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バニシングセブン  作者: カサ
8/12

狂い始めた歯車

モータストリート編集部

「一体どういうことですか!?編集長!」

編集長の机に勢いよく両手を付き、島田に問い詰める影浦。

「なぜ黒川氏ではなく、ショップの方で仕上げることになってるんですか!」

数分前、BRZを預けた黒川から連絡があったのだ。影浦のBRZを仕上げたショップが引取りにきたらしくそっちでチューンするという話だ

「BRZの件か?君には申し訳ないけどね、まあこれも面白い記事の為だ。」

悪びれる様子もない島田

「伝説の車をシャドーガケヤマがストリートで倒す、そらショップの宣伝にもなるし、何よりそっちのほうが盛り上がる!はははは!」

「おれはそんなことの為に・・・!」

そういう影浦に島田がなだめ始める

「まあまあ、考えてもみろ?きな臭いチューナーに手を入れらてちゃ仕上げたショップのチューナーの立場がないだろ?」

「・・・」

険しい顔する影浦、島田の言うこともよくわかる。ある意味影浦の行動は仁義に欠ける行動と感じていたのだ

BRZをよく手入れしてくれたショップを差し置いてそういうことをしたのだから。


チューニングショップ SBスピード

スバル系チューニングショップSBスピード、ここに影浦の黒いBRZがリフトに上がっていた

手が空いてない影浦に頼まれ、きららが様子を見に来ていた

「いやー相変わず美人ですねきららさんは!」

「どうも、須賀社長。」

SBスピード社長、須賀 正直きららはこの人が苦手であった。

あごぎな経営者という印象が強い、整備、作る側の人間ではないからだ・・・乗り手に遠く感じる存在

「いやー、やっぱ小さい町工場クラスはああいう車をわかってないよ。あの足じゃぜんぜん速く走れない走れない。案外あそこのバニシングロータリーなんてたいしたことないんじゃないかね、ははは!」

「そんなに駄目な足の調整だったんですか?」

そこまでダメだしするほどなのか?あのFDは悪い足の調整ではなかったのだが

「あれじゃねぇ、まあ、こっちで一から作り直して500馬力の刺激的なシャドー号!いいねぇ!これ以外の企画でもガンガン出せるようにしてよね、きららちゃん!」

「・・・前向きに企画を検討させていただきます・・・」


Yガレージ 社長室

「あーやっぱりあの社長は苦手だな!」

部屋のソファーに腰をかけながらボヤくきららに対し、やや苦笑いになる山岡

「おいおい、そんな愚痴を言うためにサボタージュに来たのかかい」

「言いたくもなりますよ、なんというか本当儲け重視というか乗り手のことをあんまり考えないタイプって感じで」

「雑誌屋がそれを言うかねぇ、おもしろく書いて儲けてるのはそっちも同じじゃないかね・・・でも、あそこのスタッフの技術は確かな筈だ・・・ただ、新屋のFDが絡むか・・・・」

ふむ・・・という表情をする山岡

「きららがそこまで入れ込む、そのFD・・・ひと目見てみたいね。今夜辺り空いてるかい?久々にR32を出すよ」

「R32って・・・もしかして社長のあの黒い?」

Yガレージの看板車両・・・じゃない、黒いR32GT-R 山岡のプライベートの車だ。ウィングレスの全然派手じゃないR32なのだ。


黒川自動車 PM8:00

明かりがついてるものの人影が見当たらないプレハブ小屋

「いないな、鍵もかけないで無用心だな」

「ここにいないとなると・・・先輩が言ってた裏のガレージ・・・」

すると、プレハブの向こう側からキュルキュルキュルババババ・・・という、乾いた音が響く・・・

「こりゃ・・・空冷のフラット6か?」

裏のガレージに回る山岡ときらら、そこにはウマをかけられた状態の930型ポルシェだった

「おや、美人記者さんと、おいおいこりゃ・・・山岡さんか」

「久しぶりだな、クロ・・・」


黒川自動車 プレハブ

「二人って知り合いだったんですか?」

きららが切り出し、山岡が答える

「ああ、首都高で走ってた仲でな」

「いやいや、そこまで仲って言えるほど仲良しじゃなかったっしょ。今じゃいいおっさんみたいな感じですけど、山岡さん当時過激派でしたし俺なんてただの改造車好きな小僧だったでしょ」

「ハハハ、まあ気にするなよクロ」

「まさか、昔話をする為にここに来たわけじゃないっしょ山岡さんと、美人記者さんは結花ちゃんとFDの事だろ?」

「ああ、そうだ新屋が残したあのFDに用がある」

本題に入る山岡

「FDか・・・結花ちゃんなら今はバイト中だろうなぁ、千代田区方面だ・・・ちょっと待て山岡さん、まさか結花ちゃんと勝負する気か!?」

少し青ざめた黒川

「いやいや、そんな気はないよもう歳だしね。ただこのきららが気になってる新屋が残した最後の作品をひと目見たいだけだよ」

「その言葉全然信用できねぇ・・・しゃーない案内で俺も一緒に行くわ。」

かなりに頭を悩ませる黒川


湾岸線~環状神田橋出口方面向かう道中

ハンドルを握る山岡、ナビシートに乗るきらら、後部座席に黒川の絵・・・黒川はシートベルトにしがみつきながら・・・

「おいおいクロ、流石にこんな車の流れで飛ばさねーよ!」

「そう言って!全然信用できねんだよ!記者さん!今じゃ大人しいおっさんかもしれないが若い頃ガンガン飛ばしまくる人だったからな!」

「え?でも社長、私のときはいつも・・・結構ゆったりな速度で走ってますけどね?」

少し驚くきららに対し、警戒心MAXの黒川

「あれだよ、女の子の前だからカッコつけていいオッサンキャラを演じてだよ!」

「ハハハ、そりゃ一理あるけど、クロ。そういうお前も随分若い娘を可愛がってるそうじゃないか!」

「否定はしねーよ!若い娘の前はカッコイイ大人でいたいもんだからな!」

オッサントークで盛り上がる車内、するときららが切り出す

「黒川さん、BRZの件・・・・申し訳ございませんでしたせっかく先輩が信頼して預けたのに」

「ああ・・・その件か・・・うーん、どーするかねアンタの前で言うべきか・・・」

「え?」

困惑した表情で言うべきか悩む黒川

「言ったらどうだクロ、あのSBスピード・・・真っ当な手段でお前から仕事をとったわけじゃないだろ?」

「山岡さん・・・はあ、記者さんこの手紙を読みな。」

きららに手紙を渡す黒川

「えーと・・・『BRZをSBスピードに引き渡さなければ、FDとその娘がただで済むと思うな』・・・って!?なにこれ!?」

「差出人不明の脅迫文とはねぇ・・・新屋の作ったFDはこうも災いを呼んでしまうだろうね・・・」

ため息ながら喋る黒川に、山岡がきららに

「恐らく、きらら。その差出人は君の編集長だろうね・・・」

「な!?いやいや社長、でも流石にそれは・・・」

驚愕するきららだが、流石にそれはないと言うところに

「ドリーマーという、ショップは知ってるだろきらら」

「そりゃもちろん、ドリーマーはうちの看板みたいなものですからね・・・」

ドリーマー チューニング業界において大手の有名ショップであり、この系列がいくつかありメーカーごとに専門のショップがあるのだ、SBスピードもその一つだった。

「あー、山岡さんも知ってるか・・・ドリーマーの会長はな、どうも新屋に相当恨みでもあるみたいでなぁ・・・やれやれ権力があるってやだねぇ」

愕然と聞くきらら・・・立て続けに言う黒川

「ドリーマー、アンタ所のクルマ雑誌、そしてドリーマー系列のSBスピード、新屋の残したFDをこの世から消失バニシングさせるそういう筋書きじゃねーかなって思う。ただ直接的ではなく公道の事故としてな」

「ちょ、ちょっと待ってください!流石にそれは・・・憶測に過ぎないじゃないですか!」

車内できららが反論する、自分が勤めてる所がそんなことをするはずがないと・・・

山岡が静かに黒川に聞く

「クロ・・・その話、FDの乗り手には話したのかい?」

するときっぱり黒川が

「いーや全然。ただな結花ちゃんには、覚悟は教えている。それだけで十分さ」


環状から神田橋出入口降りるR32 向かう先は電気街・・・それはオタクの聖地秋葉原であった・・・


秋葉原 喫茶ナナン PM9:00

「場違いなのでお帰りくださいご主人様♪」

入って早々の作業服の黒川を見て、メイド姿の結花が笑顔で接客?をする。

「おい!マスター!ここの店員の教育はどーなんてんだ!」

笑いながらマスターを呼ぶ黒川

「すみませんね、作業服で来られる黒川って客にはそこまで接客しないという教育方針でして・・・」

「ひでぇなおい!」

メイド喫茶・・・ではなく、アンティーク系の喫茶店であり作業着二人のオッサンと若い20代の女性の合わない絵である。

「へぇ・・・秋葉原にもこういう喫茶店あるんですね・・・」

「てっきり萌え萌え系とかのそういうのだと思ったよ」

関心するきららと山岡。

「結花ちゃん、何時頃上がりかな?どうせこのまま環状に上がるんだろ。」

「あと1時間ぐらいですよ。今夜はそこのおじ様とツーリングって感じですかね?」

「ははは、おじ様かぁ!お手柔らかに頼むよ、結花ちゃんでいいのかな?」

「構いませんよ、それじゃ黒川さんのおごりで好きなだけ注文しちゃってくださいね♪」

「やめい!」

ホントにその後請求書が黒川の元に届くのは、後のお話・・・


喫茶ナナン 裏駐車場 PM10:00

ほとんど店主と結花しか使ってない従業員用駐車場

「・・・すごいな、このFDの存在感普通の人はただカッコイイ車だと通り過ぎるだろうけど・・・」

「本当いつ見ても、異質というか・・・」

FDのエンジンがかかる、駐車場内に響くその音

きららは間近で聴いていたその音だが慣れないこの高揚感

始めて聴く山岡は戦慄が走った・・・冷や汗が止まらないほど・・・

アイドリング状態のFDから降り、3人の前に駆け寄る結花

「あれ?もしかして、あれがおじさんの車・・・?」

近くに路駐してたR32に指をさす結花

「ああ、そうだよ・・・もしかして見たことがあるのかい?」

「うん、以前街中で・・・すごい綺麗で存在感がすごいR32だから覚えてますよ。まさか会えるなんて・・・」

感激をする結花、2度と合うことはないと思っていたからだ。

「ねえ、結花ちゃん私をナビシートに乗せてくれないかしら?」

結花に頼みこむきらら

「ああ、そういえば記者さんは結花の隣は乗ったことないよな。感じてみるといいさ、結花ちゃんとそのFDの感性を・・・・ちょっと待て、じゃあおれはテキトーに待ってるわな・・・」

その場から離脱しようとする黒川に、山岡が捕まえる

「待て待て、クロ。お前はR32のナビシートだ遠慮するな」

ものすごく悪そうな笑顔で黒川を乗せる山岡

「やめろ!!死にたくない!!」

「はははは!観念するんだな!クロ!」

「あっちは楽しそうですね」

「結花ちゃん、別に遠慮せず踏んでいっていいからね?」

結花に気にかけるように言うきららだが・・・

「遠慮?申し訳ないけど、そんな気はさらさらないですよ?それな隣に誰も乗せていません。ナビシートに乗る以上は一蓮托生、そんなものじゃないですかね?」

一蓮托生・・・そう言うドライバーはきららにとって始めてであった。


神田橋入口、環状外回り 深青と黒の車がアスファルトとコンクリートの空中庭園へ・・・





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