44話目 顔を作ったらキツネが立った
立ち話もなんだから、一旦戻ることにした。ラビちゃんも、そろそろ【終了】の時間だったしね。
「お姉ちゃん、ありがとう」
「うん。また学園でね」
あたしはラビちゃんをギュッと抱いたあと、バイバイした。あ~、これでまた、次に会うまで頑張れるわ。
そして、E-MIXクンとお話のできそうな手頃なお店を求めて、喫茶「サラマンダーの夜」へと足を運んだのでした。
「来たわよ~」
「おや、シャボン。お早いお帰りだね」
「まーた銀ちゃんだけ? このお店、運営大丈夫?」
「マスターがいないと、どこでも飲める味だからね」
銀狐は銀髪をポリポリかいてた。
「それに、喫茶店で稼いでないから」
「世を忍ぶ仮の姿ってワケね」
対策カード作ってるあたり、本当にカモフラージュっぽいのよね。
銀ちゃんが、E-MIXクンに視線だけ向けた。
「シャボン。彼は?」
「E-MIXクン。けっこー、巻き込まれ体質の主人公属性を持ってる子よ。ね?」
ポンと肩を叩くと、「え、え……はい」とうなずいた。
銀ちゃんが、指パッチンでマホガニーのテーブルセットを出してくれたので、ありがたく座る。
「君たちに、一杯ずつ無料で出すよ。何がいいかな?」
「あたし、カフェラテ」
「ぼ、僕もそれで」
またも指パッチンで、テーブルにカップが。
「銀ちゃん……いいわね、そのワザ。あたしもやっていい?」
「登録してる人ダケに反応するんだ」
うーむ、けっこう残念。――あ、ラテおいしい。
あたしは向かいに座った機械クンを見た。
「ンじゃ、Eクン。話を聞かせて」
「は、はい。分かりました」
E-MIXクンは、所々つっかえつつも、キチンと話してくれた。
彼は、本社ビルにある「冒険者の酒場」で、仲間に入れそうなパーティを探してたんだって。
「それで僕は、ネコミさんのパーティに入れさせてもらったんです」
「さっきの猫ね」
「はい。ですけど、技量がないとかで……」
どよ~んと落ち込んじゃってる。あー、こういうのって、ヘタに「そんなことない」とか慰めても、かえって凹んじゃうのよね。
だから、視点を変える方向でいきましょ。
「Eクンは、盾がうんぬんって言われてたわよね? 後衛だったの?」
「はい。前衛は苦手で。――とくに、海ほたるのダンジョンは、アンデッドが多いですから」
「あー」
墓場から出てきた奴らも、殺人鬼社長のペットだもんね。アンデッドを怖がる前衛とかいたら、キモさを利用して存分に抱きついてきそう。――あるいは、四肢をちぎってブン投げるとかするかも。
Eクンはコクンとラテを飲んだ。
「でも、僕は後衛でも満足に動けなくて……。何度も盾が遅れて、迷惑を……」
「映像とか、撮ってる?」
「え? ――あ、はい。ドローンで撮ってました」
【雄蜂の斥候】を召喚して、空中に映像を出してくれる。――ほおほお、こんなワザも出来るのね。
「あら?」
あたしは首をひねった。
前2、後ろ2の態勢はいいとしましょう。
問題は、E-MIXクンが盾を張ったあと、前の2人が全然踏ん張れてないこと。
「ちょっとー、コレはひどいわ」
「ですよね、僕が盾を張れなかったから……」
「ん~ん、違うの」
あたしは、ホログラムの前衛をデコピンで散らした。
「この子たちが、1秒間に2発以上食らってるのよ」
そう、答えは単純だった。
どんなに多く【巨大な盾】を積んでたとしても、使えるのは1秒に1回。
「だから、おっちゃんレベルの盾張り職人でも、この子たちにはゼッタイ間に合わないわ」
ンまー、呆れた。よく「パーティから抜けてくれ」っとか言ったわね、この子たち。こんなワラみたいな前衛、むしろこっちから願い下げだっての。
「Eクンが悩む必要は全然なかったのよ。――あのね、後衛の盾の強さは、前衛の強さに依存するから。たとえば、前衛がスッゴく強かったら、【巨大な盾】を1回張るだけでも、もっと強くなるでしょ?」
「そ、そうですね。そもそも割れないのに、1発当ててもまた盾を張られたら……」
「でしょ? 逆に、前衛がヘタッピだったら、盾も弱くなるのよ。1回張っても、スグに割られちゃうから」
「は、はい」
Eクンはマジメな顔でうなずいた。
「でも……やっぱり僕は、ヘタクソなんで……」
あー。
――うん。
素直にホメられなかったのは……ごめん、Eクン。
たしかに、少しターゲッティングが遅かった。
ラビちゃんの盾を受けてたから、分かっちゃったわ。
言い淀んでたのを、Eクンは敏感に察知しちゃったみたい。
「ですよね。すみません……。シャボンさんみたいな方のお時間を取らせちゃって……」
「ううん。それは別にいいのよ」
あたしはパンパンと手を叩いた。
「いつだって、これからよ。これから上手くなればいいの」
「はあ」
「コラ、気の抜けた返事をしない。せっかくのいい男が台無しよ?」
「顔は……ほめられても、単にカスタマイズしただけですし……」
あー。VRだもんね、うん。容姿ほめても、どってコトなかったか。
ガタッ!
「ん?」
振り向くと、銀ちゃんが指をプルプルしてる。
「君……カスタマイズしたの?」
え?




