のんびり放浪記
ゆるりと。
―――ミノタウロス、コボルト、グールにヴァンパイア。そして、ドラゴン。世界には、恐ろしい怪物がわんさといる。でも、一番恐ろしいのは―――
はぁ、めんどくさい。なんで、こうも働かにゃならんのか。
「しっかり持てよ、犬のあんちゃんっ!」
「へいへぃ。」
食ってく為には、まぁしかたがない。それに働かしてもらえただけで、もうけもんだぁな。頭がよけりゃあ、それなりに稼げるんだろうが、"私"たちの種族にゃあそんなこたぁ無理だ。そもそもそんな風に使うために脳みそなんざ持ってない。だから、からだ張って
「稼がせて、もらいッ!ますよッこらせっと!!」
威勢の良い掛け声とともに、持ち上げた巨大な岩を投げつける。大の男が数人がかりで、支えていた岩を軽々、とまではいかないが洗濯かご一杯の洗濯物を運ぶ母親のように、仕事をこなす。
「いつみても、驚かされるな。あんちゃん。」
「まぁ、、、。」
見てねぇで働けよっ!そういいたいのを必死で堪え、曖昧な返事で会話を濁す。
「犬のあんちゃんがいりゃあ、百人力だぁな。」
「んだな。」
だから、しゃべってねぇで仕事をしろっつうの。これで、貰えるお足はおんなじなんだから余計に腹が立つ。
カガリビ・ウバメは、心の中では毒づきながら与えられた仕事を片づけることに集中している。
「しっかし、犬の獣人が土木作業たぁ珍しいやねぇ。あんたらの種族の仕事といやぁ、兵隊さんになるのがさだめだとばかり思ってたぜ。」
せっかく持ち上げた瓦礫を戻して、別の人足が声をかけてくる。
「、、、争い事が嫌いなんでね。平和に石拾ってる方が幾分かマシさ。最も、あんたたちみたいな怠け者は軍属になんかならないだろうから、ぐうたらな同僚を持つぐらいなら、鞍替えも考えなきゃな。」
「ちげぇねぇ!」
「その通りだ!」
「「ワッハッハッハッ!!」」
ちぇ、陽気に笑ってんなぁ、ったく。全然仕事が進みゃしねぇ。、、、新しい職場、探そうかなぁ。
等と転職のことを考えつつ、何だかんだと会話も楽しむ。
ーーゴンッ!!ーー
「あぎゃッ!?」
鈍い衝撃音の後に、生け贄の断末魔の叫びが辺りに響いた。
「てめぇらッッ!!くっちゃべってねぇで、仕事しろィッ」
「ヤベッ、親方ッ!?スンマセェン!!」
身もだえする仲間を引き摺って、各々持ち場に帰っていく同僚たち。ざまぁみろと、舌を出しながら再び仕事に向き直る。
ここはとても居心地がいい。素直にそう思える職場だった。仕事はしないが陽気で愉快な気の良い同僚と、昔かたぎの頑固な親方に囲まれた生活はとても充実していた。出来ればもう少しもらえる銭が多けりゃ、最高だったが。でも、まぁ、今の職場は食うには困らない。煩わししい風習や、文化の違いもない。あるのは、馬鹿話と、石ころばかりだ。
「ったく。あいつら、俺が目ぇ離すとすぐこれだ。おちおち煙草も吸えやしねぇ。」
キセルを口に加えてくゆらせながら、親方が呟く。
「、、、煙草やめりゃあ良いじゃないですか。めちゃくちゃ臭いんですよ。それ。」
「そいつぁは無理な相談だ。俺にとっちゃあこいつは呼吸と一緒ってなもんよ。男たるもの、キセルくわえなきゃ一人前とは言えねぇなぁ。どうでぇ、ウバメ、お前ぇも一服いくか?」
そう言いながらキセルを差し出す親方に、そっぽを向けて言葉を返す。
「要らねぇす。臭いっていってるじゃないですか。自分らには、においがきつすぎるんですよ。服まで染む混みますし。それに'私'は男として一人前を目指してるわけじゃないんで。」
「そ、そういえばそうだったな。うちの野郎共みてると、お前ぇの方が男前が良いもんでな。ついつい、、、。」
その後の言葉は継げなかった。さしもの親方でも、ウバメの殺気の籠った目線には勝てなかったのである。
更新もゆるりです。
興味があれば、気長に。