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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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「マサモリ! 今日は鶏舎を移動するです。強くなったあたしの実力を見せてやるです」

「分かった。どれくらい強くなったか、見せてもらおうじゃないか」


「マサモリが超大陸に行っている間もナツメちゃんは一生懸命訓練してたんだよー。訓練の成果を見せる時が来たね!」

「はいです! 任せるです!」


 マサモリが出島村に帰って来た次の日、ナツメの誘いで鶏舎の移動を手伝う事になった。朝からナツメはやる気に満ち満ちているのでとりあえず応援しておく。朝食が終わると三人は鶏舎へと向かった。


「鶏舎を動かして新しい位置に移動するです。あたしが鶏舎から鶏を追い出すのでマサモリは結界を張って鶏舎から出た鶏を入れておくです。シラギクはあたしと一緒に鶏を追い出すです」


「はい!」

「おっけー」

「始めるです!」



 鶏舎の中にナツメが威風堂々と入っていった。シラギクがそれに続く。マサモリは鶏舎の入り口に大きめの立方体の結界を張った。鶏が暴れても壊されない程度の強度にして、ぶつかっても怪我をしないように柔らかくする。


 中では二人が鶏をマサモリが作った結界に誘導し始めた。言うだけあってか、ナツメは鶏に慣れてきたようで全く怖がっていない。自信のほどが全身から感じられる。順調に鶏が結界内に誘導されていく。最後まで波乱の展開は無いかと思った時、鶏舎の中ではナツメと一匹の鶏が対峙した。


「カカドゥー、大人しく移動するです」

「コッコッコケー、コッコッコッコッアー」


「反抗的な態度です。大人しく言う事を聞かないと痛い目にあいますよ……」

「ケァッーコッコッコッ!」

「ふーん、なら勝負です!」


 ナツメはそう言うと鶏に背を向けて鶏舎を囲む結界に飛び上がって大きく両足で踏み込んだ。結界が大きく歪んでナツメが弾き返される。その先には同じように結界を利用して蹴りを放つ鶏がいた。二人の蹴りが衝突した。お互いに弾き返されるように吹き飛んだ。その衝撃を利用して再び結界へ飛び移り、結界の反動を利用して相手にぶつかる。


「ナツメちゃん、がんばれ! 負けるなー」


 シラギクが少し離れた場所で一生懸命応援している。ナツメは以前とは見違えるように強化魔法が上手くなっている。超大陸で囚われていたハーフエルフに比べると魔力は少ないが体捌きは上回っている。シラギクが丁寧に教えたのだろう。つい、超大陸のハーフエルフとどちらが強いか気にしてしまう。


 現時点ではナツメの方が一歩上手だが実戦になったら負けてしまうだろう。超大陸の人のような獰猛さがないと気圧されてしてしまいそうだ。ただ、元気に動き回るナツメを見るだけでマサモリは満足してしまった。やせ細っていた体にも肉がついて、もしかしたら背も伸びたのかもしれない。離れていた期間は短かったが若いだけあってか成長速度が速い。


 もしかしたらシラギクは教えるのが上手いのかもしれない。マサモリ的には認め辛いのだが感覚系の人には感覚系の人が教えた方が良い。マサモリは釈然としない気持ちを飲み込んで素直にナツメの成長を喜んだ。最終的には最低でも超大陸の強者に勝てる位にはなって欲しいと思うマサモリであった。



「はぁはぁ、ぜぃぜぃ。ふぅー、勝ったです!」


 鶏はナツメとのじゃれ合いに飽きたようで、鶏舎から出てマサモリの結界に入った。ぼろぼろになったナツメが額に滲む汗を拭った。


「ナツメ、おめでとう! よく頑張った!」

「ナツメちゃん、やったねー」


 マサモリとシラギクが素直に褒める。


「ふっふっふ。まあ、こんなもんです。マサモリ見てましたか! あたしの成長を! もっと褒めるです」

「見違えたよ。強化魔法も体術もかなり上手くなったな」


「ナツメちゃん、格好良い!」

「えっへん、おっほん。うふふふ。さあ、続きをやるです」


 鶏舎を三人で持ち上げて横に移動する。そして鶏舎を丸ごと清掃する。鶏舎が傷つかない程度の強さで水をかけると汚れが落ちていく。マサモリが水魔法を使ってシラギクとナツメはブラシで鶏舎を洗った。


「よし、乾燥させるよ」


 鶏舎をひっくり返して日に当て、風魔法で乾燥させる。シラギクとナツメは鶏舎があった場所の土をひっくり返して混ぜ込んだ。鶏舎にあった鶏糞は処理して壁畑の肥料として使う。栄養素を豊富に含んだ肥料になるのだ。鶏舎が乾くと次の鶏舎予定地へ持って行った。


「移動が終わったです! 完璧すぎる仕事っぷりです」


 マサモリとシラギクが拍手をした。


「あたしとシラギクは鶏舎に、もみ殻を撒くです。マサモリは鶏舎の鶏糞を発酵? させるです」

「了解」

「はーい」


 マサモリは鶏舎があった場所へ移動した。鶏舎跡地に結界を張って中の温度を上げていく。水と空気を少しずつ加えながら風魔法で土と鶏糞を撹拌する。マサモリは、うとうとしながら自動的に作業を続けた。しばらくすると結界内に白い煙が充満してきた。


「マサモリ、この煙はなんですか? 何か焼いてるんですか?」

「あ、ナツメ。結界内に入っちゃ駄目だよ」

「ギャアアア! 目があ! 鼻がああ! ゴホッ! ゴホ!」


 マサモリは転げまわるナツメに解毒魔法をかけた。


「ごめんごめん。みんな分かっているから結界に人の侵入を禁止にしてなかった」

「うわああああん! ばーかー! 入ったら危ないなら教えてくれです!」


「つい、うとうとしててさ。まあ、もう大丈夫だろ?」

「ふんです! あれ……、もしかしてあたしが調子に乗っていたからお仕置きされたんですか? うううう、良い子にしますから捨てないでえ」


「マサモリ。ナツメちゃんをいじめちゃ駄目だよ」

「うわあああん。マサモリに捨てられたら村人のシラギクに助けてもらうです。でも村人じゃ不安なのでシラギクには村長になってもらうです。下剋上です!」


「いじめてないよ。それに村長なら何もしなくてもその内、変わるよ」

「えー! 駄目です。権力の座には、しがみ付かないと駄目です! そしてあたしをずっと保護するです」 


 マサモリは興奮するナツメをなだめた。

 


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