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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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『ああ!』


 花の様に地に咲いた針山から一瞬にして剣山の様に土棘が湧き出た。無数の土棘はゴーレムの場所を中心として波の様に外側へと波及した。身長の数倍もの高さの土棘にドワーフや奴隷が貫かれた。しかし多くのドワーフはしっかりとした防具を身に纏っていたので無事だった。


 土棘に攻撃される瞬間に強化魔法を使ったので衝撃は受けたが串刺しにはならなかった。串刺しにされたドワーフも頭や心臓を逸れた者は痛みに顔を歪めながらも生き残っている。回避したドワーフは砲撃を続け、奴隷達は串刺しにされたドワーフを救助し始めた。



 指揮官と思わしきドワーフが号令を発した。すると奴隷達が盾だけを持ってゴーレムが居る爆心地へと向かった。その間もドワーフ達は絶えず大砲を撃ち続けた。奴隷達は爆発の衝撃を盾で防ぎながら土棘の森をバラバラになりながらゴーレムへ向かった。そして近づいた者が何かを投擲した。


 魔石砲弾の砲撃のせいで判別は付かないがただの爆発物ではないようだ。超音波の様な、振動の様なものが辺りに響いた。その正体は式神からの情報だけでは判別出来そうにない。



『ボタン、あれはなんだろう?』

『なんでしょうか。 考えられるのは振動系の爆弾ですね。資料で見た事があります』



 魔石砲弾の効果が大きすぎるせいでゴーレムの状態が分からない。現地で観察しないと何が起きているか正確に判断出来ない。しかし変化は突如として現れた。爆発に鉄塊が混じるようになった。鉄は土棘を破壊しながら針山に突き刺さった。上空にも鉄が舞い上がって使い魔の数がまた減った。



『振動弾の様ですね。ただ、飛び散る破片から推測するに鉄系統にしか効いていないようです。ただ、鉄系の結晶は多くありましたからゴーレムの守りも弱体化したでしょう』



 ゴーレムの近くにいた奴隷兵の八割が飛来した鉄塊を受けて死んだ。残りもほとんど動けなくなってしまったようだ。ゴーレムから土棘を発した時と同じ魔力の揺れが起こった。先程の土棘を観測していなければ魔石砲弾のせいで魔力が紛れてしまい判別出来なかっただろう。


 ゴーレムを中心として再び波を打つように土棘から無数の枝が生えた。粗末な装備しかしていなかった奴隷達はあっさりと無数の枝に突き刺されて死んだ。ドワーフ達はそれを確認すると持っていた魔道具を使った。毛細血管の様に生えた枝がドワーフ達を襲う。魔道具が作動すると結界が発生し、土の枝を食い止めた。


 魔道具の故障か、結界が発動しなかったドワーフが枝に貫かれて絶命した。枝を防いだドワーフだったが結界の範囲外は毛細血管の様な土の森で覆われ、空は覆い尽くされた。土の中に埋められたに等しくなったドワーフはすぐさま武器を持って土の枝を切り裂いた。そして土の森林の外へ逃れようとした。


 そこへ再びゴーレムの魔力が解き放たれた。木となり森となった土棘が回転し始めたのだ。土棘同士がぶつかり合って壊れるがそんな事お構いなしの雑な攻撃だった。手練れのドワーフは既に枝を切り払って土の森の外へ出ていたが遅れた者はミキサーにかき混ぜられたかのように結界ごと粉砕された。回転する土棘の森はドワーフ達が居る場所よりも遠くまで広がり続けている。そして土棘の森は中から逃れたドワーフを追う様に高く高く成長した。


 もはや退却は不可能と判断したのかドワーフの指揮官は叫んだ。すると生き残った全てのドワーフがゴーレムへと殺到した。足元から襲い掛かる回転する土棘を物ともせずにドワーフの戦士達はゴーレムへと肉薄した。蠅を払う様にゴーレムの腕が払われた。腕を払っただけで旋風が巻き起こり、触れていないドワーフがゴム鞠の様に吹き飛んだ。


 腕の一振りでゴーレムの周りを覆っていた煙が払われ、ゴーレムの姿が露わになった。

ゴーレムの体からは鉄の結晶だけが剥がれ落ちて付近に散乱している。しかし鉄の結晶があったと思わしき部分には新しい結晶が今も少しずつ生えてきている。ドワーフがそこを狙って身長の倍以上もある巨大な斧を振るった。


 新しく生えてきていた結晶が砕け散ってゴーレムが怒りの咆哮をあげた。ドワーフ達はそれを見ると同じように鉄の結晶が合った部位を攻撃した。ゴーレムの動きが激しさを増した。体に纏わり付く蠅を払う様に両腕を振り回したがドワーフもそれを学んでいてしっかりと回避した。


 ゴーレムが両腕を魔石砲弾で抉れた大地に突き刺した。すると土棘の森は勢いを増してドワーフ達を襲った。土棘を避けながら無防備になったゴーレムを攻撃しようとドワーフ達が殺到する。その時、ゴーレムが大口を開けた。中からは巨大な緑の結晶が飛び出した。そして結晶が爆発すると衝撃波が周囲に広がった。


 真空波を含んだ衝撃波がドワーフを襲った。ドワーフは吹き飛ばされ、今も成長を続ける回転する土棘の森に投げ出された。しかしドワーフは結界を破ろうとする土棘を武器で受け身を取りながら相殺した。体が小さいのはハンデだと思っていたが巨大な武器を持つドワーフは結界内からの相殺に適していた。


 生き残った強者だけあってか結界を壊される事無く、土棘を巨大な武器で上手く捌いている。ドワーフを吹き飛ばしたゴーレムだったが、変わらずに突進してくるドワーフを見て両腕を地面から解放した。ゴーレムはドワーフに完全に翻弄されている。


 ドワーフは結晶の空いた場所を集中的に狙った。ゴーレムも無傷では済まないらしく痛打が加えられる度に苛ついた声をあげた。ドワーフは優勢だが危うくもあった。魔道具に頼っている結界は魔石が切れたら消えるだろうし、魔力の少ないドワーフは長期戦に不向きだ。


 だから遠距離から魔石砲弾で削ったのだろう。しかしゴーレムには余力があり、まだまだ動けそうだ。このままではドワーフの魔力が先に尽きるだろう。しかしドワーフの魔力が尽きる前に場が動いた。ゴーレムが巨躯からは想像できない動きで空へ高く飛び跳ねた。そして大口を真下に向けて赤い結晶を吐き出した。赤い結晶は地に辿り着く前に光を発して砕け散った。そして大地を炎が焼いた。



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