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水神の剣の守り手   作者: 星 雪花
忍びの里
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桜子( 2 )


 桜の美しさとは似通うところのない桜子の、唯一共通する点がそこだった。

 桜子は稽古場の師範である父方の祖父のことを尊敬していた。 この春には、最初の伝位を取る約束もしている。その日が今から待ち遠しい桜子だが、胸のなかに暗く影を落とすものを見過ごさないでいることはできなかった。


 ——お父さんが、また縁談の話を持ってきたからだ。



 柔軟の体操をするたび、凝り固まっていた筋肉が伸びてゆく。その体の感触を楽しみながら、桜子は息をついた。


 桜子は、物心つかない間に母を亡くしている。

 そのため祖父に預けられ、その姿を手本として育ち、武芸の技の飲みこみも早かった。それを誇りに思う一方で、父が何度も勧めてくる縁談の話を桜子も考えなければいけなかった。


 どんなに強くても、女の身では祖父の稽古場を継ぐことはできないのだ。それを突きつけられる思いだった。そうなると一体何のために強くなるのか、桜子も分からなくなってしまうのだった。



 ——いっそ、おばあちゃんのところに行って、巫女さんにでも志願しようかな。



 顔も見たことのない誰かのところへお嫁に行くよりは、その方がましに思える。「おばあちゃん」とは、母方の祖母だった。

 母の在所はこの里のなかでも古くからある神社で、母はもともとそこの巫女だった。それを郡司の父に見初められて、桜子を産み、数年経ったのちに亡くなったのだ。

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