25話目 学園へ行こう!
「さて、投稿したよ」
「ありがとう、銀ちゃん」
動画をアップした銀狐と握手して、フレンド登録も行った。
「あ、そうだわ。手っ取り早くここで大金稼げる手段って何かある? eスポーツみたいな」
「デュエル大会とかはあるけど、やっぱり魔法を揃える必要があるね」
「ん~」
強い魔法を手に入れるためには大金がいる。そして、大金を手に入れるためには強い魔法が必要。
「世知辛いわね~」
あたしは、苦笑した銀狐に見送られて、喫茶「サラマンダーの夜」を後にしたのでした。
そしてあたしは、一度カルイザワビルに行ったのち、山形へと向かった。
さくらんぼ狩り? はたまたラ・フランス? ノンノン。
エイホウさんに、VRでも出来るバイトを聞いてやって来たのよ。
「ふふふ……来てあげたわよ、『マホロバ学園』!」
そう。子供の相手をしながらマホロバのことも学べるという、「ボランティア」(←重要)。――え~え、建前って大事よね。
あたしは教員免許を持ってないから、フツーの授業はできない。だけど、マホロバのことを学習できるように、どっかの殺人鬼社長が国有林の中に学園を作ったんだって。は~、子供の頃からVRに染めていこうという、遠大な計画ね~。決まればハンパない威力だわ。
「ふぉっふぉ、ようこそ」
学園前で、緑のカエルさんが出迎えてくれた。人の体に首から上がカエルって感じね。んまー、ファンタジー。
「ワシは園長のミカエルじゃ。シャボンさんですかな?」
「はい。あ、呼び捨てでいいですよ、園長」
「分かりましたじゃ。――あ、ロールプレイはこのままで大丈夫ですか?」
「OKです」
「良かったですじゃ、ふぉふぉふぉ」
はいはい、蛙のミッちゃんはそういうキャラなのね。素はマトモそうで良かったわ。
それにしても、社長が作ったって聞いたから、本社ビルに寄っといて正解だったわね~。そこの求人を見てからアポを取ったら、めっちゃスムースに来れたし。
校庭へと案内されつつ、具体的な内容を教えてもらった。
「シャボンには、ここで子供の相手をしてもらいたいんじゃ。単に勉強ダケだと身が入らぬしのぉ」
「あれ? 園長、授業のサポートと思ってたんですけど」
「うむ。子供らは、学んだ魔法やユニットを使って攻撃してくるから、シャボンはそれに応戦してほしいんじゃよ」
ほほぉ、子供とじゃれ合いですか。
「えーっと、園長……。倒してしまっても構わないんですか?」
「大丈夫じゃ。この世界なら復活し放題じゃからの」
へーい、お墨付きをもらったわ。
でも……なんか「復活」ってのが、「何度も殺すため」に聞こえてくるのは、社長に毒されてるせいかしら?
しばらく校庭で待ってると、園長が3人の男の子を連れてやってきた。
「さて、今日はあのお姉さんが相手じゃ。習ったユニットで戦うがよいぞ」
「「「はーい」」」
おお、素直。みんな10才ぐらいかしら、ケモ耳が和むわ~。
園長が、水かきのついた手をスッと挙げた。
「それでは……始め!」
振り下ろされるや、あたしは即座にネコ耳の男の子へ飛びかかった。
「えっ!?」
慌てて防御姿勢を取るけど、すかさずインベントリからレーヴァテインを出して、手を叩く!
「うわぁ!」
そのまま一気に連続攻撃!!
「あが、ががっ……」
まずは1人目を転がしたら、お次は犬耳の子へ飛来! 銀色に光る手をゲシゲシ叩いて、足払いで転がす!
「ぎゃあっ!!」
最後は1番反応が遅めだったウマ耳の子へ、大きく翼を広げて目力で威嚇!
「あ、あぁっ……」
ペタリと尻餅ついちゃった。あー、ダメよ子馬クン? 敵相手にかわいいアピールしても、トドメを刺されるダケよ~?
「ま、待つのじゃシャボン!」
園長が、慌てた様子で戦いを止めた。
「シャボン……。お主、飛ぶとメチャクチャ速いのお」
「少々修行しまして」
「――初心者じゃろ?」
「はい」
「えぇ、マジで……?」
なんか驚かれてるけど、さすがに子供相手ならこんなモンでしょ。
カエル園長は、ナマズヒゲを所在なげにさすってた。
「うぅむ……シャボンや。お主の方が飛ぶのはナシじゃ」
「あ、はーい」
あれま、制空権はダメですか。まあ、それぐらいのハンデはあげましょ。
なんせあたしは……〖デス・エレメンタル〗も倒した天使だし!
園長が男の子たちを回復する間、あたしはレーヴァテインをブンブン振って肩慣らしした。
ふふふ……空中戦を封じられようとも、天使には一撃必殺の杖がありますのよ? まあ、あまりスグに倒しちゃったら授業にならないものね。少しは待ってあげましょうか。
全快になった男の子たちは、結構キョリを空けていた。はいはい、今度は呪文も使えるわね。
園長が、再び緑の手を振り上げた。
「双方、良いかの? では……始め!」
試合開始とともに、3人はそれぞれ銀色の光を指先に集めた。
「コッペリア!」
シュワッと弾けると、そこには双剣を持った白銀の剣士が出現。――あら、よく見ると機械ね。関節部が丸いし。
ま、いいでしょ。かる~く叩いてあげるわね?
素早く距離を詰めたあたしは、レーヴァテインを振りかぶって当てようとした。
カキーン!
「――え?」
剣でブロックされた。
ちょ……待って!?
「みんな、やれー!」
「「おー!」」
あばー!
一斉にチクチク突かれて敗北した。チーン。
2戦目!
「今度は負けないわよ!」
男の子3人は、離れた場所で初手コッペリア。――はいはい、3体出てきたわ。
うーむ、あたしは剣道ってやったことないのよね。杖を振り回すダケ。
向こうの剣士どもは、それをオートモードで受けるもんだから、サッパリ当たる気がしないわね。
と、なると。
「【紡ぎグモ】ちゃん、カモン!」
こっちもユニットよ!
【ガイア】は無いから、4マナの子グモちゃんは2体召喚が限界。おっと、1秒経ったら、【エロス】4連発で4マナ増やしときましょ。
今度は、子グモちゃんそれぞれで剣士の相手をさせつつ、あたしも必死に目の前の剣士をブロック。――ん。このゲーム、意外に止めるダケなら何とかなるのね。校庭は広いし、逃げながら戦うのもラク。ちょっとダケあたしの方が早いし、バックステップをひょいひょい駆使しましょ。
「あー、ズルいぞー」
うっさいわね、1対3! 飛んで叩くわよ!? ――いや、言わないケドさ。
時間稼ぎをしつつ、次々と【紡ぎグモ】を喚んで、4体にまで増やした。よーしよーし、今度はこっちが1対3の状況を作ってやるわ~、フォフォフォ。
剣士の1体にクモちゃんズを3体向かわせて、集中攻撃!
ザシュザシュ!
――む、1体やられたケド、手応えあり! もういっぺんやれば、剣士が倒せるわね。
なーんて、甘いことを思っていた時期もありました。
「コッペリア!」
喚び直された。
当然、ライフは全快。
「――マジ?」
あたしはまたもや敗北した。チーン。
授業で使われてるユニットです。
【踊る自動人形/Dancing Automaton】
レベル4・銀魔法/コモン
分類:召喚(機械)
攻4/速3/生5
サイズ:中
能力:1秒間《敏速》《魁》を持つ。この能力は1度だけ使用可能。
能力:コントロールしている人物が呪文を唱えた場合、【踊る自動人形】は本来の所有者のスロットに未使用の状態で戻る。
「コッペリアを呼ぶニャ!」 ――ミーケ、王女




