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勇者の場合 其の二


 あの野郎、調子に乗りやがって!


 クソが!憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!


 聖戦士のクソ野郎め、ミリアちゃんの婚約者でちょっと魔法が使えるからって調子に乗ってやがる!勇者である僕に対してあの態度は何だって言うんだ!僕が何か悪いことしたかよ!婚約者を寝取られるのは村人出身の勇者パーティメンバーの役目だろうが!


「クソがッッ!」


――――ダンッ!


 拳をテーブルに打ち付けた。一緒に頭も打ち付けた。痛い。


 だいたいアイツは街で僕が他の女の子に手を出そうとした時でさえも邪魔してくる。『立場を考えて下さい』だの『節操無しはお宿に帰りましょう』だの『勇者様は【お猿の情事】の主人公じゃないんですから諦めて下さい』だの言って僕を無理矢理宿へと連れ帰る。

 別にお前の婚約者に手を出してるわけでもないんだから邪魔するなよ!僕は勇者なんだから多少無理矢理になったって問題ないだろうが!ふざけんなクソ聖戦士!


「野郎…………目に物見せてやる。そうだ、ミリアちゃんを無理矢理襲って寝取ってしまえば良い。それがいい」


 くふふふ、聖戦士め、あいつの目の前でミリアちゃんを滅茶苦茶にしてやれば精神崩壊間違いなしだ。あいつを絶望のどん底に陥れてやる!


























「―――とでも思ってるよあの男。だから一緒の部屋に居させて貰うね」


「本当かなぁ。流石にそこまでやるとは思えないけど…………。正直ドン引きだよ」


「念には念を、だよ。それに僕はいつだってミリアと一緒に居たいしね」


「もう…………アイルのばか」


 照れたミリアが顔を赤くしてそっぽを向いた。ふへへへ、ミリアはいつも可愛いなぁ。思わず顔が緩んでしまう。


 あれから町まで魔物を倒しつつ進んできた僕たちは宿屋に泊まっていた。こうして僕がミリアの部屋に居るのはあの『父さんのエロ本』に勇者が主人公の婚約者目の前で寝取るシーンがあったからだ。まさかとは思ったが、あの勇者ならやりかねない。

 最近気付いた事だが、彼の目の奥はなんだか濁っているように感じた。何があったのかは知らないが、色々とぶっ壊れている彼ならエロ本通りの行動をしてもおかしくないと考えた結果だ。


 因みに………父さんのエロ本コレクションについて、使えそうなものはメモをして纏めてある。全てはありとあらゆる寝取られ展開を未然に防ぐ為だ。そしてメモを取ったエロ本は全て父さんの部屋の机の上に置いておいた。母さんは知らないだろうが、ああして机の上に置いておいたエロ本を見た父さんは、母さんに見られたと思ってすぐに捨てていたからアフターフォローもバッチリだ。父さんは母さんだけを見ていれば良い。母さんもそう思っている。


「でもさ………アイル」


「ん、何?ミリア」


「さっきセドリックさんとアリシアさんに一緒の部屋にする事言ったら生暖かい顔されたよね。ちょっと恥ずかしかったな………」


「………ごめん」


 ごめんよミリア。恥ずかしい思いをさせてしまったのに全く気付いていなかったよ。でも見捨てないで、君に相応しい男に絶対になってみせるから!


「そんな目で此方を見てきても、別にアイルを捨てたりなんてするわけ無いよ?」


「ミリア………優しい、天使」


「アイル以外の男の人を好きになるなんて絶対に無いから安心してね」


「好きだぁぁぁぁぁぁぁ♡ぎゅってさせてぇぇぇぇぇ♡」


「はいはい、よしよし」


 ミリアは抱き付いてきた婚約者の頭を子供にするように優しく撫でた。


「アイルは甘えん坊さんだなぁ(昔はこうじゃなかったんだけどなぁ。どうしてこうなったんだろ。でもまぁ、良いか)」


 能力も容姿も財力も村人とは思えない程の優良物件のアイルだったが、こう言うところは色々と残念だった。そしてそれを嫌な顔せずに受け入れているミリアもミリアで天使(感覚が麻痺しているだけ、とも言う)だった。























◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







「ホーッ、ホーッ、ホーッ」


 真夜中、宿屋の外に生えている木にとまっていた梟が鳴く。

 草木も眠る丑三つ時、一人の影がとある少女の眠る部屋に迫っていた。


「くっくっくっ、あと数分もすればミリアちゃんは僕の腕の中だ。そして最初は無理矢理で嫌がるミリアちゃんも婚約者の村人とは比べ物にならない僕の●●●●(ピー)にだんだんと夢中になって――――くひひっ、やべ、興奮してきた」


 それは勇者であった。

 最早勇者などとは呼べないほどの只の変態で犯罪者だったっがそれは紛れもなく勇者であった。


「ああ、ミリアちゃんの可愛い顔が早く見たいなぁ。あ、たった」


 ただひたすらに変態発言をし続ける勇者。いくら此処が日本ではなくて、自分が勇者であるからと言ってこんな犯罪を犯して問題にならないと思ってしまったのだろうか。魔王を倒すためにとはいえ、こんな性犯罪者を召喚してしまった王は全国民に向けて土下座で謝罪しなければ。


――――カチャリ……


 扉が開けられた。

 ベッドの上からは「すー、すー」という穏やかな彼女の寝息が聞こえてくる。この鬼畜勇者はこれから眠っているこの少女に襲い掛かり、無理矢理乱暴をはたらこうと言うのだ。豚箱行き待った無しである。


「イクぞっ!ミリアちゃん!必殺、『ルパ◯ダイブ』っ!」


 勇者はぶつぶつと何やら呟くと、蛙のように飛びあがり両手両足をぴたりと合わせてベッド目掛けて飛び込む!

 その瞬間、勇者の景色はスローになった。












――――もそり


 布団が動く。そしてその中から現れたものに勇者は目を見開いた。


「そんな…………馬鹿な」


 勇者は目があってしまった。布団の中から現れた死神と。

 ル◯ンダイブしてしまっている勇者にはもう逃げ場は無い。チョ◯ボのように壁を破壊して死神から逃げ切るなんて荒業も今の彼には出来ないのだ。

 絶望に目を見開いた勇者に向けて死神は囁く。


「よ・そ・う・ど・お・り」


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 次の瞬間、勇者の視界は超高速で動き始めた!

 布団の中からコンニチワしてきた死神(アイル)の超高速の金的蹴りに、続けて放たれたパンチが土手っ腹に向けて三連!

 更に勇者の身体が吹っ飛ばされる暇もなく、独楽のように回転したアイルによる回し蹴り!しかも踵から行ったので直撃した勇者の肋骨は数本ぐらい逝ったッッ!


「おごほぉぉぉおぉ"お"ォォッ!」


――――ズダァァァァァン!


 勇者が部屋のドアに激突した音が真夜中に響く。股間、腹、胸に同時に受けた激痛に勇者は悶え苦しんで転げ回った。

 そして布団の中から天使(ミリア)も現れて、勇者を非常に悲しそうな目で見下ろした。


「本当に来た…………これは、引くわ………………」


「う、ぐ………ッッ!」


 ミリアの心の底からの言葉に今日一番のダメージを受ける勇者。自業自得なのに。

 しゅるるる……と部屋の床から根っこのようなものが生えてきて勇者を縛り付けた。そして勇者はそのまま床に転がされる。


「き、さま、聖、戦士、め」


「ねぇ、勇者?貴方ががこうすることぐらい予想できてましたよ。勇者ともあろうものが他人の婚約者の女性に乱暴を働こうなんて、このことが広まったらどうなってしまいますかねぇ?」


「ぐぅっ……………」


「まさか本当に来るとは思いませんでした、もう二度と私やアリシアさんの半径五メートル以内に近付かないで下さい」


「か…………はっ!」


 完全な拒絶。一目惚れした女の子からそんなことを言われた勇者は吐血して動かなくなった。あまりのショックに気絶したのである。


「ありゃ…………もう駄目になっちゃったみたい。仕方ない、それじゃあ元の部屋に返してくるね」


「うん…………アイルの言う通りだったね。ドン引きだったよ。行ってらっしゃい」


 アイルはミリアの頬に行ってきますのキスをすると縛り上げた勇者を担いで部屋を出ていった。
























 次の日。


「なんですか……………これは」


 昨日の事もあって何かあるんだろうなとは思っていたセドリックだったが、目を覚ましたセドリックが見たものは想像を遥かに越えてきていた。


『ド変態豚箱行き勇者。人類の汚点につき反省中』


 そう書かれた板を首から下げた勇者が部屋の角に置かれていたのだ。勇者は置物であった。

 口からは吐血したのか流れた血が赤黒く固まっており、身体は木の根っこのようなものでぐるぐる巻きにされている。綺麗に正座させられていたそれは勇者と呼ばれる者がしていて良い姿では無かった。


「…………」


 これは夢だ。悪い夢だ。

 セドリックは目を瞑って布団に潜り込んだ。二度寝の体勢だ。そしてそのまま数分間じっとする。


――――もぞっ


 布団から出る。駄目だった、夢じゃなかった、夢が良かった。

 セドリックの見た先にはやはりあの勇者(置物ver)が置かれていたのだった。



【お猿の情事】

  周りから『お猿、お猿』と呼ばれ続けた猿顔のブサイク男『アンディ』が、善行を積み続けたことによって神様から祝福を受けてモテモテになりハーレムを築き上げるというエロ本界きっての不朽の名作。当時、業界初の『男の娘』ヒロインを登場させた挑戦的な作品でもあった。

 勿論アイルの父親も愛読していたが、7歳になったアイルに無事発見され、アイルと母親によるエロ本朗読会が開催される。父親は無事に死亡した。

 内容が『寝取られ』では無く、『ハーレムではあるが純愛モノ』だったことにより、アイルの父親はなんとか許された。









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