GT-R R35 湾岸線
湾岸線下り AM3:00
GTウィングを効かせ、200km/h、パドルシフトでシフトアップし6速
「やっぱすごい・・・思った以上にダイレクトにシフトアップするし・・・すごい安定する」
250km/h薄暗い湾岸線を駆けるR35・・・先日FD3Sと交換という形で借りたR35、遠慮なく踏む結花
1.7t近くあり、FDより巨体なR35・・・普通なら大きく重く感じる数値、表現だがGT-Rという車はそう思わせない、軽快、そして力強く加速し車体を引っ張る
空気の壁を流し、4つのタイヤが働く・・・
「・・・なんというか、乗りやすいけど車の方が主張が激しいね・・・」
ボヤく、結花・・・そこには感激はあるが、面白みもある・・・ただ乗せられてる・・・そんな感覚だった。
つばさ橋手前、アクセルを戻す・・・橋の上、存在感のあるR35が通り抜けていく・・・
黒川自動車 PM3:30
アイドリング状態で止まるR35
「うーん、V気筒っぽい音だね・・・フィールが第2世代派は気に入らないって言う奴結構いるけど全然いいと思うけどなぁ」
出迎えた黒川がR35のボンネットに触れながら語る
「で、どーよRは。すごい車だろ・・・って、顔が浮かない顔だな」
「そうですね・・・どうも、操ってる感覚というか・・・乗せられてる感が拭えなくって。正直あんまり乗りたくないですね・・・わからなくなりそうで」
「わからなくなる・・・FDの乗り方か?」
「ですね。なんというか、車の方が全部先に行ってる感じで・・・一体感が掴めなくなりそうで」
「なら、乗らなければいい。結局生粋のRX-7乗りつーのはGT-Rとは合わねーものさ」
エンジンを止め、プレハブ小屋に入る。冷蔵庫から結花はドクペ、黒川は缶コーヒーを出す
「環状とかも、そうですけど街中で見るとGT-Rって存在感がすごいですよね。なんというか見ただけでもう速いというか。」
「そりゃ、意識してしまうじゃないかなRX-7乗りであり、ロータリー使いだからな結花ちゃんは」
笑いながら言う黒川に対し、?という表情の結花
「昔から、GT-Rとロータリーというのは因縁があるんだよ対立する二台というべきか・・・当時の走り屋の中じゃロータリー使いはGT-Rを意識する風潮だったからな。結構比較されることが多かっただよな第二世代RとRX-7って」
「でも、そんなこと私は知らないですけどね。」
「オールラウンダーで速いGT-Rと速いが癖のあるRX-7という対立関係で考えればどうかな。」
「あ、なんとなくわかるかも、癖のある車で強敵を倒すという爽快感・・・愉悦感というべきなんですかね・・・それだと結構RX-7乗りが捻くれてる感じですね」
クスッと笑う結花
「まあ、実際RX-7だけじゃなく、他の車の乗り手もそうだと思うな。90年代チューニングの走りの基準にGT-Rがいるそれほど完成度がよく、ガチですげぇ車だった・・・それがさらに進化したR35。もうだれが乗り手でも速い。そりゃ、癖のあるRX-7乗りに合わなくなるわな」
お互い飲み終わり、雑談を終える
「さて、結花ちゃんはこれにはもう乗る気はないんだな。FD帰ってくるの明後日だが・・・」
「ええ、そもそも私が走るときは結構気まぐれだって知ってるでしょ黒川さん」
結花は気乗りしないときはホントに乗らない、1週間乗らない日もあるぐらいだ
「なら、ちょこっとメンテして返すかね・・・少し気になる部分もあるし。」
黒川自動車はプレハブ、横に車の整備するガレージがあるがその裏側にR35を持っていく
そこには表の整備より広くさらに充実したガレージ、横にエンジン室がある程に
「さて、ちょうど本職の車も出せたことだし・・・やりますかね」
夜が明ける午前4:00。裏側のガレージで一人。作業を行う・・・
2日後 湾岸線下り方面 湾岸環八 AM1:00
一般車両がまばらに走る湾岸線、先頭FD、追従するBRZが湾岸を駆ける。トラック、一般車両を避け走る速度は120km/h・・・踏み切るわけではないがそれでも一般車両より速い速度。
追う黒いBRZ・・・モーターストリートの影浦であった。
「流すペースでもすげぇな・・・ロータリーなんて回してナンボのエンジンなのに・・・本気で踏み出したらこっちもその気になっちまいそうな・・・」
対しFDのきらら・・・BRZに前にいながらそのさらに後ろの存在に気づく・・・どこかで聞いた音・・・V気筒の音・・・サイドミラーに映ってきた姿に驚く
「え?あれって・・・まさか・・・?」
FDとBRZの横を通り過ぎるシルバー、流れるように見えたテールランプ・・・R35・・・あれはきららのRだった・・・速度は250出てるのか・・・一般車を縫うように駆け抜けて行く・・・
きららもFDのアクセルを踏み始める、一気に速度が上がリ200km/h台
「おいおいマジかよ!?ちくしょ・・・BRZじゃ追いつけねぇ!」
300PSのターボキットチューンのBRZ、サーキットじゃかなりのレベルに仕上げたが・・・首都高・・・モンスタークラスのマシン相手では力が足りないのであった・・・
先頭を走ってたR35もFDの存在に気づいたのか徐々に速度を落とす・・・FD、そしてBRZが追いつく・・・
大黒PA
それぞれの車から降りる
「走ってれば遭うかなーって思ってたけど、まあ見事に遭遇できたわけだ」
笑いながら出てくる黒川、R35をアイドリング状態にして・・・きらら違和感を感じた・・・いや正確には違和感に感じてた所が感じないのに気になったのだ
「見事なもんだね、やっぱ俺の目に間違いはなかったか。乗りこなしてるじゃないかそのFD。」
「ええお陰様で、色々とわかりました・・・それより、そのR35・・・なにかしました?」
「あ、やっぱわかったか?」
「私のRってもう少しラフなアイドリングだったような気がして・・・別に気にしたものではないんですが・・・」
少なくとも年単位での付き合いになるR35、自分の車のことは把握はしている
「まあ、気になったんでな・・・エンジンバラしてバランスを取っただけさ・・・安心しな、前と全然変わらねぇからな」
「え?えええ!?エンジンオーバーホールしたってことですか!?この三日間で?」
「いや2日でな、おかげで寝てなくてなぁ・・・」
「2日!?いやいや寝てないって言われても・・・」
そのやりとりを見ていた影浦が入る・・・黒川に問いかける
「もしかしてあなたは、V&R社の黒川秋斗さんでは?」
「お?懐かしいな10年前ぐらいまではそこにいたな、今はただのしがない車屋だよ。」
「?先輩、V&R社って?」
疑問形に影浦に聞くきらら
「ニュージーランドにあるチューングショップだ・・・ドラッグレースで有名な所だよ・・・そこに凄腕の日本人がいたんだよ。それが黒川秋斗・・・VR38を一晩で組み直すのも可能かも・・・まさか日本にいるとは思いませんが」
「まあ、いろいろと事情ありさ」
「・・・伝説のチューナーFDと海外上がりのチューナー、そして可憐な乗り手・・・」
おいしいネタだと思ったのか顔をニヤけるきらら
「おいおい今更旬が過ぎたおっさんを記事にしたって面白くねーだろ・・・それより今日で3日目、ここで交換していくか?」
「そうですね。そのR35・・・すごく踏んでみたいです。」
FDとR35がそれぞれあるべき元に戻る・・・
「さて、俺はここで・・・」
帰ろうとする黒川・・・
「黒川さん・・・あなたにとってそのFDはなんですか?」
影浦が聞く
「・・・熱・・熱狂ってもんかねぇ・・俺はとびきりな冷めない熱狂できるものさこのFDと関係は」
「熱狂・・・例えば、そのFDを本気で追いたい・・・打ち勝ちたいというのは、おかしい話ですかね?」
「おかしい?いーや全然、速い相手、興味のある車を追いたいという本能は走りに本気の人間の持つ必然かもな・・・それじゃまたな・・・」
FDが去っていく・・・カン高いサウンドを奏で・・・
「先輩・・・追いたいって・・・」
「・・・本物になれない人間が本当・・・何を言ってんだが・・・」
夜が明ける大黒の夜空・・・一人の男の正気とは思えない決意が生まれる・・・