木陰( 2 )
「ばかなこと言わないで。私を守るのが務めだと言ったくせに。弱気になるなと言った薫がそれを言うの」
薫は視線をそらし、ささやくような声でつぶやいた。
「ときどき考えるんだ。僕を水脈筋へ向かわせる力はどこから来るんだろうと。僕がそこにたどり着けるのは、あの世界に馴染みがあるからじゃないかと」
「どうだっていいでしょう、そんなこと。薫は薫だもの」
桜子は勢いよく言い切った。
「そんなこと考えても答えなんて出ないわ。薫は私よりふたつ年下で、いとこで、少し変わった場所に行くことができる。それでいいでしょう。
私だって途中まで行けたんだから、そんなに暗く考える必要ないわ」
桜子らしい物言いに薫が目をまるくして弱い笑みを口もとに浮かべたとき、離れた場所にいた桂木が慌てた様子で駆け寄ってきて言った。
「ふたりとも、早くここを離れましょう。そんなに長居できるものじゃない。この場所で囲まれたら不利になります」
それを聞いて、桜子は頷いた。薫もそれには承知した様子だった。了解が得られると、素早く桂木は言った。
「隠の稽古場にみんな集まっています。そこでまず師範と会ってください。私が桜子さんを見つけたことを知ったら、さぞお喜びになるはずです」
「でも、僕は——」
桂木は逡巡した薫をさえぎって言った。
「師範はもうお許しになっていますよ。ここで捕まっては元も子もありません。こちらへ。急ぎましょう」
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