68話目 女王VS女王
「ははは、次はキチンと撮影させてもらうよ、シャボン」
「う、ウォーケイ……」
アチャ~。銀ちゃん、報告しないの怒ってたわ~。
「ゴメンってば~」
「大丈夫だよ」
ニッコリ微笑。うう~、キツネの細目は強者感があるわね。シャボン、覚えた……。
んで。
「修行よ!」
地下を借りて、5m、10mの距離を体に叩き込んだ。ってかココ、同心円状に距離が出るし。スゴいわね。
「シャボンは範囲呪文の対策かな」
「ええ。女王様の【絶滅】をしのぐために、2体ずつ分けようと思って」
「だけど、イシュタールは物理攻撃もするよ」
銀ちゃんは、じゃらら~っと山盛りのサイコロを出した。
「これをブツけて倒すかな。ハチのライフは1点だから」
「うぐぅ」
どこぞの外道社長みたいな物量攻撃ね。サイは投げられてハチの負け。
「でも銀ちゃん、これって言ってみれば小石よね。ダメージ入るの?」
「ある程度の勢いは必要だけどね」
――おっ。
「んじゃ、こっちも同じこと出来る? たとえば、ダイス300個持って、『鬼は~外!』って思いっきりブツければ……!」
「1秒間に、同一攻撃は4つまでだよ」
え゛。
「それ以上は?」
「全部0点」
ぷかー。(《天使の羽》を使って漂う)
「ん、んでもサ……。4点入るなら、あたしも狙うケド?」
「ダイスのような小物でプレイヤーにダメージを与えるには、クリティカルが必要だね。まとめて投げても、認定されないよ」
ぷかー。(今度はあお向けで漂う)
社長め~、やっぱ作り込んでたわ~……ムダに!
「ンじゃ、【巨大な盾】が剥がされたのは?」
「盾の強度はユニット基準だから、判定が緩いのさ」
う~~~む。タイガさんが食らった一休さんモードね。ジリ貧の構図、変わらず。
「銀ちゃん。あたし、いま青は【巨大な盾】ダケなんだけど……もしかして、要らない?」
「100連勝したイシュタールが、万全な対策をしてると思うなら、【魔力の盾】ダケで十分かな」
うぼぁー(断末魔)。してるに決まってるじゃないの、うがあー。
「あー、やっぱ1人だとデッキ構築も対戦も限界あるわね。ちょっと銀ちゃん、対戦相手になってー」
「分かったよ」
かくして、対イシュタール作戦が始まった。
◇
「ん~、〖迷宮〗で1枠ツブすのを、何とかしたいわ~……」
「それならシャボン、【開始】か【終了】の枠にも呪文を入れられるよ?」
「えぇー、そんなワケないでしょ~……ホントだ!」(泣)
◇
「銀ちゃーん。あたし、【パラメデス】でサイコロを出してる最中に【ゴブリン】召喚できないんだケド、やり方間違ってる?」
「いいや。【パラメデス】は少し特殊だからね。『サイコロを出して、振って出目を確定する』までが呪文なんだ。だから、数字が確定するまでは誰であっても召喚できないよ」
「えー? 今日の鬼六先生は喚んでたわよー?」
「ふむ……マホロバ学園だったかな? なら、特区の権限者モードを使ったか、呪文の【幻覚】を使ったのかもね。授業のために準備をしておいて」
「ん~、演出用にメチャクチャ凝ったってこと?」
「そうだね」
「――あー、『男の世界』うんぬん言ってたし、スッゴイやりそう」
「気になるなら、本人に聞いてみれば?」
「真っ先に思ったんだけど、食いつきがスゴそうで止めたわ」
「ははは」
◇
「んむ~。赤がないから【痛み止め】が入らないわね」
「大丈夫さー、シャボン」
「あれ? また通販番組のノリ?」
「実は銀魔法にも、【鉄の体】っていう呪文があるからね」
「ンまぁ、ステキ!」
「使い勝手は、【痛み止め】とおんなじさ!」
「きゃあ、スゴ~い!」
「……」
「……あの、さぁ」
「うん」
「おっちゃんいないと、ムナしいダケだわ……」
「夜のテンションは、怖いね……」
◇
◇
◇
「ふー、大体調整できたわ。銀ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」
喫茶店からプライベートルームに戻ったあたしは、なおもメリッサ・シスターズの操作を体に覚えさせていった。
「【機動】込みなら、2人1組の攻撃は脅威よ」
あとは、自分も動きつつシスターズの操作を行う。うお、やっぱ動きながらはムズいわね、2体で正確に《麻痺》させるのって。
それでも、延々とやってると、わりにコツを掴んできた。
ふふふ……こんなに連続して両腕に刺すとか、あたしゃどこのジャンキーだ。
(よお、シャボン)
あ、おっちゃんだわ。
(はーい、何?)
(いや……お前、女王が来たら対戦するって言ってたんだろ?)
(うん)
(来たぞ)
(え!?)
速っ! ――じゃない、あたしの時間感覚がマヒってるんだわ! うあ~、もう20時……って丸一日じゃん! 単一動作にハマるの、怖っ! ジャンキーモード、怖っ!!
(スグ行くわ!)
ふー……だけど、没頭したおかげで、修行はバッチリよ。《不眠》パワーの恩恵を活かして、操作感を覚えたままなだれこめる!
あたしは【開始】して、カルイザワビルの地下へと向かった。
「うわ、スッゴい行列!」
もしかしてコレ、戦う順番待ち!?
「こっちだよ、シャボン」
あ、銀ちゃんが並んでる。アイスも。
「えっ、2人とも戦うの?」
「ははは。いいや、私たちはシャボンの代理で並んでたダケだよ」
「ったく、なんで俺まで……」
ボヤくおっちゃん。くすくす、たしかに1人で良かったものね。
あたしは、そんな人魚ちゃんの肩をぽんぽんと叩いた。
「大丈夫よ。今日こそ、悪魔退治パート2を見せてあげるわ」
「おう、楽しみだ」
おっちゃん達とあたしは入れ替わった。そして、列に並びつつ大画面をウォッチ。
2日目のイシュタール女王は、ポケットのたくさんついたベストを着用してた。うわー、ゴリゴリの本気モードだわー。
もちろん、チャレンジャーのみんなも、戦法を練ってきてるのが分かった。
「おー、ゾンビデッキだわ」
グールの《麻痺》攻撃に着目ってトコかしら。いい目の付け所ね。
ンでも女王様は、飛んで回避しちゃってた。ん、そりゃそーよ。まあ、ダイスの出目が確定するのは遅くなりそうだけど……なーんて思ってたら。
『ホホホ』
空飛ぶ絨毯をインベントリから出して、そこにコロコロしてた。え~、とってもアラビアン! そんなのアリ~!?
『お主ら、今宵は妾も存分に羽ばたくとしようぞ』
うわー、ヒドい! 初日は超ヨユーだったんじゃない、この悪魔! ――あ、でもあの絨毯、いい材質よね。ギャッベかしら? ペルシャ絨毯って隙間詰まってるから、触り心地よさそ~。
とか思ってるうちに、あたしの番が来た。
うーむ、1人も勝ててないのが不穏だわ。出荷される流れ作業みたいでイヤだけど……うぅん、あたしが初勝利するために、みんな負けてくれたのよ!
「頑張ってね、シャボン」
「ふっ! 見てて銀ちゃん。女王を倒すのは、もう1人の女王よ!」
これで惨敗したら、と~っても恥ずかしいわね。
だから、ゼッタイ負けない!
重厚な扉を押し開けると、そこの地面は、六角形状の石がボコボコと並んでた。
「ホホホ。天使よ、今度は手強そうじゃのお」
「ええ、バッチリ対策してきたわ、悪魔さん」
ランダムで出たフィールドは、「ジャイアンツ・コーズウェイ」だった。へー、世界地図だとドコ……? って、おぉー、イギリスづいてるわねー。
足下の石は少しずつ段差があって、ちょっとしたアスレチックになってた。――ふふふ、なんか蜂の巣みたい。これからの戦いに、とってもふさわしいわ。
あたしは、さりげなく距離を詰めていった。
「ホホホ……お主、領土に【機動】を仕込んでおるな」
「さ~て、何を喚ぶでしょう?」
「フム、巨大ユニットかのお」
またまたぁ、思ってもないクセにー。
――ん。彼我は5mジャスト。ベストなポジを確保したわ。
“Ready,Fight!”
先手必勝!
あたしは、【忘却】を唱えざまレーヴァテインを投げた。
「ホホ」
余裕でかわしたイシュタールは、【祝福】を発動させる。これで次に〖オーメン〗がくれば36点。
「唱えられればね!」
【忘却】の対象は【呪文の達人:黒】!
「さぁ女王様? 黒の魔色は3だと思いましたが、いかが?」
「ホホホ」
女王は、答える代わりに【魔法霧散】を唱えた。はいはい、対象は【忘却】ですよねー。
「戻れ、レーヴァテイン!」
どごぉっと当たるけど、女王様はちょっと揺れるだけ。ちぃっ! でもいいわ。こっちも呪文が発動よ。
「カモン、【メリッサ】!」
あたし自身が距離を詰めつつ、シグマちゃんとタウちゃんも連れて行く。
「おや」
女王様は、長いまつげをピクリとさせた。
「【忘却】を連発かと思ったがのぉ」
「かったるいのは苦手なのよ!」
猛然と襲いかかるけど、女王は《悪魔の翼》で飛んで回避した。スグにインベントリから、空飛ぶ絨毯を展開する。
「ホホ……妾もじゃ」
青い拳を真っ黒に光らせて、〖オーメン〗の体勢に入った。
発動したらアウト……でも、そこよ!
タウちゃんをフェイントにして、シグマちゃんで右肘を刺す!
ピシィ!
クリティカルで《麻痺》が入った。
「なっ……!?」
初めて女王が動揺したけど、立て直しも速い。〖オーメン〗をキャンセルして、右胸のポケットからダイスを出した。くっ……連続で弾いてシグマちゃんとタウちゃんを退治。そのまま左拳を握って、〖オーメン〗の体勢。
「甘い!」
今度はウーちゃん&ファイちゃんコンビで左肘!
ピシィ!
クリティカルで《麻痺》発動。女王はファイティングスタイルだけど、その拳は、開かないと戦えない。
「ふふふ。芝の女王を倒すため、女王バチになってきました!」
「ホホ……魂が昂ぶってきおったわ」




