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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 マサモリはカメリアに帰還した。マサモリ達が回収した結晶はゴーレムの魔力を上書きしていたのでゴーレムに変化しなかった。ドワーフは魔力の操作が苦手なうえに生物から切り出した結晶等には魔力が残っている事を知らなかったのかもしれない。もしくは得た結晶の量が多すぎて魔力の上書きが全部出来なかったのかもしれない。


 ボタンからドワーフ達の顛末について報告は受けた。最後にボタンはドワーフを全てを駆除できたとは思っていませんと言った。こういった経験を積まれるとドワーフが賢くなりすぎてしまう。だから出来るだけ残党を排除してきます。そう言ってボタンは各地に散らばったドワーフ達を狩りに行った。



 マサモリはゴーレムと半徹夜で戦い続けたのだが思ったよりも自分の体が疲労していないのに気が付いた。ゴーレムの核の魔力を吸収したお陰で以前よりも快調ですらある。力を抑えた戦いであったがゴーレムとの戦いから得られる物は多かった。寝ながら戦う訓練はしていたが実戦で使ったのは初めてだった。


 ゴーレムは攻撃が大雑把で動きが遅いので最高に相性の良い相手だった。相手が強化されたベヒモスだったら寝ながら戦うのは無理だった。その場合は忍者エルフと一緒に戦って短期決戦を挑んでいただろう。マサモリはゴーレムとの戦いを思い出しながら最適な戦い方を考察し続けた。


 考えてばかりだと頭がこんがらがってしまうので、マサモリは気分転換に式神の視界を共有した。ゴーレムの亡骸の付近には風で飛ばされた砂と、忍者エルフ達が回収しなかった小さな結晶が広がっている。しかし新しくできた砂地は既に血で染まっている。


 ドワーフが二つの集団に分かれて争っているのだ。ドワーフは奴隷兵を前面に押し出し、奴隷兵を盾にしながら戦っている。ドワーフが狙うのは基本的に相手の奴隷兵だ。示し合わせたかのようにお互いに奴隷兵を狙っている。ドワーフが巨大な戦斧を振り回すと敵の奴隷兵が何人も真っ二つになった。


 ドワーフ同士の戦いにはルールめいたものがあるらしく、ドワーフ同士は戦わずに相手の奴隷兵のみを倒している。相手を倒すつもりなら強力なドワーフ同士が戦って決着を付けた方が早いし、犠牲も減る。しかし現状は真逆だ。つまりドワーフ同士で戦うよりも奴隷兵を使い潰した方がドワーフにとって損失が少ないのだろう。


 マサモリは戦いを眺めていたがすぐに気が滅入ってきたので見るのを止めた。





 エルフの森から速達が届いた。マサモリは超大陸に沸いた強力な魔物化個体にどう対応すべきか書いてあると思って手紙を開いた。しかし超大陸の事はほとんど書いておらず、シュドラの細胞に関しての記述が小さい文字でびっしりと書かれていた。


 強力な魔物化個体については最後の方に、倒さないと超大陸が滅びる、気が向いた時に排除してと書いてあった。そして手紙の大半を使ってマサモリの帰還を望む内容の文章が切々と書かれている。手紙を読んで、とりあえず一回エルフの森に戻ろうとマサモリは決めた。



 マサモリは真夜中にゴーレムから回収した結晶を大量に詰め込んだ結界で空高く飛んだ。超大陸の周りを一周して西に行ったのが悟られないように東から大回りでエルフの森へと向かう。追跡者や監視が無いのを確認した後に出島村に降り立った。基本的に超大陸からの移動は出島村を経由するようになっているので出島村の存在は喜ばれている。


マサモリは出島村の前に降り立った。



『殿! お帰りなさいませ!』


 ダンジロウが武者エルフ達と共にマサモリを迎えた。


『ただいま』

『ささっ、今日はもう遅いのでお休みください。荷物は拙者達が運びます』

『ありがとう、よろしく』

『はっ』


 マサモリは久しぶりに出島村の自宅に入った。部屋の中は掃き清められていて塵一つ残っていない。寝巻に着替えて布団に入ると布団から仄かに太陽の匂いがした。暖かい布団に包まるとすぐにマサモリは眠りについた。


 翌朝目が覚めるとマサモリは大きく背伸びをした。超大陸では常にサーモの体で居るので元のサイズに戻って清々しい気分だ。着がえて家を出て深呼吸をする。負の魔素が混じりあった空気をゆっくりと深呼吸する。体が飢えた獣の様に周囲の魔力を取り込んだ。超大陸では高山のように酸素の薄い場所に居るようなものだったので樹海に戻ってきて体が喜んでいるのを感じる。マサモリは食堂へと向かった。


「おはよう」

「おはようございます!」


「あっ! マサモリです!」

「おかえりー」

「ただいま」


 マサモリを見つけたナツメが駆け寄って来た。シラギクがそれに続く。


「ナツメは出島の生活に慣れた?」

「もちろんです! お仕事も完璧です」

「良かったな」


 マサモリがナツメの頭を撫でた。するとナツメは慌てて避けた。


「き、気安く触るなです。まったく、馴れ馴れしいです。あれ……、つい避けてしまったです。やっちまったです」

「ナツメちゃんがマサモリはいつ帰って来るのかって何度も聞いてたんだよー。連絡くらいよこしてよー」


「ごめん。超大陸からじゃ、気楽に手紙を出せなかったんだ」

「そっか。じゃあ、しょうがないね」

「超大陸の話しをするからそれで我慢してくれ」


 マサモリ達は普段よりもゆっくりと朝食を取って、ナツメの仕事を手伝いながら話しを続けた。昼食を取るとマサモリは転移陣でエルフの森へと飛んだ。東京村は軍師によって安全が確認されたので村人達が徐々に帰還している。


 破壊された建物もあったようで現在は復興作業中だ。マサモリは東京村ではなく静岡村へ向かった。シュドラ達の尾が運ばれたのが静岡村にある研究所だからだ。手紙には研究所に来てほしいと熱烈に書かれていた。


 素人のマサモリから見てもシュドラの細胞は貴重だと理解できた。それがどう利用されるか興味があった。マサモリはわくわくしながら研究所に辿り着いた。



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