表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
103/211

103

 マサモリ達が出島村に戻って数か月が経った。ヒデヤスから定期的に連絡があるが向こうは星外生物の駆除に手を焼いているそうだ。未だに星外生物を見つける術が見つかっていない。


 今は星外生物の外殻を置いて罠に張る方法がとられている。寄生生物の方も外殻には反応するので少しずつだが駆除は進んでいる。しかし超大陸は広く、星外生物がどれだけ広まっているかも分からない。


 地味で根気がいる作業になっている。超大陸では、星外生物が降りた場所の生物がほとんど死滅しており様々な弊害が生まれていた。食料となる動物の枯渇、人の減少により活発になる魔物の動き、外敵となる生物が死んだ事で大量発生する小型動物、生物。


 頻度は今までよりも圧倒的に減少したが一夜で町の住民が消える事件も時折発生している。超大陸は混迷の一途を辿っている。



 マサモリとシラギクは逆立ちをしながら訓練場で走り込みをしている。重量術の訓練だ。武者エルフ達も重量術は修めているがマサモリ達へ重量術を教える事は禁じられていた。


 重量術の基本だけで十分という面もあるし、二人の可能性を伸ばす為でもある。二人は自ら重量術の訓練を考え、技術を進歩させる。人に習ったものは軽い。自分で見つけた真理こそ絶対のものとなる。



 逆立ち走りが終わると二人は向き合って組手を始めた。無強化の状態から、強化魔法を使う。そして最終的には結界装甲を纏った。今まではマサモリが常に負けていた。


 その差は思ったよりも大きく実力で言うとシラギクはマサモリよりも一枚上手だった。しかし今では結界装甲を纏った時に限りマサモリが優勢である。


 二人は結界装甲を纏って向き合った。一礼すると二人は一瞬で間合いを詰めた。マサモリがシラギクに掌底を放った。シラギクは回避しながら正拳突きを放つ。


 回避したはずのマサモリの掌底が空中で爆発するような衝撃を発した。シラギクはほんの少し体勢を崩した。正拳突きの軸がぶれて本来の威力が発揮できず、マサモリの結界装甲に弾かれた。


 マサモリは掌底を放った手を引き戻しながら反対の手で再び攻撃した。シラギクがそれを受ける。結界同士がぶつかり合って火花を散らした。


 シラギクは両手を使って攻撃を防ぎ、踏み込んでミドルキックを放った。マサモリは片手でシラギクのミドルキックを防いで残りの手でその衝撃を利用して抜き手を放った。マサモリの抜き手がシラギクの結界を貫いた。


「あー、また負けた」

「腕が痛すぎる。まだ痺れてるよ。実戦だったら俺の負けだった」


「くそー、超大陸から帰ってきて以来負け越しだあ。マサモリ、私達が寄生生物と戦っていた時の事を本当に全部話したよね? なんかすごい情報を隠し持ってないよね?」


「全部話したって。今だって結界装甲で自分に重さをかけてそれを重量術として使っただけだよ。最後はシラギクの蹴りの力を利用したけどさ」


「うーん、そうなんだよねえ。同じ事をやっていてもマサモリの方が結界の操作は上手い」

「体術やら反応速度、センスはシラギクの方が上だよ。後、俺の場合は迂闊に足技を使わないからってのもある」


「あー、そうだね」

「蹴り技って威力は高いけど足が地面を離れると重量術がやりにくくなっちゃうんだよね。だからどちらかと言うと俺の戦い方はシラギクの蹴り待ちでもある。そうすれば蹴りの後に確実に隙が出来るからね。だから訓練としてはシラギクが正しいよ。このまま蹴りを封印していると戦い方が狭まってくる。良くない傾向だ」


「うーん、でもなー」

「というよりも俺達の今の段階って所詮、重量術初級編なんだよね。結局人の体の動きに縛られている。次の段階に行きたいけど突破口が見当たらない」


「頭で考えるのは苦手だよー。重力は常に掛かっているから新しい動きを閃く事があるけど重さが色々な向きにかけられるって突然言われても困っちゃうー」


「逆立ちの訓練はどうだと思う? 俺は意味があると思うけどさ」

「効果はあると思う。でも使いこなせるかと言われると難しい」


「もっと訓練が必要かあ」

「そうだね。でも最近、逆立ちをやっていたお陰で手の踏み込みが少し見えてきた。普段は足で踏み込んでいるけど手で踏み込む感覚が分かってきた」


「俺はやってるけど感覚はまだ朧気だなあ。ただ意味はあると思う」

「うんうん。色々と試してみよう」



 今までは力の方向は常に攻撃方向に向かっていた。魔法を攻撃に使う場合、相手に向かって放つ。手に魔力を貯めて相手に触った瞬間に解放する。しかし重量術は違う。


 重力方向の力を増やして攻撃力を上げる。攻撃方向とは別の向きに力をかけて攻撃方向へと収束させる。簡単に言うと非効率的なのだ。


 人が殴る力を第一の力と例えると殴る時に魔法で攻撃するのが第二の力。そして重力を増やすのが第三の力。


 今までは第一と第二の力を使っていた。それに第三の力が加わる事で新しい力の流れを追加できる。例えて考えると余計に頭が混乱してくる。


 要するに今までは不合理だと思っていた行動を合理的なものに変えられる可能性がある。各々の生物が自分の体にあった合理で動く。ならば動物の体の構造を模せばその生物の合理を得られるのではないか。



 エルフの森の拳法は空手や柔術、合気道等だ。超大陸の拳法には動物や昆虫に模したものがある。エルフの森は普通の拳法と合気道のような力の流れを制御する拳法がある。


 逆に超大陸では普通の拳法と動物の動きを模したものがある。合気道等が内的だとすると超大陸の動物を模した拳法は外的である。同じ拳法でも根幹が違ってくるのは面白い。


 エルフは外的な力ではなく、内的な力の流れに注視したのだろう。だからこそエルフは重量術を見つけられたのかもしれない。


 何かの参考になるかもしれないので今度動物の動きを観察してみよう。マサモリはそう思った。


「駄目だ。思いつかない。とにかく今は修行するしかない」

「そうだね! 私はその方があってるわ」


 二人は試行錯誤しながら訓練を続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ