺しの木は針山を絞め殺すだろう。針山がないだだっ広い平たい山には魔力を付与した広葉樹の苗を飛ばしていく。広葉樹林になれば毎年葉を落として地面を肥やすだろう。大地には圧倒的に土が不足している。土がないと雨はすぐ大地へ染み込み地表に残らない。


 木々に定期的に水をやれば数十年後には森になっているだろう。そう考えるとマサモリはわくわくしてきた。もっと植える木を考えるべきだったかと植えた後に思った。大規模な盆栽をしている気分だ。そうなると山の配置や川の位置が気になってくる。マサモリは自分の中に沸き上がる衝動を抑え込んでシラギクと一緒に種を撒いた。


 最後に周囲に雨を軽く降らして次の場所へ向かった。幸か不幸かドワーフは周囲に居なかった。陣があったと思わしき爆発跡はあったが吹き飛ばされていた物はすっかり回収され尽くされている。南部地域の鉱石はゴーレムが掘り起こして食べてしまったのでほとんどないだろう。ならばドワーフに森の木を切られないはずだ。せっかく植えた木を切りに来るなよとマサモリは祈った。



 植林は一日では到底終わらなかった。見渡す限りの針山を眺めつつ、マサモリとシラギクは植林を続けた。次第に面倒になってきたのでマサモリは樹木を成長させて挿し木にして辺りの地面に撃ち放った。


 そうでもしないと終わらない広さだ。荒山となっている場所が広すぎて人が生き残っていそうな所まで全く届かない。シラギクに絞め殺しの木の種撒きを任せれてマサモリは挿し木を延々と大地に放った。


 安直に果樹を植えるとそれを食べる生物が増えてしまう。森に果物があると分かれば人が入ってきて荒れる。そしてすぐに戦いが起こる。それを防ぐ為にあんまり旨味のない森にする予定だ。争いの種にならずにひっそりと佇む森を目指している。



 マサモリとシラギクが機械的に作業を続けているとボタンから式神が届いた。式神には北の魔物化個体の特性が分かったと書いてあった。マサモリ達は植林を止めて一旦カメリアに帰還した。


「北の魔物化個体は樹を操るようです。世界樹があった場所付近から始まって超大陸の北部から北西部の全域を今も森が広がっています。本体は世界樹があった場所の地下に居るようです。地上に生える森よりもそちらの方に強い魔力を感じられます。弱点は火です。しかし火を付けたりすると周囲一帯の樹がトレント化して大暴走します。繁茂する森を駆除しようとして町の人々が増殖する森へ火を放ちましたが、怒り狂ったトレントによって町は踏みつぶされました。よって火は使わない方が賢明かと思います」


「となると世界樹があった場所にいる本体を倒せばいいのかな?」

「はい」



 超大陸は山に囲まれた行き来が困難な五つの地域に分かれている。超大陸の中央部には大きな楕円形の内海があり、海は南へ続いている。そして超大陸を東西に分けるように大きな山脈が連なっている。


 西側はマサモリ達がいる西部地域とゴーレムが暴れていた南部地域、そして今回の魔物化個体がいる北部地域の三つの地域に分かれている。北部地域は東西に分けた超大陸の北から北西の領域、西部地域は北西から南西の領域、南部地域は南西から南の領域を指している。


 超大陸の東側はその領域の大半を占める東部地域と内海に沿った山ばかりの狭い地域、中央東部に分かれている。東部地域だけで超大陸の約半分を占めている。


 世界樹は北部地域の南部、超大陸全体で見ると中央より少し西の位置にあった。





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