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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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 マサモリ達一行は町へ通された。町では歓迎の宴が準備されている。


「サーモ様はこちらへ」

「様?」

「ええ、サーモ様の実力なら四天王の地位が相応しいかと」


「新入りが四天王になっていいのか?」

「私達は寄せ集めです。力こそ正義、それが魔人軍のルールです」

「そうか」


 マサモリは町の中心部にある城へと招待された。ゾグルも当然と言った面持ちで着いて来る。マサモリは玉座の間に通された。そこには玉座らしき物に座る魔人王とすぐ横には鹿人の女性が居た。


 魔人王はの体は硬い鱗に覆われ、真っ赤な長髪の間から巨大な尻尾が玉座からはみ出している。魔人王の端整な顔立ちには強者故の余裕の笑みが浮かんでいる。どうやら竜人のようだ。かなり若いようだが体全体から覇気が漲っている。


 蜥蜴人と竜人は見た目は似ているが内包している魔力が違う。竜人は現存する最強の種族だ。高い身体能力に魔力、頭もの良いし寿命は数百歳だ。だがエルフ以上に子供が少ない。個としては最強だが群れとしては規模がとにかく小さい。


 紫色の髪をした鹿人の女の角は牡鹿の角の様に大きく複雑に伸びている。角の部分からは大きな魔力を感じる。美しい顔をしているがその表情には余裕がなく、マサモリを強く睨んでいる。女からは強すぎる香水の匂いが漂っていて、マサモリは気分が悪くなりそうだ。


「サーモ、お前達を歓迎する。もう一度言っておこう。私はシュドラ・ルベール。魔人王だ」

「魔人王と呼べばいいか?」


「そうだな」

「魔人王様と呼びなさい! そもそもお前の様な、ならず者がシュドラ様に仕えようなんて百年早いわ!」

「マナス、良い。ゾグルは俺の事を呼び捨てにしているぞ」


「ゾグルは付き合いが長いし、しょうがないわ。注意しても分からないくらいに頭も悪いしね!」

「そう、褒めるな。ぐはは」


「褒めてない!」

「とにかく、マナス。自己紹介をしてくれ」


「チッ! 私は死風のマナスよ。シュドラ様に危害を加えるようならあなた達の一族ごと滅ぼしてやるわ」

「その気はないから安心しろ。それより俺が四天王とは本気か」


「ああ、本気だ。四天王の入れ替わりは早い。今はマナスとゾグル、そしてサーモしか居ない。一人は欠番だ」

「そうか」


「サーモの望みは一族が暮らす為の町だったな。それだけの実力があればサーモ一人で町は落とせると思うのだがどうだ?」

「町を落とす事は俺にとっては容易い。だが問題がある。丁度良いので俺達の事情を話そう」

「分かった、聞こうじゃないか」


「まずは一番聞きたいであろう、俺達が町を支配しない理由だ。それは俺の体質にある。俺は魔物化特性で定期的に体から吸魔石が生えてくる。除去してもすぐに新しい吸魔石が大量の魔力を消費して生えてくる。俺は魔石無しでは超大陸上で生きられないんだ。だから普段は樹海に居る。樹海なら周囲の負の魔素を取り込めば体から吸われる魔力も少なくて済む」


「町を落とした所で俺は町の守備には回れない。もし守備に回ったとしても大量の魔石が必要だ。精々守れても一回だな。だが守る位なら町を放棄して別に町を落とした方が良い。そっちの方が魔石の消費量が少なくて済む。俺の一族も俺と同様に鍛えているが俺程の実力者はいない。それに人口が少ないので死人は出来るだけ出したくないんだ。俺が望む町はまず樹海に面している事、外敵からの襲撃を受けない為に周囲の町が同じ組織に統一されている事だ。つまり魔人軍の中でも一番大きい組織に入る必要があるのだ」


「だからうちを選んだという事か」

「そうだ。俺が超大陸上で十全に戦う為には魔石が必要だ。小さい組織に居ては魔石なんてまわってこないだろ。だから俺の運用はそちらに任せる。その代わり超大陸上での行動には魔石が必要だ。それ以外は樹海に居なければならない。専属の傭兵と考えてくれ」


「業突く張りな事ね! 恥知らずがっ!」

「だから俺としては強度な結界のある町を攻略する時にだけ呼ぶのを推奨する。俺の吸魔石は結界を破るのに相性が良い。試してみるか」


「いいわよ! お前に私の結界が破れるかな!」


 マナスの角が眩く光った。すると角を触媒にして結界が張られた。かなりの強度を持った結界だ。それを瞬時に展開できるマナスは相当の実力者なのだろう。


「いくぞ」


 マサモリは体内に埋もれていた吸魔石を飛ばした。しかし結界は砕けない。


「ほらね、この程度よ。全く、口だけは達者で困るわ」


 マサモリはもう一つ吸魔石を飛ばした。やはり結界は砕けない。マサモリは追加で吸魔石を飛ばした。結界とぶつかっている吸魔石の位置が三角形になった瞬間に結界があっさりと砕かれた。


「はぁ!? 嘘でしょ」

「ぐはは。あれだけ威勢の良い事を言っておいてあっさりと砕かれおったわ。ぐは、ぐはは」


「ゾグルは黙れ!」

「俺の特技は結界壊しだ。だが都市全体の結界を砕ける訳ではない。通路を開ける程度だ。そこで契約だ。魔石が支払われる限りはいくらでも結界に穴を開けてやろう。ただし、俺と一族は戦闘には参加しない。結界に開けた孔の維持と守備で手一杯だからだ」


「はぁ!? 戦う気がないなら帰れよ!」

「これは驚いたな」


「俺が活動出来るだけの魔石があれば、戦闘にも参加する。結界に孔だけ開けて退路を確保しないで戦うのなら参加するつもりはない。結界石を取り除いて町を守る結界が壊れた後なら問題なく参戦しよう。とにかく俺と一族は常にセットで行動する」


「なるほどな」

「我儘ばっかり言ってじゃねーよ!」


「物事には相性がある。俺は燃費が悪い分、結界にだけは強い。要するに傭兵契約だ。魔石を対価に結界を壊す。俺をどう使うかは魔人王次第だ」

「なるほど、心強いな」


「出番が来るまではとりあえず汚染されてない食い物があれば良い。魔人王、それで良いか?」

「ああ、今後ともよろしく」

「よろしく頼むぞ、魔人王」


「きーっ!」

「俺もよろしく頼むぜ」

「ゾグルもよろしくな」


 マサモリは握手を交わすと玉座の間を後にした。マナスだけは怒り心頭で握手どころではなかった。


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