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マサモリは持っていた魔石を齧って魔力を補給した。それを見たゴーレムが一気に攻勢に移った。ゴーレムの口から緑色の結晶と茶色の結晶が現われ互いにぶつかり合った。風を纏った石弾が雨の様にマサモリに襲い掛かった。マサモリは棍棒を大きく振るって、石弾を衝撃波で迎撃した。
衝撃波を受けた石弾は砕け散った。しかし残った石弾が軌道を修正してマサモリに襲い掛かった。マサモリは結界を張って石弾の雨を受けた。マサモリが石弾を相殺する為に棍棒を振るう。しかし石弾の数は多く、全てを相殺しきれず結界全体を襲った。結界は砕かれなかったものの、耐久力が削られた。
するとゴーレムは口を開けたまま次弾を装填した。青と茶色の結晶がぶつかり合って氷を纏った石弾が放たれた。再びマサモリは棍棒を振って衝撃波を放った。今度の攻撃は追尾性は無く、空いた空間からマサモリはゴーレムに突進した。しかし石弾の雨に開いた穴を通り抜ける瞬間に石弾が凍り付いて巨大な氷の塊となった。
マサモリは一瞬で氷の塊に圧し潰された。マサモリは棍棒を振るったが周囲からの氷の圧力に結界が破壊された。しかし振るった棍棒は氷塊に大きなひびを刻んだ。マサモリは氷に圧殺される前に棍棒で氷塊をこじ開けた。
黒と茶色の結晶がぶつかり合うと地面の土棘が黒くなり勢いが増した。そして氷塊から命からがら脱出したマサモリを襲う。ゴーレムは前回の数倍の大きさの黄色の結晶を生み出し破壊した。マサモリは棍棒を投げつけた。しかし雷は巨大で棍棒一つでは受けるのに小さすぎた。しかしそれでも棍棒のお陰で雷の方向が変わって半分が地に落ちた。
マサモリは逸らしきれなかった雷を浴びた。強化魔法をしていても体を一瞬で焦がす様な電流がマサモリの全身を襲った。マサモリは体の痺れを我慢して空にある武器を取ろうと飛び上がろうとした。土棘を足場にしようとした瞬間、マサモリは硬直した。
足元の土棘は鉄の様になり、逸れた雷を吸収して帯電していた。マサモリは体を丸めて結界を張った。土棘に絡めとらて電流を受けているマサモリへゴーレムが真上から両腕を組んで叩き付けた。
そこへ魔石砲弾の雨が降った。
ゴーレムはマサモリと戦う為に土棘は範囲を狭くして密度を高めていた。しかしそれが仇となった。地面からドワーフ達が這い出し、ゴーレムへ魔石砲弾を発射する。奴隷達が落ちている鉱石を拾って地下道を通って撤退した。ゴーレムを囲うドワーフ達の円陣は昨日よりも広くドワーフ達は常に自分が這い出した穴の近くで砲撃している。
ゴーレムの魔力が唸り、黒くなった土棘が波打つように周囲に広がった。ドワーフはすぐに穴に飛び込んだ。ゴーレムが地面に両腕を突き刺す。土棘が穴に入り込みドワーフ達を追った。しかしドワーフ達によって黒くなった土棘の侵入は防がれた。
暫くそのままの姿勢だったゴーレムだが口からくぐもった金切り音が漏れ出た。ゴーレムは両手を引き抜くと口を大きく開けて茶色の結晶を生み出した。しばらくそのままで結晶を巨大化させ。大きくなるとゴーレムは結晶を地面に飛ばした。そして茶色の結晶を両手で地面に叩き付けた。
地面から無数の巨大な針山が生えた。ゴーレムを中心にして周囲に針山が生えていく。生えた針山には地中にいたドワーフや奴隷が串刺しにされている。ドワーフだけならゴーレムの攻撃が波及するよりも早く脱出できたはずだ。しかし先に進んでいた奴隷達は重い鉱石を運んでいたので移動速度は遅く、逃げてきたドワーフは行く手を阻まれた。
結果、生み出された針山によってドワーフ達が移動してきたトンネルの多くが潰された。ゴーレムは両手を組んで天高く掲げると地面を叩き付けた。ゴーレムを中心にして衝撃が走り、地面が大きく揺れた。ゴーレムは何度もそれを繰り返した。
次にゴーレムの体を覆う茶色い結晶が地に落とした。結晶に切れ目が走り、割れた。すると新たなゴーレムが生まれた。ゴーレム達はドワーフの作った穴の上に向かって進んだ。地下では土棘がドワーフを襲い。トンネルの場所に辺りを付けた小型ゴーレムがトンネルを破壊しようと上から攻撃した。小型ゴーレムは人の気配を感じると手を槍の様に変えて地中を貫いた。
ゴーレムは一定間隔で大地を叩いた。ゴーレムの攻撃によって崩壊するトンネルもあったが、地中に隠れた敵を探すのは非常に難しい。ドワーフは土棘の攻撃に耐えながら徐々に後退していった。
ゴーレムはこれ以上の遠距離攻撃を持っていないのか、結晶の再充填がまだなのか分からないがドワーフの相手は土棘と小型ゴーレムに任せたようだ。大地に両手を刺して特に動きが無い。完全に守勢に回ったドワーフを切り崩すには黒く変化した土棘でも力不足だった。ドワーフ達は撤退に成功した。
ゴーレムは自分の体を覆っていた鉱石の結晶が奪われた事に激怒していた。そしてゴーレムは効率的なやり方を捨てた。咆哮をあげると西へ巨体を向けた。そしてのっそりと動き始めた。ゴーレムの動き自体は緩慢だが山ほどある巨体は歩くだけでも一瞬で長距離を移動した。そして地面を片手で叩いた。
するとゴーレムの目の前に針山が生まれた。その中には結晶の欠片が混ざっている。ゴーレムは鉱石に対する嗅覚に優れている。そのうえ、元々自分の体に纏っていた物なので残留魔力から大体の位置を察する事が出来た。ゴーレムは鉱石にかぶり付いた。そして次の鉱石へと向かう。地味だが確実にゴーレムは鉱石を回収していった。
しかしゴーレムは気が付いていなかった。鉱石の多くはゴーレムが戦った周囲に残されていた。ゴーレムがその場を離れないようにしていたのは周囲に多くの結晶が残っていたからだ。残された結晶はゴーレムが移動した隙に奪われた。その事実にゴーレムが気付くのは長時間かけて四散した鉱石を集め終わってからだった。