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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 各村の援助もあって予定通り以上に準備は整った。出島予定地へ向かう前日にマサモリはヒデヤスから呼び出しを受けた。


「マサモリ、彼らがお前の家臣団となる面々だ。本来ならお前が八十歳になるまでに自分で揃えなければならないが出島の特殊性を考えてこちらで用意した。彼らは出島を専任で任せる事になっているのでお前が望むなら自分で新しく家臣団を作っても良い。将来的には東京村を継がなければならない事もしっかり言い含めてあるぞ」



「拙者は田所弾次郎。殿の護衛と村の警備を担当します。今日から武士エルフです」


 棍棒の様なさすまたを持った男が歩み出た。顔は大きく四角い形をしている。黒髪をさっぱりと五分刈りにしていて目は顔の大きさに比べると小さい。


 岩のような重厚感のある体つきをしている。肩には白い大きな綿の玉があり、彼の出で立ちには少々合っていない


「……私はスッパ霧隠牡丹。忍者エルフです」


 先程の男とは対照的にすらりとした佇まいをした忍び装束の女は目の部分以外は忍び装束で隠されている。魔力をしっかり覚えないと次に会っても誰だか判別がつかなくなるだろう。


「えっ、ボタン殿!?」


 ダンジロウがさっきまでの仰々しい雰囲気を霧散させて驚いた。牡丹は恐縮してさらに頭を下げた。


「うぉっほん!」


 ヒデヤスがわざとらしい咳をしてダンジロウを見つめた。


「はい。お恥ずかしい話しになりますが……。私が浪人だった頃、夜露を凌ぐ為に傘張りをしてまして、ボタン殿はその時の傘張り仲間でございます」

「忍びは常に素性を隠していますが故に」

「なるほど」


「我はスキマ吉備佐備丸。最良の軍師エルフだ。我が計略は完全無欠。我自身にも全く理解できない深淵の力を一時お前達に貸してやろう」


 子供より少し高い程度の背丈でゆったりとした着物を着ている。着物は地味だが素材は良い物を使っている。腕を組んでいかにも生意気そうにしている白髪の青年だ。


「私は源エルダー白川真守。若輩者だけどよろしく」


「御意!」

「はっ」

「うむ」


「家臣ではないが長老族からの見学者というか助っ人だ。入ってくれ」


「私は藤原エルダー上杉白菊よ。みんな、よろしく!」


 赤色の髪をしたショートヘアの女の子が入室してきた。他の三人が仕事着なら彼女は完全に普段着だ。マサモリは片手を上げた。するとシラギクはステップで近付いてきて二人はハイタッチを決めた。


「イェーイ、この前ぶりー」

「この前ぶりー」


 長老族会議の時に出島村の手伝いを志願してくれたのがシラギクだった。


「ワクワクして眠れなかったよー」

「俺はしっかり眠れたぜ。それにしてもシラギクが来てくれて嬉しいよ」


「うんうん。私もあのクズよりマサモリが村長になってくれて良かったよー。あいつグチグチ、グズグズで面倒くさいんだよねー」

「いつもあんな感じなの?」

「そうそう」

「へー」


 シラギク以外は形だけとはいえ家臣団になる。だからしっかりとした格式を整えるべきだとヒデヤスは思っていた。しかしマサモリからの提案でかなり砕けた顔合わせになったがこれはこれで良かったのかもしれないとヒデヤスは思った。


「見ての通り、今回の家臣団は若者揃いだ。超大陸の人が居るのを怖がって年寄りはさっぱり寄り付かなったが次世代を築き上げるのは君達の様な若者だと思っている。失敗しても責任は私が取るから存分に力を発揮してくれ」

「「「はい!」」」


 ヒデヤスは後は若い人にまかせてと言いながら退出した。ダンジロウはボタンの方をチラチラと見ているが上手く切り出せない模様だ。


「我が居るからには大船に乗ったつもりでいるが良い」

「軍師だ。初めて見た」

「私も!」


 子供組がサビマルに詰め寄った。サビマルは迷惑そうな振りをしながらも持っていた特大扇子を広げて口元を隠した。


「伝説の軍師みたいだ」

「なんかやって。なんかやってー」

「ふん、軍師の計略は値千金。そう易々と披露されるものではない」


「がっくし」


「ふん、しょうがないな。子供だし簡単な成長指針で良いか」

「やった」

「わーい」


「むむっ。マサモリ、お前は護る力は強いが戦う力は弱い。戦う力が今後必要になってくるだろう。シラギクはそのまま長所を伸ばすと良い」

「おー、ありがとう」

「私は長老族なのに結界魔法がへったくそなんだけど、どうすれば上手くなるかな?」


「上手くならん! 諦めろ」

「しょんなー」


「人には人のなすべき事がある。お前に出来る事すればいい」

「良くわからないけど軍師だ」

「結界魔法が上手になりたかったんだけどなー」


「殿とシラギク殿は拙者が守ります故、ご安心召されよ」

「おい、デカブツ。普通に話せ。老害達を思い出して鳥肌が立つわ」


「そうだよ。俺もまだ子供だし気にしなくていいよ」

「殿はなんて優しいんだ。長い浪人生活はこの日の為にあった!」

「殿と呼ばれると気恥ずかしいな」


「マサモリはもう村長なんだから気にしちゃ駄目だよ。村長らしくいこう。本当は別の人が村長になるはずだったんだけど嫌がるからマサモリが村長に立候補したんだよ」

「長老族が一人でも超大陸に攫われると大変な事になりますからね。拙者達のような普通のエルフと違って教育がしっかりしているのでしょう」


「ふん、あんな辺境に行こうとするのは物好き以外には居ない」

「俺が立候補したのは先にシラギクが助っ人に立候補したからだよ。せっかくやる気がある人がいるのに嫌々行くんじゃ面白くないじゃん」


「え、そうだったの? ……あー、私の影響力が出ちゃったかー。マサモリは見所があるね!」

「はいはい」

「それよりダンジロウの肩に着いている綿玉はなんなの? 装飾品?」

「これは拙者の友の(はく)。ハク、殿に挨拶を」


 ダンジロウの肩の綿玉がもぞもぞと動くと小さな嘴が綿の中から出てきた。辺りを見回した後に小さく囀った。


「可愛い! なんの鳥なの?」

「ハクは雀の中でも珍しい魔白雀だ。ハクが小さい時に烏にいじめられていたのを拙者が助けた。以来、友となったのだ」

「触っていい?」

「どうぞ」


 みんなが恐る恐るハクを触った。ふかふかした白い毛玉みたいで可愛い。つぶらな瞳がなんともいえない。


「忍者か。格好いいなー」

「斥候や諜報をお任せください。趣味はドワーフを殺す事です」

「樹海で斥候は最重要だからね。よろしくね」


「殿っ。それではどのドワーフを殺しますか? 私に任せていただければ忍びの技でドワーフを塵にする事も可能です」

「今はまだいいよ。でもドワーフが一人でも野に放たれるとそれだけ木が減る事に……。うう」



 若者達はすぐに打ち解けていった。


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