表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水神の剣の守り手   作者: 星 雪花
忍びの里
35/108

乾家の嫡子( 3 )


 ——この人は良い人だ。もし薫や和人さんの言葉がなければ、本当に祝言を挙げたのかもしれない。

 あんなに頑迷に振る舞っていたというのに。


「私——やらなければいけないことがあるの」


 桜子はようやく、しぼりだすような声でそう言った。


「それをもう約束してしまったから」


 惣之助はそれを聞いても、驚くような素振りは見せなかった。ただ、繋いだ手を握り返す。


「あなたの本音を、やっと聞けましたね」


 そう前置きして、惣之助は桜子の視線をとらえた。


「そのやるべきことが終わったら、俺は改めてここに参上します。それでもいいですか」


 桜子は目をそらすことができなかった。


 ——この人は、私が剣の守り手かどうかは問題にしないのだ。特別な力が私のなかに、なくてもかまわないのだ。


 そう思った瞬間、頷いていた。

 惣之助はそれを見て破顔した。


 先のことは何も分からない。ただ、薫との約束を果たした後にも繋がってゆく未来があると思うと心強かった。


 自分のことも把握できていない。それほど不確かな場所に桜子はいるのだ。


 ——おそらく、決行するとしたら明日だ。


 桜を見に行かなくても、そうであることはもう明白だった。明日言納(ゆいれ)が行われるかもしれないのだ。


 桜子は高鳴る鼓動を感じながら、それが惣之助のせいなのか確かな予感のせいなのか分からなくなった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ