物の具
身動きがとれないまま数日が経った。
病み上がりとは言えなくなるまで体が快復すると、伊織は廂の間から外に連れ出してくれた。
特に出入りしたのは、北の対屋の西側にある武芸場で、そこには桜子には馴染みのない武器——薙刀やクナイ、腰刀のたぐいまでがあった。
桜子の知る古武術は専ら道具を使わないものであり、使うとしても短刀か太刀だった。隠の技は基本的に素手で行うもので、物の具は徒手の延長にあるものに過ぎない。
武器を使用する目的で技を行うことは、他者を殺傷することの前提にも思える。それだけ実戦に近い場所だということが、使われた形跡からうかがえた。生々しく血糊が残っている刃先も数知れずあった。
板敷きの広間は下手をして受け身を取り違えると堪えそうではあったが、その場を訪れると胸が騒いだ。
もう何日も体を動かしていない。その技のひとつひとつを、桜子は自分の身で確かめたかった。「水神の剣の守り手」としてではなく、体を動かしたいという欲求のままに。
だが、桜子が隠の技を行うことは、もう身ひとつの問題ではないのだ。そう思うと、理不尽な焦慮に駆られた。
「桜子さん、こちらに。あなたに見せたいものがあるのです」
伊織に呼ばれて行くと、ちょうど対屋の裏手に、竹の透垣で区切られた場所があった。
——水の音がする。
吸い寄せられるように近づくと、玉石を敷いた一角が目にとまった。




