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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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「四人で攻城戦をするぞ!」

「よっしゃー! やるぜやるぜー」


 シュドラが言うとゾグルが賛成した。


「本当にやるんですか? 逃げる為の魔力は残しておいてくださいね」

「魔石……」




 シュドラが城壁都市へ向かう騎兵隊に向かって悠然と追撃を始めた。ゾグルも奇声をあげながらそれに続く。マサモリはいの一番に結界を壊さないといけないので急いで二人を追った。マナスは溜息をついて追従した。残されていた大砲が一斉に火を噴いた。


「飛ぶぞ!」


 シュドラは魔石砲弾を避けるように飛び上がると残りの三人も同じように飛んだ。魔石砲弾が着弾した衝撃をマナスの結界は受け止め、それを利用して四人は一気に城壁都市へ吹き飛ばされた。大砲の多くを外に出していた城壁都市はほとんど応戦できない。


 多くの者が攻城戦は終わったものと思い、気が抜けていた。シュドラは力強く肺に空気を吸い込んで、凍った沼地を解凍するように口から炎を吹いた。だが結界で炎は防がれた。しかし広く展開してた事が仇となり魔石砲弾に火が燃え移ってしまった。


 魔石砲弾の誘爆で脆くなった結界にマナスが雷を落とした。水を伝って広範囲に電流が流れ、結界が破壊された。そして残っていた炎と電流が兵を焼いた。


「行け! サーモ」

「おう」


 地面に着地する前にマサモリは吸魔石を城壁都市の結界に打ち込んだ。あっさり結界に穴が空いた。しかしすぐに結界の穴は塞がろうとする。塞がり切る前にマサモリ達は結界ごと体当たりしてラギドレットの結界をこじ開け突入した。


「結界を破壊できた訳じゃないから帰りも穴を開けなくちゃならない。あんまりはしゃぐなよ」

「うおおおお!」


 マサモリの忠告も聞かずにゾグルは一人城門に頭の角を突き立てた。そこへシュドラが燃え盛る両手剣で追撃した。門があっさりとこじ開けられる。



 マサモリは攻城戦するのは良いけど目的はあるのか不安になってきた。


「はは、なんだこれ。攻城戦って数を集めてやるんじゃなかったのか」


 シュドラが楽しそうに周りの兵を十数人纏めて切り払った。


「シュドラ様、素敵!」


 マナスが乗り気ではなかった当初とは違って、シュドラの活躍を見れて大満足のようだ。


 ベヒモス戦とは違ってマサモリ達の間には長閑な空気が漂っている。このような攻城戦ではハーフエルフやエルフを救いだせないのでマサモリにとっては旨味が少ない。突然の事態に何をしていいのか分からない。


「あ、魔石が大量にある匂いがするぞ。ちょっと行ってくる!」


 大量の魔石の気配を感じ取ったマサモリは暴れ回る三人の返事も聞かずに城壁を垂直によじ登った。




 城壁の上には大量の魔石の気配が感じられた。ベヒモスへ攻撃した時の魔石が残っているのだろうとマサモリは推測した。魔石の反応に近づくと腹に魔石を詰められた女エルフが杭に括りつけられている最中だった。それをマサモリ達に打ち込むつもりなのだろう。


 女エルフは怒声を上げて必死に抵抗している。マサモリは視界に入る敵を全て樹にした手で締め上げた。そんなマサモリに女エルフは殺意の籠った眼差しを向けた。女エルフが何か言う前にマサモリは女エルフを石化させた。


 そして巨大化した樹腕に取り込んだ。敵を排除すると、魔石の反応を探知してまだ残っている魔石を貪欲に回収する。魔石を探して散策していると悲鳴があがった。


「ひいいいい」


 悲鳴の主は妖精だ。鳥籠に入れられているがさっきまでは気配が感じられなかった。鳥籠があるのは知っていたが、先程までは確かに鳥籠の中は空だった。相当な隠蔽魔法の使い手か、何かしらの特殊能力があるのかもしれない。


 マサモリは自分が妖精の気配を察知できなかった事に驚き、気を引き締め直そうと思った。


 妖精はしっかりと隠れていたはずなのに、何故かマサモリの方を見て悲鳴をあげて気絶した。マサモリは少し考えたがすぐに納得した。石化したエルフの女を腕に埋め込んでいたからだ。


 マサモリの樹腕からは怒りに満ち満ちた女エルフの石像がはみ出している。黙っていれば見つからなかったのにドジな妖精だなとマサモリは思った。捕まっていて可哀想なので妖精を石にして女エルフと一緒に樹腕に収納した。



 問題なのは残った魔石砲弾だ。魔石砲弾は砲弾用に加工されているので無加工の魔石に比べると魔力を吸収する効率がガタ落ちになってしまう。それに爆発の威力を高める事に重点を置いているので雑に扱うとすぐに爆発してしまう。


 魔石に比べると持ち帰るメリットよりもデメリットの方が目立つ。マサモリは一気に爆発させようかと思った。しかしそれでは芸がない。マサモリは巨腕から枝を生やした。それを魔石砲弾に撃ち込む。


 枝は木になり、魔石砲弾を根で包み込んだ。そしてそのまま急成長し始めた。マサモリは他の魔石砲弾がある場所に向かって枝を放った。枝は矢のように魔石砲弾がある辺りに到達すると枝葉を一斉に生やした。葉がパラシュートの役割をして枝はふわりと着地した。そして一気に根を伸ばした。


 根が魔石砲弾に触れると魔石砲弾の魔力を奪って木は急成長した。城壁上に何本もの木が生えて根が城壁を這う。根は内側から城壁を突き破った。そんな光景が大砲の位置や魔石砲弾が収められている場所で発生している。


 根の繁茂は治まらず、城壁の上から下まで到達すると次に都市内部に伸びた。避難が終わっていない市民が木の根から逃れようとして各所で大混乱が発生している。


 木の根に囚われた人が魔力を吸われてミイラと化した。すると魔力を吸った木は勢いを増した。しかし人も負けていない。徒党を組んで木を燃やし、切り、潰して回っている。逃げ場がないのでみんな必死だ。



 

「魔石を回収してきた」


 マサモリはシュドラ達に合流した。


「これでまだ戦えるな!」


 ゾグルは嬉しそうだ。


「あんた、何それ……」


 マナスがマサモリの樹腕の中に入っている石化したエルフを指さした。


「ほら、いいだろ。エルフ武器だ。エルフは魔力が高いから石にすれば良い武器になるんだ」

「気持ち悪い!」


「妖精もだ」

「もういい! これ以上見せるな!」


 マサモリが石にしたエルフと妖精を見せつけるとマナスは嫌悪を露わにした。


「こう見えて強いんだぞ!」


 こうやって印象付ける事で次からエルフを拾っても違和感が無くなる。マサモリは満足気にエルフ武器を見せびらかした。



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