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水神の剣の守り手   作者: 星 雪花
剣の巫女
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遁走( 3 )


「剣を呼ぶって、優さんもそう言っていたけど、実際にはどう呼べばいいの」


 薫は、硬い声で桜子に言う。


「ただ、無心になって呼ぶことだ。無心になることが難しければ、そうすることができることを行えばいい」


「つまり、なばりの技を行えって言うのね。結局それしか方法はないんだもの」


 薫は頷いた。


「剣が手元にあると、確信する気持ちが大事なんだ。桜子さんがそう自覚すれば、それは手足と同じように、桜子さんの近くに現れる」


「そしてその行為が、いかずちを呼び寄せるのね。解かれた封印が嵐を呼ぶんだわ」



 そんなことが本当に起こるのか、優の言葉がなければとても信じられなかっただろう。

 優はそうすることで、里を焼け野原にすればいいと言った。撫子を顧みず、水脈の大蛇を恐れたその報復として。それだけの力が、剣の封印を解くことでほとばしる。


 そんなつもりがなくても、力の使い方を誤ればどんな事態になるのか分からない。桜子は、そっとわずかに震える声で言った。



「そうすることが、本当に正しいのかな。私がこのままこの身で封じていれば、災禍さいかを生まずにすむ。そうして誰も巻き込まずにいられるなら」


 その言葉の先は続けられなかった。気弱な発言をさえぎるように、いきなり薫が両肩をつかんだからだ。


「今ここで弱気になってはだめだ。桜子さんにその気がなくなれば、本当の災厄をのちに呼び寄せてしまう」


 荒い口調で言われ、桜子はただ目をまるくした。


「どういうこと……?」



 力を解くことで起こる嵐が、祖父の語った災いであるはずだ。薫は桜子の肩をつかんだまま、しばらくの間何も言わなかった。

 そうして数秒対峙する格好になり、周囲の視野が狭くなったのだろう。ふたりともがそう気づかない合間に、そば近くへ忍び寄る影があった。



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