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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 マサモリが平原を駆けていると都市から大砲が放たれた。一人の人に対する攻撃としては破格すぎる歓迎だ。マサモリには回避するまでも無く大砲の弾は当たらなかった。


 人を狙うには精度が足りなすぎる。しかし次にマサモリへ向けて魔法が放たれた。これは地面を強く踏みして避ける。腕を枝にした事で足だけでは不可能な変則的な移動が可能になっている。逆に二腕歩行でもいいのだが余裕があるので手の内を晒さない。



 今一番重要なのは足場を破壊されない事、足を止めない事だ。ベヒモスに追いつかれたら何をされるか分からない。ベヒモスの近接戦闘はまだ一度も見ていないので未知数だ。無駄にリスクを背負う必要はない。


 だから出来るだけ距離を維持したい。そんな事を考えているマサモリに向かって再び大砲が放たれた。マサモリは楽観視していたが慌てて結界を張った。大砲の弾がマサモリ付近に着弾すると大爆発が巻き起こった。


 まさか個人に対して魔石弾を使うとは思ってもみなかった。マサモリは砲兵の思い切りの良さと判断能力にも驚かされた。しかし広範囲に攻撃する魔石砲弾は強い個には効果が薄い。マサモリは結界を張って大砲と魔法の嵐を走り抜けた。




 マサモリは遂に都市結界の手前に辿り着いた。そして助走をつけて勢い良く地面に潜り込んだ。都市の地下には結界が球形状に形成されている。マサモリは結界には触れずに手前の地面を掘り進んで城壁都市の真下に到達した。そして一息ついた。後はベヒモスの出方次第だ。


 マサモリを直接狙っても良し、城壁都市を狙っても良し。例え、地面が全て抉れても城壁都市自体は健在だろう。地面に潜り込むかもしれないが地面を掘っただけで結界が壊される事は無い。


 水弾で辺り地面が吹き飛ばされても攻撃に耐えられたのなら城壁都市を囲う球形状の結界の形がそのまま残るだろう。城壁都市の下の地面が吹き飛ばされても落ちる時に結界を持ち上げれば着地だって可能だ。


 マサモリはそうなった時の為に素早く逃げる準備をしている。案の定、ベヒモスが魔力を貯めて水弾を解き放った。城壁からはベヒモスの攻撃を相殺する為に魔法や魔石砲弾が放たれた。結界に魔法が当たった衝撃が地中にいるマサモリにも伝わってくる。


 結界に威力を吸収されたお陰でマサモリがいる所まで吹き飛ばされる事にはならなかった。マサモリは潜り込む前に放った式神を通して地上の状態を確認した。城壁都市の手前の地面が大きく抉れている。しかし城壁都市には傷一つない。


 城壁からは止めどなく魔法や魔石砲弾が吐き出され続けている。ベヒモスが大きな動作で大地を踏みしめた。するとベヒモスの体を強化魔法が覆った。強化状態になったベヒモスであったが、さすがに魔石砲弾の攻撃には痛みを感じるらしい。


 怒り狂ったベヒモスが今度は大砲へと水弾を放った。水弾が大きすぎて何処を対象にしているか分かりにくいが大砲への敵愾心を持ったのは確実だ。ベヒモスが溜めに入った時点で城壁からの攻撃は一旦停止した。ベヒモスの攻撃に合わせる為に魔法使い達は魔力を練り込んだ。


 ベヒモスが水弾を吐き出すような体勢になった時、待ち構えていた砲弾と魔法が放たれた。今度は結界による守りと内側からの攻撃による力が合わさって完全にベヒモスの水弾の威力を相殺した。魔法は相殺されたが魔石砲弾の衝撃はベヒモスの方へと向かった。


 直撃弾に比べると全く痛痒はないようだが、水弾を完全に打ち消されたのはベヒモスのプライドを傷付けたようだ。普通の町なら城壁から放たれた魔石砲弾の攻撃は結界の外に出てしまうし、城門に近付かれ過ぎると大砲が当たらない。


 しかしラギドレットでは大砲の設置位置だけが城壁部より突き出す様な形になっている。そして城壁都市を守る結界は城門から十メートル以上離れた位置に展開されている。


 大砲の配置によって城門への攻撃に合わせて内側から魔石砲弾を撃てるようになっている。その代わり内部に魔石砲弾の衝撃が来るするがそれを計算されたうえで城門が設計されている。




 マサモリは素直に感嘆した。エルフの村で同じ事が起こったらここまで的確に行動は出来ない。マサモリは都市の対応力の高さに空恐ろしさを感じた。彼らがエルフの森に向かってきたら様々な困難を掻い潜って、エルフの喉元に喰らい付いてくるという確信を持った。


 年長者の言う事は全くもって正しかった。マサモリはこのまま暫く静観しようと思った。ベヒモスの興味が都市へ完全に向かうまでは身動きが取れない。本来なら早く逃走したいがベヒモスがマサモリを追いかけてきたら元も子もない。


 マサモリはボタンから受け取った兵糧丸を一つ口に入れた。強化魔法をかけても噛みきれない密度まで圧縮された兵糧丸を口の中で転がす。時間をかけてゆっくりと分解させていく。


 地上では遂にベヒモスがラギドレットの結界まで到達した。眷属化された魔物や魔物人はベヒモスのスピードに着いてこれず、未だに遠く離れた森の中を走っている。ベヒモスが勢いよくラギドレットの結界に体当たりした。一秒に満たない時間で結界は破壊された。


 前半に水弾の衝撃をまともに受けたが良くなかったのだろう。すると城壁の上に居た兵士達は各々を武器を持って素早く次の城壁へと移動を開始した。城壁と城壁の間に通路があり、そこから内側の城壁へと移動していく。大砲は数人が強化魔法を使って持ち込んでいるようだ。


 全員が内側の城壁を移ると通路は落とされた。ベヒモスは結界を破壊した解放感に満たされて手近な建物を手当たり次第に破壊した。ベヒモスは気分良く好き勝手に暴れている。破壊を楽しんでいたベヒモスであったがふと見ると、さらに内側に新しい結界がある事に気が付いた。


 ベヒモスが内側の結界に気が付いたのに合わせて城壁から攻撃が始まった。魔石砲弾がベヒモスに着弾して大爆発を起こした。外の城壁と内の城壁に挟まれ、一種の閉鎖空間が出来あがっている。爆発の衝撃が行き場を失い空へと駆けあがった。




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