42話目 目の付け所が違います
「――ん?」
骸骨竜は、片目を赤く光らせて、《骨の嵐》を使った。素早く魔法陣から離れると、そのまま神殿の奥へと飛んでいって、祭壇の上で再構築。
えーっと、防御的に使ったってコト? ――あ、ポーズ取ってる。これじゃ本当に、恐竜の骨格標本みたい。
「どういうツモリ……?」
今度は、単発の骨を飛ばしてきた。あらま、そういうワザも出来るの。器用ねえ。
カーン。
すぐにレーヴァテインで弾き飛ばす。
そしたら、次から次へと骨が飛んできた。カンカン弾き飛ばすけど、多分輝きパワーでも大したダメージを与えられない量よね。
弾き飛ばした骨も、ヒュンヒュンとまとわりついて攻撃してくる。茶色は無効だから、完全に消滅させることは出来ないってワケね。
今は、20本ぐらいが波状攻撃を仕掛けてきてた。んー、少しキツくなってきたかしら?
「うぅっ……」
おっと、ラビちゃんがジリジリ食らってる。ん~、ちょっとマズいわね。
「――あ」
違う……これ、大分マズいわ。
あたしは祭壇の骸骨竜を見た。
アイツ、一切動いてない。――ううん、多分、これからも動かない。
魔法陣のほうに来たら、「やられる」って分かったから!
何かしらでおびき寄せない限り、絶対コッチに来ない!
奴はこのまま、あたし達がバテるのを待てばいいのよ。
だって……短期決戦が必要なのは、あたし達ダケなんだから!
「ラビちゃん! あたしが竜を挑発するから、ラビちゃんは、何か変わったコトがあったら教えて!」
「は、はい!」
しまったわ~……社長のペットは、そんなヌルい奴らじゃなかったでしょ!
あたしは羽を広げて骸骨竜に接近した。
「来ちゃいなさいよ、ホネホネちゃん! スッゴい小さな相手に、臆病すぎない? ノミの心臓? ああ、心臓が無かったわねえ!」
近寄ったあたしに《骨の嵐》が来るけど、必死にレーヴァテインで叩き落としていく。
ぐぐっ……なんとか止められてる。けど、ホネホネちゃんが挑発に乗ってこない。ホネだから聞く耳を持たないってワケ? くそぉ、脳みそもないクセに、賢いじゃないの!
(お姉ちゃん)
(なに、ラビちゃん?)
(あの……関係ないかもですけど……)
(大丈夫! 言って!)
(向こうが《骨の嵐》を使ったとき、お姉ちゃんが竜の頭に近いほど、骨の量が多かったんです……)
え?
(あぅ、ご、ごめんなさい。やっぱり気のせいかも……)
(ううん! ありがとう、ラビちゃん! 確かめてみるわ!)
あたしは、竜の頭部へと近付いた。すかさず竜の目が赤く光って、《骨の嵐》が発動。骨がラッシュで襲ってくる。
――たしかに多い、気がするわね。
しばらく、近づいて離れてを繰り返してみる。――うん、ラビちゃんの言う通り、頭蓋骨に近いと、攻撃が強い。
だけど、ソレってどういうコト? たとえば……何か大切なものに近いから、守ろうとして嵐が激しい、とか?
あたしは竜の目を注視した。
あの目……片目だけ光ってるのよね。
カッコつけじゃなくて……もしや、意味がある!?
あたしは猛然と骸骨竜の頭部に飛んでいった。途端に骨が集まって、一斉にあたしをツブしに掛かってくる。
――やっぱり! 相当イヤがってるわ!
かたっぱしから、レーヴァテインでブッ叩く!
「骨の弾幕がスカスカすぎるわよ!」
骨密度、足りてないんじゃない!?
巨大な頭蓋骨まで到達すると、右の眼窩の奥が空洞になってて、そこに赤い球が収まってるのを確認できた。
――コレって、コイツの核ね!
「ラビちゃん! 女神像に魔力を!」
「はい!!」
猛烈に叩きつけてくる骨をガン無視して、あたしは眼窩に手を突っ込んだ。ボウリングほどの核を、ガッとつかむ。
「うりゃー!!」
魔法陣へ向かってバックホーム!
ドンピシャのタイミングで、ラビちゃんが魔力を女神様に補充!
シュワァァー……。
『ガァアアアアアアアアアーーーー!!』
長い断末魔を上げて、骨がバラバラと崩れ落ちていった。やがて、それらも透明になって消え去ると、女神像の前に1枚のカードが現れる。
「ラビちゃん……!」
「シャボンお姉ちゃん……!」
「「やったー!!」」
あたしは、ラビちゃんに飛びつくと、女神像の前で大ハシャギした。
今回倒した、骨のある奴です。
【骸骨竜/Bone Dragon】
レベル7・黒魔法/レジェンドレア
分類:召喚(竜)
攻5/速2/生5
サイズ:大
能力:【骸骨竜】の攻撃力を1減らして、骨を投ばす。骨でのダメージは、【骸骨竜】の攻撃力に等しい。(この能力は1ターンに1回のみである)
能力:4マナで全ての骨を戻す。【骸骨竜】は召喚時のステータスに戻る。
「おおっと、完成したわい。最高傑作のドラゾン君じゃ♪」
――ダ=ダンザ、ドワーフの死霊術師




