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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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『属性系は事前に分かっていると楽だなあ』


 マサモリは強化魔法をかけてラスターへ切りかかった。ラスターは対応すべく光の結界を張った。マサモリが両方の武器を振りかぶって結界に叩き付けた。ラスターが自身に強化魔法をかけて回転しながら巨大な尾でマサモリの攻撃に合わせた。


 マサモリは吹き飛ばされた。ラスターは素早くマサモリを追撃した。大きな顎を開いてマサモリを一飲みしようとする。マサモリが結界を張って両手の武器でラスターの顎を上下に開くように振るった。勢いののったラスターの攻撃は、マサモリの結界の出力に及ばず逆に吹き飛ばされた。


 折れたドラゴンの牙が何本も舞う。すかさずマサモリがラスターに肉薄した。マサモリは石包丁とエルフ武器に闇を纏わせた。牙の攻撃が万全では無くなったラスターは再び尾を振るった。


 マサモリの結界とラスターの結界がぶつかり合い、互いの攻撃が結界面で火花を散らした。ラスターの結界が破壊され、尾がマサモリの石包丁によって切り捨てられた。しかしマサモリの石包丁は激しく音を立てると衝撃に耐えられず粉々になった。


 折れたドラゴンの牙が生き物の様にマサモリに向かって飛来した。しかしマサモリの結界は牙を易々と跳ね返した。


「蛮族め!」


 ラスターはブレスを放つと、マサモリは漆黒の結界を展開する。その間にラスターの尾が生え変わった。尾は生えたが急速な回復には歪みが出る。尾は先程に比べて硬度が下がっている。ラスターもマサモリの危険性は理解したので、もう尾による攻撃を迂闊にしてくるような事はないだろう。




 魔力が高い者同士の戦いは片方に卓越した火力が無い限り長引く。魔法適性が低い種族は得意属性の魔法以外は使えない場合が多い。しかしエルフや竜人族の様に魔法適正性が高い種族は得意属性以外も難なく使いこなす。


 竜人族は竜化によって強大な力を得るが竜化後は各々の属性が顕著に現れる。魔法適性が高い種族はその弱点を確実に突いてくる。竜化した竜人族が唯一負ける可能性があるのはそういった魔法適性の高い種族なのだ。


 魔法適性が高い種族は誰もが回復魔法を習得している。そうなると致命傷を与えない限り、魔力切れまで戦いが続く。長期戦になると純粋に優れている方が勝つ。戦いの中、相手にあう戦術を用い魔力を消費させる。


 回復魔法が使える相手同士の戦いは、運の要素が少なくなり実力が物を言うようになる。




 ライムは自分に群がるツリーマンと対峙していた。ツリーマンの数人が正面に立ち、その他のツリーマンは遠距離から魔法や矢を放ってくる。正面のツリーマンを倒しても計算されていたかのように別のツリーマンが正面に立つのだ。


 殺しきれなかったツリーマンの傷がすぐ癒されて戦線に復帰してくる。ツリーマンは被害を最小限に抑えてライムの魔力を削り取る事に成功している。すぐに魔力が尽きる程の痛手は受けていないが長引けは不利である。


 ライムはラスターの戦況を一瞥したが状況は芳しくない事を悟った。ラスターが苛立っている。ラスターには小心な所があるとライムだけが気が付いていた。ライムは自分がラスターを助けなければならないと決意し不利な戦況を覆すべく奮闘した。



 ライムが結界を張るとツリーマン達がライムの弱点属性である土魔法や土を纏わせた矢や槍を放ってくる。しかも全周囲からだ。正面方向はブレスや前脚による攻撃で相殺出来るが相殺できない面を狙って結界を削りに来ている。


 正面のツリーマン以外は広く散らばっているので倒そう接近しても蜘蛛の子を散らすように逃げられる。正面には土の鎧を纏ったツリーマンや小さなトレントになったツリーマンが守りを固めてひたすら足止めをしてくる。


 尾による薙ぎ払いが有効的だが正面にダメージを与えられても他の方向から結界へダメージが蓄積されていく。相手が弱ければ尾による振り回しで周囲をカバー出来るのだが、ツリーマンは一人一人が精鋭で雑な攻撃では相殺しきれない。


 獣の正しい狩り方を知っている狩人の動きだ。ライムは背中が冷たくなるのを感じた。正面のツリーマンは死を覚悟しているようで命を惜しんでいない。前衛が命を惜しむようならそこから正面突破をも可能だがその眼には不退転の輝きが宿っている。


 それでもライムはツリーマンの数を減らす為に魔力を惜しみなく使った。ライムを中心として氷山が広がっていく。多くのツリーマンは避けたが体勢を崩したツリーマンも出てくる。ライムはそういったツリーマンに狙いを定めて大きな顎で喰い付いた。


 正面のツリーマンは防御に重点を置いているのでカバーが間に合わない。ツリーマンを噛み殺すとツリーマンが自爆して土の濁流となった。ライムは体内に土の濁流が入るのを防ぐ為に大きく息をはいた。そうして出来た隙に乗じてツリーマンが攻撃を加えてくる。


 ライムの隙が大きかったせいか、多くのツリーマンが近接攻撃を選んだ。このままでは結界が破られると思ったライムは不安定な体勢から群がるツリーマンを尾で薙ぎ払った。しかしそれに合わせて土魔法が放たれ、土魔法と一緒に飛び込んできた前衛のツリーマンが結界面でライムの尾を抑え込んだ。


 土魔法がライムの結界を覆うとライムの結界は耐えきれずに破壊された。その間にツリーマンがライムへ殺到した。ある者は剣で、ある者は異形化した腕で、ある者は獣に変身してライムを攻撃した。ライムの体に痛みが走った。


 ライムは咆哮をあげて自分を再び自分を中心に氷山を出現させた。そしてすぐに結界を張り直す。ライムは急いで解毒魔法を唱えた。体に鈍い痺れが残ったが動きには支障はない。敵の数が多すぎるので誰が毒攻撃をしてきたのか分からなかった。


 一手間違えただけで戦況が一変する状況でもライムは果敢に攻め続けた。少しずつツリーマンの数が減ってきている。それでもライムは気を緩めない。


 ライムはツリーマンの動きからツリーマンがライムに勝てる気でいると判断した。足止めなら遠距離から攻撃していれば良い。しかしツリーマンの動きは真逆で積極的に近接してきて隙あらば攻撃を加えてくる。



 結界は強力だが守る面が広くなると攻撃を回避するのが難しくなる。特にドラゴンに変身した状態では回避が難しい。攻撃の全てを相殺するのが難しいのでどうしても結界が削れてしまう。


 遠距離から攻撃してくるツリーマンの半数以上が腕を木の瘤状にして魔法を打ってくるので見分けがつかない。本来ならば強い敵から排除すべきなのだがそれが非常に分かりにくい。前衛に立つツリーマンは目立っているがその他は誰もが同じに見える。


 群れた相手と戦う場合はそのトップを撃破するのが最短の道だがラスターと戦っているのがこの群れのトップなのだろう。群れのトップが居ない状態でも粘り強く勝利を見据えて戦う様にライムは恐怖を覚えた。



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