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水神の剣の守り手   作者: 星 雪花
忍びの里
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合図


 桜子が予感した通り、稽古場の桜の木には合図の布がくくりつけられていた。


 翌日、桜子は夏芽や父が起きだす前に、そっと家を抜けだしてお宮の山を目指した。

 御影山のいただきは朝靄(あさもや)がたちこめていてかすみがかり、山の裾野にむけて清浄な空気が流れ込んでいる。不穏に思えるような静けさに、動悸だけが自然と速まってゆく。


 そうと決めたら迷わないはずだった。祖父と薫の意見はほぼ真っ向から対立しており、話の渦中にいるとはいえ、桜子にその事情の真偽を知るすべはない。


 それでも薫を信じられると思ったのは、薫が実の父の忠告を——優のことを受け入れたからだった。


 祖父は優のことを否定している。優を頑なに拒絶することが、かえって祖父の目を曇らせているように、桜子には思えた。あくまで推測でしかなかったが、どちらにしろ、このまま言納をすませることはできなかった。


 桜子はこの目で真実を知りたかった。それを知る方法が「水神の剣」を振るうことにあるなら、試みるしかないのだ。たとえどんな災いがやってきても。


 ——災厄のことは、薫は言わなかった。ただ剣を手にすれば分かると言っただけだ。薫の言うことが、その身で分かるはずだと。


 そこまで言われて、引き下がることはできない。夜の密会が行われたあの日、桜子の心はもう決まっていた。

 ただ剣の力を解き放つことで、周囲にどんな影響が及ぶのか予測がつかないことだけが気がかりだった。桜子が逡巡するとしたら、その点だった。


 薫は、あとのことはまかせてくれればいいと言っていた。今はそう言った薫の言葉を信じるしかないのだ。



 ——おじいちゃんは、和人さんと同じことを言った。薫にも、審神者さにわと同じものが流れている、と。


 優が神霊を見分ける者ならば、薫にも同じ力があるのだろう。祖父があそこまで優を拒むのは、剣の力を解く鍵を『審神者』が握っているからではないか。

 漠然とそんな気がした。「水神の剣」には水脈みおの大蛇が宿っているのだから。



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