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絶対鎖国国家エルフの森  作者: 及川 正樹
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「本当にあれで良かったのだろうか」

「終わった事を悔いてもしょうがない。超大陸の人間が攻めてくると考えてエルフの森の防備を整えようぞ」


「今回の黒船が再び来たら村長級が最低でも三人は必要だぞ。ただでさえ少ない長老族を千葉村に配置しなくてはならない」

「東側は戦闘になる危険性が高い。迎撃用の村長級は西から出してもらおう」


「ゴーレムの増産と長老級の派遣は決定としよう」

「いや、待て。今回黒船と対面したのは長老族とはいえ童だったと聞いておるぞ。本当に長老族が三人も必要なのか?」


「はぁ!? うちのマサモリが弱かったというのか。マサモリは若いが結界魔法は既に一人前だぞ!」

「まあまあ、東京の。わしも後からマサモリ君の結界を確認したが確かに村長級だった。彼は若いのによくやった」


「当たり前だろぉがぁ。はぁ、年寄りは頭も固いし、人の批判しかしないよな。人が減るのも良くわかるよ」

「き、貴様。ちょっと人口が多いからって調子に乗るなよ」


「黒船については聞いただけでも異常な結界出力だった。あれと同等の船があるか早急に調べねばならん。密偵を出したからその内詳細が分かるだろう」


「今回の件で迷いの結界が万能ではない事がわかった。それをどうするかだな。後は捕虜をどうするかだ」


「うちには絶対置かせないぞ」

「うちも断固拒否だ!」

「けがらわしいわ」

「全部破壊してしまえ」


「エルフだったらそのまま石にしておいても平気だが人は石にしすぎるとすぐ朽ちる。解呪しなければ死んでしまうな。それに試したい事もある」

「この中で超大陸の人間を収容しても良いという者はいるか? もちろんしっかりと物資は渡す」


「……」

「まあ、おらんわな」

「となると今は使われていない離島に村を作ってそこに隔離するしかない」


「出来るだけエルフの森から離れていた方が良いな」

「それについてはうちの管轄だった小笠原村を提供しよう。エルフの森から離れているし東側だから超大陸にも近い」


「おお、確か小笠原村なら相当遠くだったはずだ」

「ありがたい」


「小笠原村は東京村の管轄だから分ける意味でも名前を変えた方がいいな」

「別に変えなくていいのでは?」


「何かあった時に東京村の責任にされても困る。心機一転の気持ちで村の名前は改名しよう」

「なるほど」


「そうすると名前は何が良い?」

「外村とかどうじゃ」

「贄村」

「寂村」

「離島村」


「なんか不吉な名前ばかりじゃの」

「小笠原村の発見者の出島氏から取って出島村というのは?」


「うーん、他には?」

「まかせる」

「いいよ」


「それではとりあえず出島で。暫定なので新村長が訂正しても良いとする」

「それがいい」

「問題は誰が村長になるかだ」


「うちは場所を提供したから村長候補は出さんぞ」

「仕方あるまい」

「誰ぞ、希望者はおらんのか?」


「超大陸の人間なんぞと一緒に居たらショック死してしまうわい」

「ボケ老人には良い気付け薬になるんじゃないのか?」


「準備に時間もかかるし早急に決めねばならない。何か良い方法はないか?」

「当代村長から選ぶのは無理じゃろうから若いのから選ぶか」


「そうだそうだ」

「名案じゃ!」

「天才だ」

「別に当代村長がやってもいいんだぞ?」


「あーあ、村長の仕事が忙しくて無理じゃわ。辛いわー。余裕があったらやっても良かったんだけどなあ」

「若いのに継がせて、やれよ」

「ごめんなさい。死んでも嫌だ」


「おいおい、このままだと若いのを生贄に捧げるようなものだぞ。誰かやれよ」

「はあ、情けない。若いのに任せるが金と物はしっかり出してもらうぞ?」

「しゃあないか」


「私の村は貧しいから手心を加えてくれ」

「お前が行けばしっかり援助してやるぞ」

「しっかり払います!」


「文句があるなら村長をやってもらうぞ。何か異論は?」

「ないが、さすがに結界を満足に使えない子供にやらせる訳にはいかない。そうするとほとんど候補が絞られてくるぞ」


「そうだな。仕方ないとはいえ不憫だ。ならば任期制にするか? 今は子供でも時間が経てば村長も務まるだろう。自分の村を継ぐ前の練習台だ」

「最終的には結界維持の為だけに数か月に一度行く程度にしよう。ただでさえ後継者不足なんだ。エルフの森の護りを固めるのが優先だ」


「そうだな。最初の村長は人を送り返すまでやるがそれ以降は維持か放棄かまた考えよう。維持するにしても最小限の労力で維持する事にしよう」

「数年の辛抱ならしょうがないな」


「若い時の苦労は買ってでもしろだな。はっはっは。あ、すいません」

「気が引けるが若いのに頼むしかないか……」


 長老族の若者達は別室で集まっていた。マサモリは黒船の説明等を説明していたので彼らと合流するのは最後となった。ついでに母のアオイから頼まれたお茶やお菓子を運んでいたので余計に時間がかかった。


 マサモリが別室に入ってお茶とお菓子を配り終える。


「俺は東京村の源エルダー白川真守。みんなよろしく」

「お前が黒船とやり合ったのか」


「そうだよ」

「話しを聞かせてくれ」

「美しい予が何故美しいか美しく聞かせてやる」

「俺も聞きたいぜ!」


「いいよ」

「ちょっと、男子ー。まずは自己紹介からでしょ。私達は分かってもマサモリ君が私達が誰だかわからないじゃないの」

「出たよ、仕切り屋が」

「あぁん?」


 長老族の若いエルフは十年程度に一回の顔合わせの場が設けられている。顔合わせ兼将来の配偶者探しの場となっている。マサモリは以前も参加していたが幼すぎた事もあって全然覚えていない。正直誰が誰だかさっぱりなのだ。


 若いエルフと言っても年齢は十歳から五百歳位の間だ。若いというよりまだ村長になってない村長候補といった方が正しい。長老族のエルフは減少する一方でこの場にいるエルフは二十人に満たない。


 四十七村でそれであるから後継者問題は村の存続に関わる重大な案件なのだ。


 長老族は長老族同士でしか結婚しないのでこの場にいる誰かと結婚する事になる。そう考えるとマサモリはなにか妙な感じがしてならない。



 部屋の戸が数回叩かれた。


「どうぞ」

「邪魔するぞ。お前達には超大陸の人間を収容する為の村の村長をやって貰おうと思う。一時的なものじゃから自分の村を継げなくなるという事はないから安心せよ」


「え!? どうしてそんなにことに……」

「怖いよ、おっかあ」

「嫌だああああああ。なんか当たりそうな気がするううう。わらわ帰りたいーー」 


「こ、殺されるう」

「なんで予は美しすぎるんだ……」

「石にするのが駄目なら氷漬けにしておけば良い」

「寝かせておいて栄養剤だけ打ってればいいじゃん」


「駄目じゃ」

「面倒だ」


 名前が順に呼ばれていった。


「あれ? 俺は?」

「マサモリ君は今回戦ったし村の土地を東京村から出してもらう事になったので免除じゃ」

「そうかー」


「私も呼ばれなかった。結界魔法が下手くそだから……。けど私も手伝う! このまま指をくわえて見ているのは女が廃るわ!」

「おお、ありがたい。頼んだぞ」

「まっかせて」


「では今呼ばれた者でくじ引きじゃ」


 村長候補は十数名だ。みんながくじの端を掴んだ。


「誰が当たっても恨みっこなしじゃぞ?」

「おう!」

「駄目だ、駄目だ」

「神様、お願いします」


「「せーのっ!」」


「ハズレだ!」

「セーフ!」

「美しい引きだ」

「嘘、わらわが。そんな、馬鹿な! あああ当たったあああ。ごあああああ、ぎいいいい、ごぼぼぼ」


 当たりを引いた少女が悲鳴をあげた後に泡を吹いて倒れた。


「せい!」


 だがすぐに息を吹き返された。


「どうじでわらわばあ、いづもごんなあ」

「泡を吹くとかないわ……」

「信じられないー」

「女を捨ててる」

「驚きすぎだろ」

「くじ引きで決まったんだし頑張れよ」


「おどうどがまだぢっじゃいんだぁ。ばなれだぐなびよー。がばびびおどうどなんどぁー」

「なんて家族思いなんだ! しゃあないなぁ、俺がやってやるよ!」


「えっ、本当? まじで? よろしゃすっす! ははーん、わらわに惚れたな、マセガキがっ」

「ちょっと待って! うちのクソ姉の戯言は聞かなくていいですよ。いつも僕に意地悪ばかりしてくるから島流しにあえばいい」


「じょんにゃー、おどうどよー。うぞをじゅがなびでえ」

「マサモリ君、無理しなくていいぞ。こやつは甘ったれだから喝を入れるには良い機会じゃ」


「せっかく新しい村を作るのに嫌々やらせるのもなんか悲しいし、俺がやるよ! 面白そうだしね」

「マサモリ君……。わかった、君みたいな子が村長になってくれてわしも嬉しいよ。わしらが出来る事は何でもするから村をお願いするよ」


「はい!」

「かっけー」

「やるじゃん! そうだよな、楽しまないとな。このクズとは大違いだ」

「すげー。超大陸の人間が怖くないのか?」


「もうー、このクズ! 本当はあんたが選ばれたんだから手伝いに行きなさいよ!」

「はぁ? なんでわらわが島流しされなきゃらないの? 服が汚れるでしょ。あんな所に行きたがる奴は頭が可笑しいわ」


「おいぃ! クズゥ?」

「止めてよ。クズっていうの。それよりわらわー、五高男募集中なの。そんな男が土下座して頼むんだったらー、結婚を考えてあげてもいいわ」


「七高皇帝たる予はなんて美しいのだ。存在自体が素晴らしすぎて罪なのかもしれん」

「このクズ姉がすいません! 本当に本当にすいません!」


「五高男ってどういう意味なの?」

「高学歴、高収入、高身長、高魔力、高戦闘力よ。田舎娘にはわからなかったかしらん。そんな男にはエルフの森の宝石たるわらわが結婚してあげるわ。跪きなさい!」


「長老族の恥」

「こいつは一生結婚できないだろうな」

「可哀想」

「見ているこっちが辛くなる」

「哀れな女よ」


「ごほん、そんな事より私が手伝ってあげるから大船に乗った気持ちでいていいよ。ふふふ、なんか面白くなってきたな」

「他のみんなも何時でも来てよ。せっかく新しい事をするんだから楽しもうぜ」


「村が安定したら見に行ってみたいかも」

「俺も行くぜ。じゃがいもを死ぬほど植えてやる!」

「うちの村には近くに樹海がないから狩りに行きたいな。腕が鳴るぜ」

「えっ、何この空気。みんな馬っ鹿じゃないの?」


「「黙れ」」



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